棋士紹介:vol.1 豊島将之九段

棋士のプロフィールや戦績、エピソードをかいつまんでご紹介するコーナー。
第1弾は豊島将之九段です。

プロフィール・来歴

誕生日:1990年4月30日
出身地:愛知県一宮市
桐山清澄九段門下

・同学年の棋士/女流棋士には、伊奈川愛菓女流二段がいます。
・数学者のガウス、サンドウィッチマンの富澤たけしさんらと同じ誕生日です。
・同門には矢倉規広七段がいます。

将棋を覚えたのは4歳の頃。羽生世代の棋士を取り上げたテレビ番組がきっかけでした。
5歳で大阪府豊中市に転居してからは道場に通い詰め、1999年、史上最年少の9歳で奨励会に入会しました。
そして8年後の2007年4月に四段昇段、平成生まれ初のプロ棋士となりました。
プロデビュー同期は金井恒太六段です。

通算成績は530勝250敗、勝率は.679(2021.11.14現在)。
40歳以下の棋士では渡辺明名人に次ぐ勝ち星を挙げています。
今年8月に行われたオールスター東西対抗戦のファン投票では、西日本2位となり、12月に開催される第1回大会への出場を決めています。

趣味はNBA観戦。サンフランシスコをホームとする、ゴールデンステート・ウォーリアーズのファンだそうです。

棋風・キャラクター

居飛車党で、特に角換わりを得意とし、最近は相掛かりも多く指しています。
深い研究に裏打ちされた序盤戦術で、時間を使わずに指し進めることも多く、それでいて積極的にリードを奪いに行くのが特徴です。
中終盤は、着実な手厚い指し回しと、鋭い踏み込みを併せ持っており、迫力のある将棋を展開します。

そんな豊島九段の代名詞は「序盤、中盤、終盤、隙がない」。
2012年のNHK杯戦、対戦相手の佐藤紳哉六段のコメントです。
10年近くを経て、隙のなさはそのままに、格段に凄みを増した将棋でトップ戦線に君臨しています。

一方、小柄であどけないルックスから、「とよぴー」「きゅん」といったニックネームでも親しまれています。
和服姿で静かにたたずむ様子は、さながら「若様」といったところでしょうか。
指し手の迫力と落ち着いた対局姿、そしてチャーミングなほほ笑み。このギャップも豊島九段の大きな魅力です。
また、タイトル戦のおやつで「フルーツ盛り合わせ」を好んで注文することでも有名です。
タイトル戦の中継では、趣向を凝らしたフルーツの数々を見比べてみるのも面白いかもしれません。

揮毫には、「知恩」(名人獲得時)、「無倦」(竜王獲得時)などを選んでいました。
筆跡は端正で、直近では「一刀両断」「勇往邁進」といった力強い語をしたためています。

実績

2011年、強豪ひしめく王将戦リーグを弱冠二十歳にして勝ち抜き、タイトル戦の舞台に登場するも、久保利明王将の前に敗退。
その後も好成績を収め、日本シリーズ優勝などの実績を残すものの、タイトル獲得には至りません。
2017年は初のA級順位戦で、開幕5連勝と快進撃を見せますが、結果は6勝4敗。これにより史上初の6名によるプレーオフが行われました。
惜しくも名人挑戦はなりませんでしたが、その約4ヶ月後、28歳で羽生善治棋聖から初タイトル・棋聖を奪取します。初めてのタイトル挑戦から7年半が経過していました。

この年の最優秀棋士に選ばれると、その後は一躍タイトル戦の常連となります。
翌2019年には三冠保持や、史上4人目の竜王・名人を達成しました。
2020年には、永瀬拓矢叡王との叡王戦七番勝負を「4勝3敗・2持将棋・1千日手」という歴史的な死闘の末に制すと、竜王戦では羽生善治九段の挑戦を退け、初のタイトル防衛を果たしました。

豊島vs藤井 「二〇番勝負」

同じ愛知県出身の藤井聡太竜王には、初対局から6連勝と圧倒し「藤井キラー」「ラスボス」との声も上がりました。
しかし今年の王位戦と叡王戦ではいずれも敗れると、秋の竜王戦七番勝負でも敗退。約3年ぶりの無冠となりました。
とはいえ、いずれも濃密な将棋で、「豊島vs藤井」が現代最高峰のカードであることは間違いありません。
1週間後に行われる日本シリーズ決勝も、瞬目すら許さぬ好勝負になることでしょう。

結語

タイトルの壁を打ち破ってからは、瞬く間に将棋界をリードする存在となった豊島九段。
今年のタイトル戦は厳しい結果となりましたが(藤井竜王、おめでとうございます)、これまでも苦境や逆風にさらされるたび、力強さを増して乗り越えてきました。
これからも迫力あふれる内容の将棋、そして次なるタイトル奪取を楽しみに待ちたいと思います。

※肩書は当時、もしくは2021.11.14現在

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?