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失う恐怖とプレッシャーに打ち勝つために

この記事を読んで、他人事と思わずにいられなかった。大きなものを手に入れた喜びの後に押し寄せる、プレッシャーや失うことへの恐怖。それらによって、反射的に自分のプライドを守ろうとし、人を遠ざけ、頑なになってしまう経験に、私自身も何度も陥りかけた。これからも、いつ何時その罠に自分ではまってしまうかわからない。

だからこそ、これまで試みたマインドセットの切り替え方を改めて整理してみたいと思う。


1.自分に求められている役割を冷静に理解する(過大に見すぎない)

レベルの高い組織になるほど、上には上がいるもので、所謂スタープレーヤーは何をやっても一流、恐ろしく手の届かない存在だったりする。しかし、ほとんどの人はそんな役割を少なくとも最初から求められているわけではない。A~Eの全種目で100できてしまう人を見ていると闇雲にそれを目指してしまったりするが、実際の自分の役割上は、A種目で80点、B種目で50点以上取れば十分合格点だったりする。

これがチームスポーツであれば猶更。仮にすべてできてしまう人がいても、その人がすべてを一人でカバーできる訳ではないし、その人がやりたいと思っていることは実はその中のほんの一部かもしれない。であれば、カバーしきれていない部分や、他の人はあまり興味を持っていないが自分が情熱を注げるような分野でまず力を発揮すれば、まずはそこをやるだけで、十分チームに貢献することになる。

また、この領域についても、ハードスキルや生まれつきの頭の回転の速さ、といったわかりやすいものに限定せず、より広い範囲で考えるべきだ。例えば、この人に頼られたらつい協力したくなる、と思わせる人間力やコミュニケーション力、一つのことを根気強くやり抜く力、ピンチに陥っても決してイライラしない冷静さ等、学校ではあまり評価されなかったような能力や性格も、社会人においては意外と重要だったりする。ここまで視野を広げると、冒頭のスタープレーヤーに劣らない自分の強みが見えてくることもある。

高すぎるゴールを据えて絶望する前に必要なのは、今求められている自分の役割を正しく見極め、それを周囲に確認することだ。

2.自分を過小評価しすぎない

「この機会をもらえたのは何かの間違いではないか」と考えてしまう人は、自分を過小評価する傾向があるかもしれない(所謂インポスター症候群)。謙虚に振る舞うのは悪いことではないが、それは「まだまだ今後努力の余地がある」という将来に向けられるべきだと思う。今の自分の実力は、1回の成功であれ何であれ、過小評価で歪めることなく事実として正しく把握することで、組織はその力を正しく活用できるし、また自分自身も今後伸ばすべき領域を正しく分析できるのではないか。

3.安心して成長できる環境を整える

上記1、2を見直すことで、歪みを除いた真の求められる姿と現状が見えてくるはずだ。もしそこにまだギャップがあると感じたら、やるべきことは、できることを全力でやる+ギャップを埋めるために成長することだ。そのためには、周囲に自分を理解してもらい、アドバイスやサポート、自分の成長に適した機会を得るのが一番の近道である。

ただ実際には、ここで見えた真のギャップを認め、開示するのが一番勇気を要する。ここで勇気を持って自分をさらけ出せるか、頑なに自分を守ろうとして殻に閉じこもってしまうかは環境次第、と思っている。

自分が安心して成長できる環境を作るために私が試みてきた方法は以下だ。

a) コミュニケーションを通じた期待値コントロールをする

要は自分の把握しているギャップを丁寧に、前向きに上司や同僚に伝えていくことで、相手に極端な期待をされるのを抑えると同時に、過度な期待から失望を生じさせることを未然に防ぐということだ。この時には、常に何か一つは自分でもアクションを起こす/したことを付け加えることで、少しでもマイナス評価を避けるようにしている。(e.g., 本資料作成につき承知しました。ただ、この業界にはまだ十分な知見がないので、大きな誤解がないか、一旦箇条書きで整理したものを見ていただけませんか)

b) 味方を得る

上司や同僚がたまたま合わない人の環境の場合、上記の手を使ってもあまり爽やかに対応してもらえない時もある。その時は、他の同僚を味方に打ち明けて、味方になってもらうことだ。正直に状況を伝えれば、その人が陰でサポートやアドバイスをしてくれることは多い。最悪、この人が見方でいてくれるという人がいると、多少リスクを負ってでも自己開示できるようになる。

c) 環境を変える

上記が機能しないほど周囲で見方が得られず、精神的に安全な環境でないと感じた場合ははっきり言って、環境を変えてしまった方が良い。プロジェクト関連の仕事なら、ある程度区切りがついたところで抜ける、究極的には会社を変える、も一つの手だ。

これはそうたやすいものではないかもしれない。が、とにかく一度辞める、抜け出す覚悟を決めることで、結果的に自分を全部さらけ出すきっかけになり、環境が改善されたりもする。そしてその方が、自分を失ったままずるずると続けてしまうよりも良いと思う。

私の場合も、どうしても自分の実力と求められるものとのギャップを感じてしまった仕事が過去に2度あった。一つはうまく立ち回れないまま最後まで殻を破れず、もう一方は精神的に参りかけていたので、半ば退職覚悟で白旗を上げ、助けを求めた。非常に不本意な経験ではあったが、結果、自分の得意分野の仕事を回してもらい、何とか戦いきることができた。両者を比較すると、結果的には、声を上げなかった1つ目の仕事よりも、声を上げた2つ目の仕事の方が自身の成長には繋がっている。

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因みに私は、求められる役割レベルが今の自分の実力よりも高いこと自体は、良いことだと思っている。それは、成長したい人にとっては「その瞬間、正しい場所に身を置いている」ことだからだ。だからこそ、そんな環境に入り込めたなら、失うことなど恐れず全部を投げ打ち、できることをすれば良い。仮にそこに長くいられなくとも、その成長は必ずまた次の機会に生きてくる、そう思うようにしていきたい。

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