陽子の広がり

受験生のころに多くの人が(大きな)お世話になった偏差値というのがある。テストの点から自分の位置を知ろうにも、問題の難易度によって平均値が上がったり下がったりするので自分の得点だけを見ていてもよくわからない。だから、全体の平均点が50点、ばらつきがおおよそ10点くらいだったということにして全員の得点分布がそうなるようにあてはめなおす。そのときの得点を偏差値というらしい。おおよそ10点のばらつき、というところがミソで、ここには正確な意味があり、40〜60点の間に入る人は全体の68%、30〜70点の間に入る人は95%、ということになっている。そこからはみ出す人はたったの5%で、だから偏差値70という人にお目にかかることはめったにない。そうは言っても、医学部の上位校は軒並み偏差値70以上というから恐れ入る。 そんなに優秀な人を集めて全員医者にしてしまってはもったいないではないか。

陽子の広がりの話をしている。いろんな波長の波を使って調べると、散乱の様子が変わってくることから陽子に大きさがありそうだということがわかった。その大きさが具体的にいくつなのかを知るには、形状因子が運動量によってどれだけ変わるかを見ればよい。こうして得られる陽子の半径は0.875フェムト・メートル、その誤差0.006フェムト・メートルと測定されている。これは別に陽子の大きさがきっちりこれだけという意味ではなくて、ぼんやり広がっているもののおおよその大きさのことだ。陽子の中の電荷の広がりを表しているために荷電半径と呼ばれる。本当は半径だけでなく、分布の形までわかるとよい。実はこれもある程度はわかっていて、どうやら指数関数的な分布をしているらしい。指数関数は遠方で急速に減衰するので、陽子は霧のように遠くまで広がっているというよりも、ある程度中心がしっかりした、でも表面はふわふわのボールのようなイメージだろうか。

陽子の大きさは1%の誤差で決まっている。なかなかの精度だ。ところが後になってとんでもないことがわかった。別のやり方で測ってみるとこれが全然違うのだ。

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