国際共同制作の新たな可能性

嬉しいこと。国際共同制作のドキュメンタリーがひとつ完成し、アメリカのディスカバリー・チャンネルで放送された。

テーマは、中国残留孤児。

フランス人プロデューサーから「とても信頼できる中国人プロデューサーがいる」と紹介してもらった人から、「日本でのロケをして欲しい」と連絡があったのは一年半ほど前のことだった。元々は日本大好きという中国人のディレクターが企画し、日本にロケに来るはずだった。しかしコロナが長引き、来日できなくなった。そこで僕に相談が来たのだ。

日本の若い映像作家たちに「一緒に制作しないか」と声をかけたが、みんな忙しくしていた。そこで僕自身でロケに行くことに…。撮影を、北京映画学院の留学仲間、川口慎一郎君にお願いした。

撮影したのは、4組の残留孤児たちの証言と日常。「中国人にとっては、日本に戻った孤児たちがどんな暮らしをしているのかに関心がある」とのことだったので、日々の暮らしのスケッチを、僕らなりに工夫しながら丁寧に撮影した。もちろん、インタビューも徹底的に行った。

撮影した映像を、中国の映像制作者たちがどう編集するのか、とても気になっていた。日中国交正常化50周年である昨年中に放送されると思っていたが、編集に相当時間がかかったとのこと。確かに、撮影素材は膨大だし、日本語と中国語もチャンポン(僕は一応中国語ができるのでインタビューを中国語でする)。

ようやく一昨日「まずアメリカで放送した」と連絡があった。完成した作品を観たら、とても良く作られていて、「このプロジェクトに参加して本当に良かった」と思えるものだった。

大上段に歴史を語ることはしない、ナレーションもない。孤児たちの目から見えてくる歴史・文化差異・政治と、それを越えた人情・道徳を、詩情と余韻豊かにまとめている。僕にはできない編集センスだ。もしNHKで放送しようとすると背景説明など延々とやりそうなシーンも、映画のように映像の力だけで見せていく。十分に伝わるのだ。川口カメラマンの力もすごいし、中国側の編集も素晴らしい。

僕に声をかけてくれた中国人のプロデューサー、世界規模の国際共同制作を日常的に行っている人だけあり、学ぶことがたくさんあった。ドキュメンタリー、そして国際共同制作の新たな可能性を感じ、新鮮な気持ちと元気をもらった。

彼は続編もやりたいと言っていて、いつか日本の皆さんにもお見せする機会を作れたらいいな!と思う。

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