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【第3回シアターホームステイプロジェクト】熊木志保 レポート

若手の演劇人・アーティストが他地域の小劇場に滞在し、今後の活動について構想する「シアターホームステイプロジェクト」。
2023年7月~2024年1月に行われた第3回目の参加者によるレポートの紹介です。


■熊木志保(札幌座)
 札幌→松山
 シアターねこ 2023年8月31日(木)〜9月11日(月)


今回、松山にある劇場・シアターねこさんにお世話になり、12日間松山に滞在させて頂きました。
このシアターホームステイでは「何かしてもいいし、何もしなくてもいい」ということで、自由に愛媛の行きたいところを見て回りました。
 
劇場に行き、街を歩き、人と出会う…長いようであっという間の12日間でした。

お世話になった劇場 シアターねこさん

【1日目】 札幌から松山へ移動
シアターねこの鈴木さんが松山空港まで迎えに来てくださり、街の名前や劇場のことを話しながら、ゲストハウスへ。
ゲストハウスがあるのは劇場から歩いて3分くらいの所でロープウェイ街と呼ばれる所にありました。ロープウェイ街は近くに高校や大学もあるからか自転車に乗った学生さんたちの姿もちらほら。
夜にゲストハウスから5分くらいの所にある「寿温泉」へ。昔ながらの銭湯の雰囲気だけれど奥道後からお湯をひいている温泉でとても気持ちが良く、移動疲れも癒されました。

松山空港のみかんタワー

【2日目】 道後温泉へ
午前中はシアターねこさんで劇場のこと、愛媛・四国の演劇状況などお話を伺いました。
午後は道後温泉周辺をぶらり。円満寺、宝厳寺、伊佐爾波神社に行きました。
道後温泉は改修工事中。工事現場をつい覗き見。
建物が札幌には無いものばかりで散歩しているだけでもとても面白く感じました。
散策で汗だくになったので、道後温泉本館で入浴しました。立って入れるほどの深さのある浴槽につかり、道後温泉の商店街でお風呂上がりのいよかんソフトを食べて、ゲストハウスに帰りました。

改修工事中の道後温泉本館

【3日目】 松山城と観劇
午前中はゲストハウスの目の前にある松山城に行きました。
松山城は山の頂上にあるので、途中まではリフトに乗って行きました。
のんびりゆっくりと登っていくので、タイムスリップしていくような感覚に。

よしあき君と松山城

午後はシアターねこさんでOUTBACKさん観劇。終演後、創作過程のドキュメンタリー映画も観ました。
 
OUTBACKさんは横浜を拠点として、メンタルヘルスに不調を抱える方たちが集まり、ご自身の経験をもとにオリジナルの劇を創作するなどの活動をされているそうです。
オリジナルラップが散りばめられ、生演奏と数客のイスで舞台が転換していく。
とてもクリエイティブな空間で心が躍りました

【4日目】 しまなみ海道サイクリングの旅
 
憧れのしまなみ海道でサイクリングをしました。
今治駅から出発。
今治駅では電動自転車が無く普通の自転車を借り、まずはしまなみ海道の入り口「サンライズ糸山」を目指すことに。
あともう少しで糸山に着く!というところで急な坂道が続き汗だくに…。


サンライズ糸山に汗だくで到着!

橋の上でのサイクリングはとても気持ちが良く、眺めも最高!
写真を撮りまくりなかなか前に進まず・・・予定の時間を大幅に超えて大島に到着。

すぐに急流観潮船に乗り込み、橋を下から眺め、大迫力のうず潮を間近で見て大興奮。
お昼過ぎから天気が良くなり、綺麗な風景が広がり、心が癒されました。


大島を後にし、自転車を再び走らせました。しかし、とても暑く汗が止まらない…そしてお尻も痛い。

気合いで今治城へ自転車を走らせ、お城を堪能。
お堀は海とつながっていて、海の生き物と淡水の生き物が一緒に住んでいるらしい。
 
体力の限界を迎えながらも、今治駅から大島往復&今治城25キロを無事に完走!
達成感で包まれました!

今治城

【5日目】  港町 三津浜へ
 
三津の渡し船を乗りに行きました。
駅に着くとちょうどお昼ご飯の時間。
まずは有名な三津浜焼きを食べにレッツゴー。
焼けるのを待っていると持ち帰りの注文で電話が鳴り止まず!
店員さん1人で回しているので大変そう。

麵が入っているので広島のお好み焼きに似ていました。
三津浜焼きはヘラで食べるらしい。
上手に食べれないかも…と思っていたら店員さんがお皿と箸を用意してくれました。
お隣の常連さんのマダムは器用にヘラで食べていて、手元に見とれてしまいました。

三津浜は港町の穏やかな空気が流れていて、三津の渡し船ものんびりゆったりな時間でした。
「月10日くらいの勤務。年金暮らしさ~。5人で回していて当番制なんだよー」と船員さんのおじさんが教えてくれる。

【6日目】 内子&大洲へドライブ
 
車を借りて、内子&大洲までドライブ。
内子は木蝋で栄えた街で、蔵などしっかりどっしりした建物が多くありました。
木蝋を見たかったけれど残念ながらお店はお休みでした。
 
気を取り直して、ずっと行きたかった念願の内子座に

木のぬくもりがあたたかく、実際にまだ使われているのに胸がいっぱいになりました。
ずっといても飽きない、そんな劇場でした。

1番テンションが上がった奈落!!

内子から大洲へ移動して、まずは大洲城へ。
大洲城から見える景色が美しい。

大洲の街も散策。
大洲ではリノベーションしてホテルになっている邸宅がちらほら。

松山に戻り、夜は「シアターねこカンパニー」さんの会議に参加させてもらいました。
シアターねこカンパニーさんの活動は3年目。これから4年目に向けてどのように活動していくか、メンバー同士の意見のやり取りが続くエキサイティングな会議でした。
普段、自分が所属している劇団以外の会議を見ることはないので、とても貴重で濃密な時間を過ごすことができました。

【7日目】 かまどねこ、シアターねこ、風のねこ
 
松山に来てから毎日出かけていたので、疲れが出てしまいました。この日は松山市内でゆっくり過ごすことに。
お昼ご飯を食べに、NPO法人シアターネットワークえひめさんが運営しているカフェ「かまどねこ」さんへ。古民家のカフェで、地元の方がちらほら。図書室も併設されています。

シアターねこの鈴木さんは一時、ここでランチを提供してから劇場の仕事をしていたそうです。

シアターねこさんは元々幼稚園で、所々に幼稚園の名残が感じられます。劇場のドアは教室のままの形。楽屋も廊下部分を利用しています。

廊下を利用した楽屋

そしてこの日は劇場の横にある就労継続支援B型事業所「風のねこ」さんへお邪魔させて頂きました。
その日の午後の利用者さんは1名で、淡々と作業をされていました。
 
利用者さんの作業の合間に少しお話をさせていただいたのですが、2日目に行った道後温泉近くの円満寺のお結び玉もこちらで作っているとのことがわかり、不思議なご縁を感じました。

【8日目】 砥部町にドライブ
 
かの有名なピースさんに会いにとべ動物園に行きました。
暑い日だったのでピースさんグッタリ。

ライオンのクレイちゃん。
秋に円山動物園にお引っ越しするそう。
ここでもご縁を感じる。
レポートを提出したころには札幌に来ているかもしれない。会いに行かねば。

円山動物園にも象がいるのに、実は一度も見に行ったことがなく、人生で初めての象に興奮。
 
象は器用に葉っぱを食べれる大きさに折ってお口へin。
面白くてずっと見てしまう。

動物園を後にし、砥部焼きを見に行くことに。
砥部焼を使ってランチ提供しているお店へ。食器が素敵で、目でも楽しみながらで食事をしました。

箸置きがピーナッツで可愛い

陶器が好きで眺めているのが楽しく、砥部焼屋さんでずっと居座ってしまう。
作っている様子も見学できて職人技に感動。作っている様子も見学できて職人技に感動。

【9日目】 松山市内を巡る旅
 
松山市内のミュージアムやお寺を巡った1日。
行ったところ→二之丸史跡庭園、湯築城跡、石手寺、子規記念博物館、愛媛美術館、道後の住宅地を散歩。
この日はとにかく歩き回っていたのですが、面白いことが色々と起こった日でした。
市電に乗ろうとしたら秘密のケンミンSHOWの収録してて「お騒がせしました!」とボールペンをもらったり。
(県民じゃないのにちゃっかりもらう)

お昼はアルミ鍋の鍋焼きうどんを食べていると…店長さんが「すみません、ちょっと出てきます。お客さん来たらすぐ戻ってくるので待っててくださいと伝えてもらえますか。」と言って出て行ってしまったり…。
お客は私だけ。響くのは自身がうどんをすする音のみ。寂しい。
(5分くらいで店長さんは戻ってきた)

石手寺に行き、何もわからずにマントラ洞窟に入ろうとする。
洞窟内はとても涼しく、暗く、お地蔵さんがポツンと立っていて…恐怖に襲われ入り口で断念。
心の整理がつかないまま歩いていると、参道のお土産屋のおばちゃんに声をかけられた。

恐怖で洞窟に入れなかったことを話したら「せっかく北海道から来たのだから、内緒だよ」と言って売り物のブレスレットをプレゼントしてくれました。

シアターねこカンパニーのそめさんが誘ってくださり、一緒に夜ご飯を食べに行きました。
松山、四国、札幌の演劇のこと、趣味のこと…沢山お喋りしました。
本当に楽しい時間でした!!

少しずつ広がっていくご縁を感じ、夜のロープウェイ街を歩いたのでした。

【10日目】 別子銅山、東洋のマチュピチュ東平へ
 
車を借りて1時間ほど運転し別子銅山に行きました。
1人で運転する高速道路は初めてだったので少し緊張しつつも無事に到着。
午前中はツアーに参加して東洋のマチュピチュ東平へ。細い曲がりくねった道を進み山の上へ。

昔は5000人くらいの人が山の上に住んでいたらしい。

午後は鉱山鉄道に乗り坑道見学へ
坑道を歩く。夕張に似ている雰囲気を感じる。

旧端出場水力発電所へ。
実際に使われていた機械がそのままあり大迫力!

最後はマイントピア別にある温泉とサウナを満喫しました。
静かな山の中での外気浴で身も心も整いました。

【11日目】 カラクリ時計と観劇、そしてサプライズ

タイミングが合わなくて見れずにいたのが心残りで、道後温泉駅前にあるカラクリ時計を見に行きました。
普段の姿とは想像もできないくらい変化していって驚き。
 
この日は日曜日だったので、道後温泉の商店街も観光客で賑わっていました。

その後劇団プラチナねこさんの公演を観にシアターねこへ!
シアターねこの演劇教室の参加者を中心に2016年誕生したのが「劇団プラチナねこ」さん。
劇場の取り組みが、少しずつ地域に根付いていっているのだと感じました。

お客さんの反応も札幌と違うので、新鮮な感覚に。松山に来なかったら観ることができなかったので最終日もあり感慨深くなりました。

そして観劇後にシアターねこカンパニーのそめさんとご飯を食べる約束をしていたのですが…
サプライズで下灘駅に連れてってくれました!

下灘駅は映画やドラマロケ地、JRの青春18きっぷのポスターなどにも起用されているくらい、美しい景観が広がっています。
途中雨が降っていましたが、奇跡的に晴れて夕日を見ることができました。

心が洗われるくらいの美しい景色とサプライズに感動し、泣きそうになりました。

【最終日】 東雲神社にお詣り、松山→札幌へ

朝は早く起きて少しお散歩。
松山城麓の東雲神社にお詣りをしました。
 
そして空港へと向かいました。

飛行機から見える北海道

飛行機を降りると北海道には秋の空気が漂っていました。
電車の中でぼんやりと北海道の景色を眺めながら「また松山に行きたい」と思いました。

【12日間の滞在を終えて】
 
今回の滞在を通して、今まで生きてきた中で見たことがないものに触れる毎日でした。レポートに書ききれない出会いも沢山ありました。見て回って楽しむ!そんな滞在でしたが、行ったことのない土地で経験したことのない何かに触れる大切さを再確認することができました。
また、劇場シアターねこの横に就労継続支援B型事業所「風のねこ」がある環境触れることができたのも、貴重な経験になりました。地域に根付いた演劇をどのように創っていくか…札幌という街、北海道という土地で、今後演劇活動を行っていく際のヒントになると感じています。
最後になりますが、松山でお世話になった皆様に、この場をお借りして心より感謝を申し上げます。

主催:一般社団法人全国小劇場ネットワーク
助成:公益財団法人セゾン文化財団「創造環境イノベーション」


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