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画面越しの恋の行方

恋はするものじゃなくて、落ちるものだ。
そのセリフは私の思春期を盛大に彩ってくれた作家の1人、江國香織さんの東京タワーという本に登場する。
東京タワーを初めて読んだ時、私はもう20代だったかもしれない。

冒頭のセリフが人以外にも当てはまることを知るのは、何年後だったろうか。
手元の長方形の画面にうつしだされたピアス。恋に落ちたのなんて一瞬だった。

画面の下の方に
KOTENRA
と7文字のローマ字が並んでいた。ブランドの名前だった。
私は基本的に身につけるものは実物を見てからではないと買わない。
でもその時は画面越しに出会ったピアスが欲しくてすぐに購入の手続きをしていた。

数日後に届いた時、私はもう1度恋に落ちた。
見ただけで心があったかくなるようなラッピング。整えられた字で綴られたお礼の手紙。
その全てがピアスを特別な存在にした。

私は嬉しくて、お礼の手紙を送った。
人生で一番丁寧な字を書いた日かもしれない。

恋に落ちたピアスを作っている人の名前も、顔も性別も。目の色さえ知らない。
そんなこと私にとってはどうでも良かった。
だって一瞬で恋に落ちた私に必要なのは、数字や何かで表現できるようなモノではなかったから。

数年後、私はそのピアスを作った方と会うこととなる。
普段関西に住んでいるその人は、東京の銀座で出展をしていた。


あの時の私の気持ちを言葉で伝えられるなら、会いに行こうと決めて会いに行った。
もう何年も前のことだから、あちらは覚えていないだろうけど。

そう思ってお店に行ったら、その人がいた。
いたというより、顔も名前も知らないから名札を見て気がついたんだけど。
私の名前を伝えた瞬間。

もしかして、お手紙をくれたしょうこさんですか?

まさか覚えていてくれるなんて思っていなかった。

だって私が買ったのは1度きり。他にもたくさんのお客さんがいる中で覚えているなんてこと、ないと思ってた。

それから私は、SNSを通して東京に出展があると知ると時間を作って会いにいくようになった。

私の姿を見ると、
しょうこさん来てくれたんですか。とっても嬉しいです。
そうやって品のある声で私を迎えてくれる。

目の前に広がる、色と光に愛された人がつくるジュエリーはまるで、ずっと読み続けられる小説みたいだった。



そして今日(2024年8月28日)から期間限定で、東京都の銀座駅三越でKOTENRAさんの出展がはじまります。
見ているだけで気持ちがカラフルになります。

是非私が恋に落ちた瞬間を、アナタも味わってください。

2024.8.28.Wed.-9.3.Tue.

銀座三越1階-Gステージ

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