著者は、福岡で学習塾を営んでいるひとだという。
全く知らなかったが、書籍も扱っているような無印良品の大きめな店舗でたまたま見かけ、帯の植本一子の言葉(私たちは子どもたちのためにもう一度「大人」になる必要がある)にひかれた。
植本一子は、著書の中で時折母親との確執にふれている。
そこが自分と少し重なり、彼女のすすめる親子関係の本なら読んでみたいと思った。
著者が出会ってきた子どもと親のエピソードが淡々とつづられる。
ホラーのようだと思えるものもあった。
読みながら、かつて子どもだった自分といま親になった自分が交互に顔を出すような感覚があった。
学校の校風が合わずにつらい思いをしている小学生が、父親に「おまえの選んだ学校だろ」と言われてしまう。
けれども、著者は「君は本当の意味では選んでいないし、ということは、それについての責任は一切ないと言っていい」と言う。
ここのくだりは自分の過去を重ねながら読んだ。
私も、あることについて、母親から「あなたが選んだことでしょう」と言われ続けてきた。
そうではない、小さい子どもに親がすすめてきたものを拒否する選択肢などなかったという思いと、やはり私が選び取ったのだろうかという思いでずっと揺れていた。
だから、ここを読んで、すごく救われた気がした。
「理解ある親と子どもの精神」のところを読んで、河合隼雄『こころの処方箋』の中の一篇、「『理解ある親』をもつ子はたまらない」を思い出したので、併せて下に引用する。
冒頭では、「理解ある」親のもとに育ち、「問題のない」生徒に見えた男子中学生が下着泥棒でつかまったというエピソードが紹介される。
まず何よりも、自分の人生をしっかりと生きること。本当にそうだと思う。
『親子の手帖』のあとがきに、幸田露伴の『趣味』の意訳が載せてあるのもよかった。