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伊藤昌著「水墨画 紙を極める」発刊!


伊藤昌著「水墨画 紙を極める」(日貿出版社)が出版されます。アマゾンや楽天ブックスなどのネットでも予約販売が始まっています。
ご興味のある方はぜひ手にとってご覧いただければ幸甚です。

本の主旨をご紹介する意味で、本書のはじめにの文章を以下に掲載します。

 書画を描く道具は文房四宝といわれ、筆、硯、墨、紙のことを指します。この四つの道具の中でもっとも重要なものは何かと尋ねられたら、私は間違いなく紙と答えます。創作する上で違いがもっとも顕著に表れ、同じように描いても紙によって現れ方がまったく異なったりするからです。
 ところが水墨画の学習者のほとんどは数種類の紙しか使っていません。なぜでしょうか。一言で言ってしまえば、他の紙を知らないからです。教室で進められた1種類の紙のみに描いているという人も少なくないことでしょう。だんだん学習が進んでいっても、未知の紙に描く勇気がなく、画集を見ても紙本とだけ記してあって紙に描いているのはわかるものの、それ以上のことはわかりません。技法書でさえ和紙や和画仙紙とおおざっぱなくくりで記述されているのが普通で、読者は紙という大海の前で呆然と立ちすくむしかありません。
 紙に関して詳細を明示しない理由の一つには、作家の用いる紙が秘中の秘であるということもあるでしょう。それだけ紙というのは作家にとって重要なものなのです。
 もう一つの理由としては、中国の本画仙や品名の固定されている和紙を除いては、日本で販売されている画仙紙は同質の商品であっても店舗によって商品名が異なるという問題があります。技法書などで紙について抽象的に記載される一番の原因がここにあります。
 本書ではこうした問題を払拭するべく、水墨画で扱う紙に焦点を当て、できうる限り水墨画愛好者の要請にかなうように紙の製品名や性質を記述することにし、江戸時代から続く和紙店、小津和紙で取り扱っている紙の中から水墨表現に向くものや特徴的な紙などを選んで掲載しています。
 もちろん本書で掲載している紙以外にも数多くの種類がありますし、他店舗を含めれば無数の紙が存在するといっても過言ではありません。その辺の事情にも配慮しつつ紙について解説していますので、ぜひご自身の望む表現に合った紙を見つけて水墨画を楽しんでいただきたいものです。


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