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「素読」で遊ぼう

咲柔館では「素読(そどく)」を稽古の前後に行っています。「素読」とは、文章の意味や内容は考えず、文字だけを音読することです。

素読の効果について、「脳トレ」の監修などで有名な川島隆太教授は以下のようにおしゃっています。

黙読は文字を捉えて視覚で覚え、そこに書かれている意味を理解します。一方、それを声に出すのは、理解した文章の情報を音に変換する、口を動かす、息を出す、自分の声を耳で聞くといった二重、三重の機能が働くことになるので、それだけで脳活動は活発になるわけです。
人間の前頭葉の中心、ちょうど眉間の上あたりに背内側前頭前野という高度なコミュニケーションを司る部分があって、お互いの気持ちが通じ合っている時には、その脳の揺らぎが同期する(脳活動の波長のタイミングが合う)ことが、今年になって初めて分かったんです。(中略)さらに、同期を強めるには、お互いの動作を合わせることが効果的であることも分かりました。外的な動きでリズムを合わせると、脳の同期のリズムも合ってきて、それがコミュニケーションをよくして学習効果を高めることにも繫がるんです。
※今年=2016年
僕はこれまで素読が脳の機能を高める実証データをたくさん取ってきましたが、そこで分かったことの一つはできるだけ速く読むトレーニングの効果です。速く読むことで頭の回転速度が上がります。例えば、早口言葉のようなものを毎日やっていると、脳がつくり替えられるということが見えてきたんですね。
もう一つ、声に出すことは記憶のトレーニングにもなります。僕たちが文章を読む場合、一文字一文字を目で見て発声するのではなく、ある程度の量を見ながらそれを記憶に留めて声に出したり、理解したりしますね。これをワーキングメモリー(作動記憶)と読んでいますが、素読によってこの脳のシステムをフルに活用できることが分かってきました。

   (『素読のすすめ』/川島 隆太・齋藤 孝 著/致知出版社)より

このように素読には多くの効果があります。お年寄りの脳にとっても効果が大きく、認知症の改善にも役立つそうです。


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素読の教材の1つ『実語教』


子ども達は「素読を頑張っている」というよりも「素読で遊んでいる」という感覚に近いのかもしれません。「先生の言葉真似ゲーム」「難しい文を覚えるゲーム」といった感じでしょうか。素読を真剣かつ楽しそうにやっています。
『銀の匙』の授業で有名な、元灘校教師の橋本武先生は著書の中で「遊んでるつもりが自然に学んでいることになるように持っていく」やり方が大切だとおっしゃっています。 (『〈銀の匙〉の国語授業』/橋本 武 著/岩波ジュニア新書)遊んでいるうちに自然と学んでいる、鍛えている、成長しているという教育方法はとても魅力的です。橋本先生の「遊ぶと学ぶの垣根をなくす」という発想を大切にし、これからも素読を楽しく続けていきます。


文武一道塾 咲柔館 クラス紹介

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