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【劇場の声・番外編】鄭慶一(北九州市)

どうも。
鄭慶一(ちょん きょんいる)と申します。
僕は今全国小劇場ネットワークのクラウドファンディングの事務局に携わっています。
この4月からはフリーランスとして活動する予定だったのですが、皆さまご承知の通り、新型コロナウイルスの影響で、あらゆる予定が延期・中止になり、「これはそろそろアルバイトでも探さねば・・」というタイミングで、「全国小劇場ネットワークでクラウドファンディングをするから働いてくれない?」と打診され、4月20日、北九州から東京にやってきました。
しかもお給金をネットワークに参加している劇場が出し合って、集めてくれました。
ただでさえ大変な時期に僕の人件費を集める。
背に腹は変えられない。
東京に向かうことにしました。

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枝光まちなか芸術祭

僕はこの3月まで、民間の小劇場を運営していました。
その劇場は商店街の中にある小さな劇場でした。

潤沢な資金があるわけでもなく、立派な設えでもありません。
それでも、県外からたくさんのアーティストが来てくれまして、商店街を散策したり、ご飯を食べたり、お酒を飲んだりそして作品を上演したりしました。
それは街や地域にとってはとてもとても小さなことだったと思います。
そんな小さな営みを愛してくれて応援してくれる人が、少なからず日本国内にはいて、どうにかこうにか「小劇場」はやってこれたんだと思います。
だから小劇場は地域や土地の人々の影響を受けやすくて、それぞれが独特で個性豊かな場所になっていったんだと思います。
(だから、小劇場を運営している人は大体すごく変わった人が多くて、話がまとまらないんですけど。)

全国小劇場ネットワークはそんな「小劇場の小屋主」の集まりでもあります。

「小劇場」に馴染みのない方もいらっしゃると思います。
なんというか、演劇やダンスに携わる人間にとって、秘密基地みたいなものなんです。
自分たちの空間を好きに作り出して、素晴らしい、美しいと思ったことを好き勝手にやるんです。
それがとてつもなく素敵なものですから、僕たちはちっとも秘密基地から抜け出せずにいます。

生活に、人生に、世界に「芸術は必要か?」と問われることが何度かありました。
僕はその度に「必要ない」と答えます。
僕が活動のフィールドにしていた商店街の人たちはそんなことより日々の生活をどうするか考えることに力を傾ける人々ばかりです。
そんな人たちに「劇場に来て!」とは言えなかった。
でも、商店街の人たちは僕や劇場、劇団やダンサーがそこにいることを許容してくれました。
さらに、そういう人々を面白がってくれ、一時的にでも街の一部として過ごすことを許してくれました。
「芸術は必要か?」という問い自体がナンセンスなのかもしれないと思い始めました。
勝手にこちらから壁を作っているだけで、諦めていたのかもしれません。
たまたま僕たちの営みの中に芸術があっただけなんだろうなと。
そもそも誰も問いと思っていないのかもしれない。
芸術に携わる人間が勝手に思い始めたのかもしれない。
僕があの場所で学んだことを一つ挙げるとすれば、そのことです。

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枝光まちなか芸術祭

これからの「小劇場」が日本の中でどんな場所になるのかは誰にも想像できません。
ただ、それを想像する人々が集まっているのが「全国小劇場ネットワーク」という集まりで、この場所は小劇場運営者の「小劇場」のような場所になっていくんだと思います。
ネットワークという「小劇場」で僕たちは、自分たちの素晴らしいと思ったり、素敵だと思ったことをうんうん唸りながら考え、それぞれの「小劇場」の力を借りながら実現していくんだと思います。
そしていろんな地域にある劇場は僕が学んだことのように、それぞれの地域でそれぞれの活動をする中で何かに気づいたり学んだりして、それが劇場の色になっていくんだろうと思います。

そうやって色んな色に彩られたカラフルな小劇場(ネットワーク)は地域(日本)にフィットする自分たちのあり方を模索していく。

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枝光まちなか芸術祭

僕は最近まで「小劇場」を運営していて、そこから抜けたのですが、結局「小劇場」に拾われて今こうやって「小劇場」のことを書いています。
僕は社会に出てからの8年間、ずっと「小劇場」に携わっています。

今、小劇場は苦境に立たされています。
ですが、これくらいの苦境では小劇場は無くなりません。
活動する地域で自分たちの立ち位置をうまくフィットさせてきたネットワーク参加劇場は、コロナ禍においても現状に自分たちをフィットさせながら、うまく乗り越えて行くはずです。
これからこのネットワークは、はちゃめちゃ面白くなります。
どうぞご期待ください。
そして、ぜひ一緒に面白がっていただけますと幸いです。

鄭慶一
元枝光本町商店街アイアンシアターディレクター〈福岡県 / 北九州市〉
枝光まちなか芸術祭プロデューサー

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枝光まちなか芸術祭


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