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「持ち駒に彩りを」~令和将棋新格言~

将棋ウォーズ運営チームのブライトです。

これから実戦に使えることが多い考え方を「格言」のような形式で紹介していきたいと思います。上級者が自然と使っている考え方を言語化して上達の役に少しでも立てれば嬉しいです。

第1回目は「持ち駒に彩りを」がテーマです。

彩りとは簡単に言うと将棋は複数の種類の違う持ち駒を持つと良いことが多い、という話です。

例えば同じ持ち駒が3枚であれば、銀を3枚持っている状態よりも、金・銀・桂と1枚ずつ駒を持つほうが使いやすいのです。

早速局面で見てみましょう。

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こんな局面があったとします。後手玉は詰むでしょうか?


詰むのですが、これを頭の中で詰ませられれば初段以上の実力相当です。

答えは文末に記載します。答え合わせは文末をご覧ください。


では、この持ち駒以外で、金・銀・桂をどの組み合わせでも良く、3つの駒を持っている場合、詰む3枚の持ち駒はあるでしょうか?

これがなんと、この3枚以外は持ち駒でも詰まないのです。3種類の駒を1枚ずつ持っているときのみ詰ますことが出来ます。


次に受けのケースを考えてみましょう。

後手から王手をされた局面です。

かくboard (4)

持ち駒には金と銀を2枚ずつ持っています。

じつは、この局面すでに先手が困っています。玉を逃げれば飛車が取られてしまいますし、

王手を受けると

いたいboard (6)

この歩が激痛で銀損が確定してしまいます。

もし、あの局面で持ち駒が、「金と銀」に加えて歩があった場合にはどうでしょうか。

実は、とっておきの受け方があるのです。


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「中合いの歩」という一見ただに見える場所に歩を打つのが損害を最小限に抑える手筋です。

後手はこれを取りますが、

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角を近くに呼んでから銀を受けると、角取りになるため、先程は痛打だった△4六歩を打つことが出来ません。(▲5六銀と角を取れる)

持ち駒に歩を持っていたことで、このような受けで切り抜けることが出来ました。

持ち駒を複数持っていてよかったケースだけを今回紹介してるだけではないか、と思われるかもしれないのですが、ここからは論理的に持ち駒を複数持つ効果をお話したいと思います。


将棋は可能性のゲーム

将棋は持ち駒という自由に盤面に駒を配置出来るルールのため、局面が一手毎に変化し、無数の手段があるゲームです。

特に持ち駒というのは盤面のどこにでも突然登場させることが出来るジョーカーのような切り札です。

つまり、持ち駒を持つほど、多くの局面に対処できる可能性があるということになります。

仮に金をA、銀をB、桂馬をCとして3枚の駒を持っていて、3手連続でこの駒を使うとします。

金を3枚持って使うとき、この3手の指し手は、

▲○○金、△○○、▲○○金、△○○、▲〇〇金、の3手になります。

Aという駒3つの登場順序はA-A-Aの1通りだけです。

しかし、金・銀・桂の3枚を持っているときは

A-B-C/A-C-B/B-A-C/B-C-A/C-A-B/C-A-Bの6通りになります。

図1

図13

この組み合わせの手段があるということが非常に大きいのです。

もちろん、将棋では同じ駒を多く持っていたほうが良いというケースもありますが、駒を取る選択肢があるとき、自分が持っていない駒を取る指し手は、同じ駒を複数持つよりもその後の可能性を広げています。

また、持ち駒を持つと相手の指し手を牽制することも出来ます。

その時1種類の駒しか持っていないときより複数の駒を持っている方が相手の指し手により制約をかけることが出来ます。


今回のテーマ、全ての局面で万能なものだとは筆者も考えてはいませんが、自分自身の将棋を振り返った時に無意識に駒はいろんな種類を持つように指しているな、という気付きからこのコラムを執筆しています。

ただ、特に効果が発揮されやすいのは、詰む・詰まないの終盤で、使う順序の組み合わせが生まれることで詰ます手段のバリエーションが増えることは間違いありません。

これから上達を目指す皆さんには、ほぼ同じ価値の駒がどちらも取れるとき、どちらもすぐ必要な駒でなければ持ってない方の駒を取る「持ち駒に彩り」を与えるという、可能性を広げる指し手を一度試してみてください。

何気なく取っていた持ち駒についてこんな考え方もあるのか、という気付きになれば幸いです。

将棋ウォーズ運営チーム ブライト


詰将棋:正解手順

▲3五桂△1三玉▲2三金△同金▲同桂成△同玉▲3二銀△1二玉▲2三金△1一玉▲2一銀成(決め手)△同玉▲3二銀成△1一玉▲2二金までの15手詰みでした。

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