暴走する正義 【相棒】警察不祥事

相棒には奇数シーズンに1話、警察官が不祥事を起こし隠蔽する上層陣対真実を究明する特命係、といった構図の話が組み込まれている。これらは公式が名言しているわけではないものの、ファンから「警察不祥事もの」と呼ばれ高い評価を得ている。
今日は、私の選ぶ警察不祥事モノ3作品をご紹介


【下着泥棒と生きていた死体】
season1の本作は記念すべき警察不祥事もの第一段であり、警察という組織の闇に切り込んだ一作である。
泥酔者を搬送中に強盗の知らせを受けた警察官が車を停め、強盗の捜査を行う。下着泥棒は強盗捜査に合流しようとしていたパトカーに偶然職務質問された挙げ句逮捕された。強盗捜査を終えた警察官がパトカーに戻った頃には泥酔者は息を引き取っていた。平たくいうと、泥酔者を放置したせいで病院への到着が遅れ死に至った。
警察はこれを強盗捜査後に泥酔者を保護し、搬送中に息を引き取ったものと公表、警察官に落ち度は無いものとした。下着泥棒の裏付け捜査をしていた右京は犯人の証言から前述の出来事に疑問をもつ。警察が保身の為、真実を偽ることで警察への信用が無くなることを危惧する右京。
事実を白日の元に晒そうとする右京と、身内の不祥事を突き止めることに抵抗感を抱く薫が意を決する様子を描く。
最終的には末端だけが首を切られるトカゲの尻尾切り
私は本作を警察不祥事モノと認識した上で視聴したのですが、リアルタイムでこういったシリーズものの一作目を視聴したかったという思いもある。


【裏切り者】
話の概要は改造銃マニアの男が犬を撃ち、器物損壊で逮捕されることから始まる。これは女性の目撃情報により逮捕に至った。
男は執行猶予中、警察の情報をハッキングし、その目撃者を特定し殺めてしまった。
しかし、この被害者は目撃者ではなかったのだ。警察の情報をハッキングしたにも関わらず何故、違う人物であったのか?

警察官としてあるまじき姿を描いた本作は杉下右京の最も嫌悪する類いの人物が登場するが右京は感情を露にすることなく、薫に判断を委ねる。これは初期の相棒では考えられなかったことであり、2人の関係性の変化が伺えた。


【暴発】
薬物を流用する暴力団の一斉摘発中に謎の射殺体が発見される。被害者は誰なのか?誰が殺したのか?暴力団の構成員達は黙秘を貫き、捜査は難航している。そこへ厚生労働省麻薬取り締まり部、通称マトリが幅を利かせる。
薬物の買人を調査中、買人は警察の動きを事前に把握しているかのように逃走を図った。そしてマトリの取り調べ後、構成員達は黙秘から一転、銃の暴発事故が死因だと口裏を合わせた。マトリが何か吹き込み、事実をねじ曲げようとしているのは明白。物語はどういった着地を迎えるのか?

「何人も平等に法に守られ、法を守らねばならず、裁かれなければならない。」
「罪を裁くのは損得ではなく、法律です」
「真実の追求に、もうこの辺でいいなどということは絶対にありません。」
本作は自らの命と組織,計画を天秤にかけ死を選んだ男が描かれる。また「悪法も法律であり、不備があるならば改正を以て、初めて行動を改める」といった法に遵守する右京の正義がとことん孤立し、歴代相棒によって言動も変わるだろうと思わされた。
実際、悪法は存在する。
目まぐるしく変化する現代社会に対応しきれていない旧態依然としたものが大多数だ。法やルールは人間が生み出している以上、特定の誰かに都合のいいように創造されている。しかし、法律という社会の基準を一個人がねじ曲げてしまっては、社会は崩壊してしまうのだ。その点を理解した上での右京の言動なのだろう。右京が真実を突き止め視聴者は目にしたから良いものの、今現在もこの世の中では、このような事案は蔓延っているだろう。それはとても嘆かわしいことだ。

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