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三坂恵美(合同会社Booster)さんより

チケットの入っていない財布

2020年、今まで働いていた会社を退職し、「がんばるひとを後押しする」を理念として、合同会社Boosterを設立しました。
主な業務としては、インディペンデントシアターの制作業務受託とライトアイ折込代行の運営受託。2020年4月から業務開始、というところで、新型コロナウイルス感染症による影響を受けました。

インディペンデントシアターの制作業務については年間契約で、劇場が休館していてもやることはあるので予定通りの収入でしたが、ライトアイ折込代行については、4月に入り折込先となっていた公演が軒並み中止されたり、公演はおこなっても外部のチラシ束受入はおこなわないということで受入がなくなったりで、4~6月は1件も折込がなく、売り上げもゼロとなりました。7月からは折込受付も再開しますが、今のライトアイのチラシ置き場は、上の写真のような状態です。

脱サラ起業・4月からの業務開始ということで、各種給付金や補助金は対象外となっており、唯一対象なのは個人の特別定額給付金だけです。
ただ、不幸中の幸いが重なって、実際にライトアイの売上がゼロになってもそんなに悲観的にはならずにすみ、空いた時間で再開後に向けての準備をしたり、この際だから自分にとって演劇とは何か?について向き合っておこう。という気持ちで、以下のような文章をまとめていました。

インディペンデントシアター1stの中に自分の事務所があるため、上記のような文章をまとめたり、給付金や補助金の情報を見ては自分が対象外であることを確認したりしている中で、相内さんが全国小劇場ネットワークのWEB会議に参加している音声によって、各劇場の状況などを聞いていました。
また、ライトアイの折込先がどんどん公演中止になっていく様子を見ていて、4月は勝手に他人の心配ばかりをして気が焦っていたな~という記憶です。

4月に起きたことで一番印象に残っているのは、インディペンデントシアター宛にお客様から「劇場を応援するような窓口はないか」というお問い合わせのお電話をいただいたことです。公演主催者だけでなく、それを支える場として劇場があるということを認識し、実際に応援したいという行動にうつしてくださる方がいらっしゃるということが、とてもうれしく思いました。
実際に行動にうつすまでに至らなくても、応援したいという方はいらっしゃるだろうし、情報のハブになることも劇場の仕事だろうと考え、劇場のサイトに支援情報の提供を希望する方の窓口をつくりました。

5月になると、企業向けの業務改善・進行管理のお仕事の受託が決まりました。自分で会社をつくるにあたって、業務の3本目の柱として、演劇を社会をつなげるために、企業向けの業務をおこなおうと考えていたが、実績もないし、もうちょっと先に着手しよう・・・と思っていた矢先にあれよあれよと決まり、バタバタする日々を過ごしました。そんな中、いろいろなクラウドファンディングが出てきたので、各クラウドファンディングの文章などを読みながら、自分にできる範囲で賛同したり、寄付したりしていました。
また、客席数を減らした公演再開に向けて、チケット収入についてはどういう形が考えられるか?についても考えました。

6月、家の近くの人通りも増えてきて、公演が再開していく動きも出てきました。久しぶりに財布のチケット入れを見ると、空っぽでした。最後にチケット入れを整理したのが3月末で、ちょうどそれから今まで何も劇場で観ていなかったので、当然チケットが入っているわけがないのですが、3ヶ月も劇場に行かなかったのか・・・とハッとしました。そして、4月に知り合いと冗談めかして「こんなに劇場に行かないと、いざ自粛明けで劇場行くときに緊張しそうだね」と話していたことを思い出しました。今、7月の公演を1つ予約していますが、生の舞台の情報量に触れるのが久しぶりすぎて、頭が処理しきれるだろうか・・・と、すでにちょっと緊張しています。

観客としての私はこれから劇場で上演されるものの中から、興味を持ったものを観に行くだけですが、劇場制作やライトアイ折込代行の運営をおこない、会社を設立したばかりの私は、これからが踏ん張りどころです。
4~5月に考えたこと、文章にしたことは、実は今しかできないことではなく、いつでもできたし思いついてもよかったな、ということに最近気が付きました。

今まで舞台芸術のチケットを買ったことがない人のお財布がチケットでいっぱいになる・・・ところまではいかなくても、今よりお財布にチケットが入っている人を増やすために、できることはまだまだあります。この3ヶ月に考えたことを忘れず、日常に押し流されずに考え続け、動き続けていきたいと改めて感じています。

三坂恵美(合同会社Booster)
高校の演劇部に入ったことがきっかけで小劇場演劇に興味を持つ。福岡市にて劇団ぎゃ。に所属しながら、NPO法人FPAPで劇場・練習場の施設管理、福岡・九州の地域演劇支援をおこなう。2014年の劇団解散後、大阪にて、オンライン観劇サービス「観劇三昧」を運営する株式会社ネクステージに入社、演劇事業全般とバックオフィス業務に携わる。
2020年に同社を退職し、「がんばるひとを後押しする」を理念として合同会社Boosterを設立。 インディペンデントシアター劇場制作業務・ライトアイ折込代行の受託をメインに、制作として活動中。

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表紙写真:合同会社Booster事務所


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