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第四話 理想と現実 〜前編〜

チャンスは突然やってくる。
トップアスリートは常にそのチャンスを自分のものにするために日々の準備を欠かさない。

ユースへ昇格した僕は中学時代のプレースタイルが正直勢い任せであったことに気づかされました。
下のカテゴリーでは力を発揮することができても、Aチームや上のレベルになると結果を残すことができなかったからです。自分のプレーの分析を事細かにする作業を怠っていたのでした。

しかし、高校に入ってからはその問題に直面した僕は本格的に自分と向き合うことを始めました。
そのせいか、全体練習とは別に自分の課題克服、武器を磨く作業。
いわゆる「自主トレ」の時間が自然と増えました。

高校1年の僕は怪我や実力不足でチャンスをものにする力もなく、Aチームでの公式戦出場時間は0分。いつも調子が上がってきている時に怪我をしてしまい、その都度悔しさや周囲からの声に腹を立てることも正直ありましたが、それを原動力にリハビリをしてました。

「怪我をする前より進化をして必ずみんなを見返す」と。

その時の感情の数々が復帰してからの自分のモチベーションにも繋がっていました。
例えば、怪我で差をつけられた自分は練習の最初にチーム全員で行う筋力トレーニングを他の人より重いウエイト、多い回数で行うなど、自主練とは別に皆が行う練習でも差を縮めようと取り組んでいました。

そんな僕が迎えた転機の高校2年。
シーズン前の遠征でスタメンに名を連ねる回数が多くなり、リーグ開幕戦でスタメンを勝ち取りました。
その年はチームとしては夏と冬の全国大会を優勝し、三冠まであと一つのところまでいきました。
個人としてはGKを除き、チーム内で1番の出場時間を記録し、J3リーグにも2試合出場しました。
それまでの僕のサッカー人生の中で一番濃密な1年間でした。

しかし、僕の心に残っていたのは自信ではなく、課題ばかり。
唯一の成果は怪我なく1年間闘い続けることができたこと。
(これは後に自分の中でとても大切なものになるが…)

この年はチームとしての完成度は高かったものの、ゴールやアシストなどの個人として結果は全く残すことができませんでした。
そして、僕は気づきました。
僕は周りの選手に活かされていただけであって、自らの力で何もチームに貢献することができていなかったと。

自らに過信することは愚か、課題ばかりを突きつけられた1年間。
正直チームとしてタイトルを取るたびに喜びよりも焦りを感じていました。
このままではいつかポジションを奪われる、自分の目指すべき選手との差が広まる一方だ。

しかし、それが僕の強みでもあると今になって思います。
振り返ってみると高校に入ってから、試合後に満足したことなんて一度もありません。
自分の理想と現実との差が大きすぎるためです。
もちろん、試合中に自分の思い通りのプレーができることはありますが、1試合を通してみた時に頭に残るのはミスや改善点。

でも、それが次の練習や試合のモチベーションに繋がり、このままではいけないという危機感を持つことができます。

多くの人は自分の悪い点や改善点が見つかるとネガティブになります。
「あれもダメだ」「これもダメだ」
「もうダメだ」と。

でも、そんな感情は必要ありません。
自分の課題を自己理解していることは素晴らしいことであり、やるべきことは自ずと見えてくるはずだからです!

僕の場合はサッカーで例えると、試合終盤になると走れなくなるという課題が見つかったとします。
走れない選手は試合に出れないから、
自分はもうダメだと諦めるでしょうか?
僕は走れるようになりたい。そうすれば試合終盤まで自分のプレーの余裕ができ、プレーの幅が広がるからと前向きに捉えることができます。
また、自分が今取り組むべき課題は走力を上げることだと、はっきりわかっているため、日々の練習の取り組み方から変わってきます。
何気ないポゼッションの練習があるとするならば、いつもよりプレーエリアを広げてピッチを広く走ったり、最後の紅白戦でキツくなってから5回全力スプリントをするようにしてみたり、と。

このように課題が見つかることによって自分がするべきことが明確になるので、僕は課題が大好きです。

そして、迎える僕のサッカー人生の大きな分岐点となる高校3年…

【次回予告】

第五話 理想と現実
 〜後編〜

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