「旅人」

ミュージシャンになりたくって飛び込んだ東京
後悔したく無いって飛び出した故郷
がむしゃらに無我夢中に擦り切れながら
笑って泣いた
失ったものと引き換えに得たものを
数えるにはまだ早いよ

月４〜５本のライブ
週６でバイト
この状況打破しないと
って思いながらも結局中途半端な僕を
追い越していく人、時間
さっきまで隣にいたはずなのに
突っ立ってひたすらこの心を
切り刻んだ

なんでこうなった!?
自分のせいかな
運も才能も無いのか
どっち付かずを終わらせて
どちらかに転ばないとな
それも出来ず遊びも仕事も
生き甲斐だった時間でさえも
イケナイことをしているような
気持ちで息も出来ない

そんな日々の中
出会った夜の話をさせてくれないか
その日は先輩のミュージシャンとの
ツーマンライブ
彼は旅芸人
年間200本のライブ
数え切れないほどの仲間が
いつだって彼の背中を押している

僕が先行「絶対負けねぇ!!」って
力んだ体を震わせる
勇んでみたものの
見透かされはしないかと
僕は怯えていた
劣等感、焦燥感
経験、器
こなしている台詞
自分を信じろって歌うくせに
自分が自分を信じてない

だから言ってくれたんだ
彼の出番最後の曲の前のMCで
人は一緒
頑張ってる奴に優劣はないって
「そう歌ってきたつもりなんだけどな!!」
って叫んだんだ
僕は叱られた気がした
それが嬉しかったんだ
彼は続けた週６でバイト
週６でライブも同じなんだ
旅をしているんだ
同じ旅なんだ
惰性も妥協も無いなら
どんな時だって胸を張ればいいさ

涙が溢れて止まらなかったんだ

忘れないよ
僕はあの夜を一生忘れないだろう

眠れない夜だって
僕らはいつも旅の途中
迷って悩んで
そのままで良いんだよ
一度きりなんだから
君は君をやめないで
さぁ進もう
僕らは今日も旅の途中

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