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【出羽三山】 松尾芭蕉が「月へとつづく、雲の関所」と記した神社へ。

「趣味は神社巡り」と言い始め、約3年。多くの人に神社と日本の神様を好きになってもらえればと思い、私の知っている神社の魅力を伝えるために書き始めた「神と社記」

第3回となる今回紹介するのは、山形県は出羽三山(庄内平野で有名な地方に広がる月山・羽黒山・湯殿山の総称)。かつては俳聖・松尾芭蕉も訪れ、その様子を「おくのほそ道」にて記している場所です。

ここでは昔より、修験道を中心とした山岳信仰の場として現在も多くの修験者、参拝者を集めています。

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羽黒神社の「三神合祭殿」。月山、湯殿山に登るのが大変だ……という人も、この祭殿にお参りすることで、3山を登ったのと同じご利益があるようにしています

御祭神はそれぞれ、月山が「月読命(つくよみのみこと)」、羽黒山が「伊氐波神(いではのかみ)」および「稲倉魂命(うかのみたま)」、湯殿山が「大山祇神(おおやまつみのかみ)」、「大己貴命(おおむなちのみこと)」「少彦名命(すくなびこなのみこと)」。

※例によって、神様の名前はおぼえにくいのでここは読み飛ばし推奨

3つの山が集まっているだけあり、多くの神様を祀っていますね。すべての神様を紹介するのは難しいので、ここでは『夜の神』『月の神』などと呼ばれる、「月読命(以下、ツクヨミ)」について紹介します。

ということで……

神社行こうぜ!

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山形県は出羽三山を紹介。車でしか行けないので、なかなかいくのは大変でした
この記事は、マガジン『神と社記』に追加されています

ヤタガラスとも縁が深い地

今回紹介する出羽三山は、第32代天皇である崇峻天皇の皇子である、蜂子皇子(はちこのおうじ)が約1400年前に開山したと伝えられています。

崇峻天皇は蘇我氏(蘇我馬子)に暗殺されてしまったのですが、その際にこの蜂子皇子は難を逃れてこの出羽の山に入ったそう。この時、蜂子皇子を導いたのは、3本足の霊烏。八咫烏(やたがらす)です。

羽黒山という名前は、羽が黒い鳥に導かれて辿り着いた山であったことに由来するそう。ヤタガラスは、神武天皇に続き、蜂子皇子も後世へ続く道へと導いていた訳です。皇族はやはり、ヤタガラスと縁がありますね。

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羽黒神社の「三神合祭殿」には3本足のカラス「ヤタガラス」の像が置かれています

筆者が今回登ったのは羽黒山のみであったのですが、ツクヨミを祀っている神社を拝したのは初めてだったので、以下、ツクヨミについて紹介します。

姉弟より"目立たない"ツクヨミ

さてツクヨミとは、先述の通り「月の神」「夜の神」などと言われているわけですが、まずはその誕生から説明しましょう。

記紀(古事記と日本書紀)において、ツクヨミは伊邪那岐命(いざなぎのみこと)によって生み出されたとされ、神と社記の第1回で紹介した、天岩戸神話で登場した天照大神(あまてらすおおかみ)の弟にあたります。ちなみに、八岐大蛇(やまたのおろち)退治で有名な、須佐之男(すさのお)の兄でもあります。

この3柱(アマテラス、ツクヨミ、スサノオ)の神は、イザナギが、亡くなった妻(イザナミ)を追いかけて黄泉の国(死後の国)に行き、そこから返ってきて、川で禊(みそ)ぎをした時に誕生しました。この時、

右目から生まれたのがツクヨミ

左目から生まれたのがアマテラス

から生まれたのがスサノオ

であり、この3柱の神は「三柱の貴子」呼ばれ、記紀で重要な役割を担っています。しかし実は、ツクヨミは記紀神話であまり登場しないんです。月の神、夜の神と呼ばれるだけあり、あまり光を浴びる存在ではなかったのですね。

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ご当地のポストカードに描かれたツクヨミノミコト。女神説もありますが、基本的には男神だと信じられています

昔の人たちは、月が満ち欠けを繰り返す姿に、生と死が繰り返される様子を重ねていました。そのためツクヨミは、「死と再生」を願う信仰とも結びつけられたそうです。

月へとつづく、雲の関所

最後に、松尾芭蕉がツクヨミを祀る月山に登った際に詠んだ句を紹介します。

雲の峰 いくつ崩れて 月の山

(訳)夏空に高くそびえる雲の峰、その入道雲が、夕べとともに、いくつも次々に崩れていって、やがて三日月の光の中に、羽黒三山の最高峰、月山が姿を現した。松尾芭蕉 角川書店 = 編 「ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 おくのほそ道(全)」より引用

月山の標高は1984m。松尾芭蕉は「おくのほそ道」にて月山を登る時の様子を、(30kmほど歩いたのち、周囲に雲や霧の立ち込めるのを見て)「いよいよ太陽や月の通路にある雲の関所に入るのかと疑わしくなる」と記しています。

なんとも霊山の神秘的な雰囲気が感じられます。

今回私は時間の都合上、羽黒山に登っただけでしたが、いずれは月山、湯殿山ともに登ってみたいです。

始めて訪れる町でも、神社や神様のことを知るだけでその町のことを好きになってしまうのが神社巡りの面白いところですね。

【羽黒山ギャラリー】

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みなさんもぜひ、御朱印帳と記紀を旅のお供に。

【次回もお楽しみに】

次回は、稲荷神社で有名な『宇迦之御魂神(ウカノミタマノカミ)』について紹介する予定です。

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※追加

更新しました。ウカノミタマについて、、と言いつつ、結局ヤタガラスを中心に話は進みます。(好きだなぁヤタガラス)

note 随時更新中!神社が好きなので、実際に自分がいった神社の写真を紹介しながら楽しみ方を伝える「神と社記」や……

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