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薬剤師の南 [沖縄×薬局薬剤師 オリジナル小説]

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幼少期に沖縄から来た女性薬剤師に影響された南依吹(みなみいぶき)は薬剤師免許を取得し、沖縄の田舎町の薬局に新人として赴任する。 沖縄から来た薬剤師が依吹に残したのは、生薬を擬人… もっと読む
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記事一覧

#70薬剤師の南 早雪 前編6

 薬剤師法第二十一条、「調剤に従事する薬剤師は、調剤の求めがあった場合には、正当な理由が…

#69薬剤師の南 早雪 前編5

 ミーティングがあった翌日のこと、 「南さん、これは駄目なんだ」  と、投薬台にいた當真…

#68薬剤師の南 早雪 前編4

 スノーマリン薬局では月一回、就業時間後に従業員を集めて二階の小さな会議室でミーティング…

#67薬剤師の南 早雪 前編 3

「……また長引くだろうから、一応知らせに来ただけ」  シロは少し言葉に詰まったようだった…

#66薬剤師の南 早雪 前編 2

「失礼します」  夕刻、私は薬局の二階にある社長室のドアの付近をノックした。社長室のドア…

#65薬剤師の南 早雪 前編 1

 この年一番の威力を持つ台風が沖縄を直撃した。  正午近くだというのに空は真っ暗。切りつ…

#64薬剤師の南第二部・プロローグ3(終)

「例えばどんな? 人間一人の存在を隠すのに、前向きな理由なんてあるの?」  桂皮が芍薬に言うと、 「『あの人』はきっと依吹ちゃんだけに見える妖精さんだったんですよ」 「……はい?」 「依吹ちゃんだけに見えた妖精さんだったから、誰も覚えていない、というのはどうでしょうか?」  芍薬の発言に一同は絶句する――考えたのは私なんだけどさ。 「じゃあさ、写真に映ってのるは何? どう見て他の人間に認識されてるようだけど? 双子の姉妹? ドッペルゲンガー? クローン人間?」

#63薬剤師の南第二部・プロローグ2

 テーブルに座ったのは桂皮、釣藤鈎、芍薬、麦門冬――いつもの四人だ。  そこに私が座り、…

#62薬剤師の南第二部・プロローグ1

 かち、かち、かちと時計の秒針が真夜中の部屋に響く。  どれくらいの間、そうしていただろ…

#61.5薬剤師の南 第二部 登場人物・組織・団体・地域など

このページでは第二部に向け、第一部までで明らかになった情報を含んだ登場人物等の紹介を行い…

#61薬剤師の南 第9話-11(終) 隠れ家(小説)

 慌ただしい一日も終わろうとしていたころ、社長から、 「悪いけど二階のロッカーの中にある…

#60薬剤師の南 第9話-10 隠れ家(小説)

「あ、スノーマリン薬局の當真ですが、糸数さんは病棟ですか? 繋いでもらいたいんですが」 …

#59薬剤師の南 第9話-9 隠れ家(小説)

 夕方、ようやく患者さんの出入りが止まり、薬局の中には職員のみになった。 「殺虫剤の中毒…

#58薬剤師の南 第9話-8 隠れ家(小説)

 震える親指を使って電話のボタンを押し、糸数さんと電話越しに再び対峙する。 「はい、薬剤部の糸数です」  さっきと全く同じ応答に緊張が高まる。下手をすれば私もドクターのお世話になってしまいそうなくらい胃が締まるのを感じた。  知念さんの症状を再度説明し、そこに自分が調べたことを付け加える。 「――レバーの大量の飲食をしたことによるビタミンAの過剰摂取と、約一週間前にシロアリの防除作業をしたことで、カルバメート系の物質のフェノブカルブを吸入してしまった恐れがあります。頭