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包丁屋の料理よもやま

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包丁の事、料理の事を元料理人の包丁屋の店主が綴ります。 便利なチョイ技、得する小ネタを織り交ぜながら、きまぐれにお伝えします。 どうかお付き合いの程を、お願い致します。
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#note和食部

包丁のキレ(サラダ編)

私は実はサラダがあまり好きではありません・・と、カミングアウトしますが、サラダを仕立てるポイントとして大切にしているのが、「包丁のキレ」です。 これは漬物やサラダ、果物に・・・そしてもちろん、刺身にも共通する概念です。 食材と言う物は、金っ気の刃を入れれば入れるほど味わいが落ちると言う考え方があります。 刺身に関しては疑問は残りますが、胡瓜の漬物や葉物のサラダ、果物のリンゴやナシ、モモ等・・・包丁を入れずに丸のまま、かぶりつくのが最も美味だと言う認識が料理人の中にも

アラ煮の仕立て方(そのポイント)

※まずはポイントを押さえる アラ煮の仕立て方 さて、今回はアラ煮の仕立て方をお伝えいたします。 アラ煮と言う料理は、ご存知の様に決して簡単な一品ではありません。 ですが、魚料理の中では最も基本的な技術を駆使する定番の一品です。 骨付の魚のアラを酒と味醂、砂糖と醤油で短時間にパーッと炊き上げる。 魚から出てきた旨味を煮汁ごと煮詰めて濃厚なソースに仕立ててアラに絡ませる。 ・・と言うのが理想的なアラ煮です。 多くの方が勘違いしやすいのは、じっくりと煮含めて素材の芯

包丁と未来(包丁専門店「食おた」)

包丁と未来 包丁とは、 包丁とは、ただの調理器具、しょせん実用品という認識があります。 確かに一般の方が目にする包丁とは、そう言ったものが多いのが現実です。 雑貨店やホームセンター、100均にまで売られているのを見れば多くの方が、包丁の価値を見誤ってしまうのは無理の無い事です。 しかしながら、日本という国において包丁とは・・ 由緒ある伝統工芸品と言う一面があります。 私は包丁ショップを開店する前には割烹料理の料理人をしていました。 自分でも料理店を経営していた

春俳句

俳句にて一杯 温め酒孫に注がれてどつと老ゆ   北村益夫 人類は進化も出来ず酒温める   田口鷹生 黙しゐて絆深むる古酒の酔   松下米 涙腺のゆるむこのごろ温め酒   佐藤みちえ 夏蕨風の形にこだわりて   矢野のぼる 竹の子と呼べぬ背丈となりにけり   阿部佑介 果実酒の呑みくらべをり春の候   森下靜子 土曜日のちょっといい酒青葉雨  朝日彩湖 食前の梅酒に解けしわだかまり   重盛千種 春惜しむいのちを惜しむ酒惜しむ  結城昌治 白酒に酔って指

蕗の早煮

早煮とは? 聞き慣れない言葉かとは思いますが、和食の世界では意外と、ポピュラーな名称です。 じっくりと煮含めて煮汁と素材内部の水分を同化させる、そういった煮物が含め煮だとすれば、早煮は対局です。 素材自体の味わいと、周囲に絡む煮汁の味わいとのバランスで成り立っている煮物で、読んで字のごとく仕上がりの早い煮物です。 例えば「アラ煮」も早煮の一種です。 中は真っ白な身で、周囲に濃厚な煮汁が絡む事によってバランスが取れて料理として完成します。 また、青菜を淡口醤油の出汁