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パーキンソン病患者に対してバーチャルリアリティを用いることで歩行とバランスが改善する


抄読文献

Hao Feng, Cuiyun Li, et al. :
Virtual Reality Rehabilitation Versus Conventional Physical Therapy for Improving Balance and Gait in Parkinson's Disease Patients: A Randomized Controlled Trial
Med Sci Monit. 2019; :25: 4186-4192.
PMID: 31165721  PubMed  DOI: 10.12659/MSM.916455.
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ーパーキンソン病患者のバランスと歩行を改善するためのバーチャルリアリティリハビリテーションと従来の理学療法との比較: ランダム化比較試験ー

抄録

【背景】

本研究の目的は、バーチャルリアリティ(VR)技術がパーキンソン病(PD)患者のバランスと歩行に及ぼす影響を調査することである。

【方法】

研究デザインは単盲検無作為化対照試験である。28名のPD患者を無作為に実験群(n=14)と対照群(n=14)に分けた。実験群にはVRトレーニングが、対照群には従来の理学療法が行われた。患者は1回45分のトレーニングを週5日、12週間行った。リハビリ前後の評価は、Berg Balance Scale(BBS)、Timed Up and Go Test(TUGT)、Third Part of Unified Parkinson's Disease Rating Scale(UPDRS3)、Functional Gait Assessment(FGA)により行われた。

【結果】

治療後、BBS、TUGT、FGAスコアは両群で有意に改善した(P<0.05)。しかし、対照群のUPDRS3では、リハビリ前後のデータに有意差はなかった(P>0.05)。VRトレーニングは、従来の理学療法群と比較して有意に良好な成績を示した(P<0.05)。

【結論】

本研究の結果から、12週間のVRリハビリテーションは、従来の理学療法と比較して、PD患者のバランスと歩行に大きな改善をもたらしたことが示された。

要点

  • VRを用いて、すくみなどの動作が生じるパーキンソン患者の動きの改善が図れないか検討した

  • VRではボールに触れる、ボートを漕ぐ、迷路を歩く、など実際の世界では行うことが困難な動きを再現できた

  • 従来型のエクササイズは中国のパーキンソン病患者治療ガイドラインに従って実施した

  • 無作為にてランダム化し、介入時間は両群とも45分とした

  • 両群とも治療前後で各アウトカムの改善が得られたが、UPDRS3は実験群のみ有意に改善した

  • 両群間の治療前のアウトカムデータに差はなかった

  • 以上より実験群はUPDRS3を改善させる効果が対照群よりも高いと判断



※ 注1:↑とはいっても、UPDRS3の対象群の介入後のデータは標準偏差が大きく分散が他のパラメータに比べ大きい。n=14ずつと少ないため、統計解析としては、これに引っ張られている可能性はある。全例のデータがない分、この点は判断しにくい。
※注2:2群間及び対応のある要因の比較を繰り返しており、統計解析としては十分な方法とはいえない。一度に解析できる分割プロット等にて解析する事案にも思える

どのように活用するか

VRの設備は近い将来一般化していく可能性があり、実際の動作ではダイナミックな動きが難しいパーキンソン病患者にとって、活用の幅は広がると思われる。
今回の結果から、VRの方が改善効果が高いとは結論づけているものの、不確実なところはある。しかし、対照群より改善が少ないということもなく、一定の効果は期待できる。
介入方法などによって、プログラムは様々に広がることや、現実では行うことのできない動きを体験できることは、パーキンソン病患者にとって、喜びと楽しみにつながるかもしれない。
抑うつ的にもなりうるパーキンソン病患者にとって、メンタルへの効果も期待できるかもしれない。今後の更なる検証が望まれるところ。

一般化してきたら、ぜひVRは取り入れていきたいと思う事案である。

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