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靴とクルマの意外な共通点のこと

じつは私は靴の仕事をする以前には、少しだけクルマの関係の仕事を、それも開発というなかなかマニアックな仕事をしていました。

ただ、その頃はまだ下っ端だったので、やっていることといえば雑用やデータどりなど、先輩方のサポートが多かったです。

でも、そのころ学んだことは、今の靴づくりの仕事に大変役にたっています。

ところで、長時間歩き続ける、もしくは長時間履き続けるということを考えた時に、快適に履ける靴とはどんな靴だと思いますか?

長時間といってもいろいろあるかと思いますので、一つの例として10年前の東日本大震災の時に東京周辺では自宅まで歩いて帰る方がたくさんいらっしゃって、結構多くの方が10時間くらいかけて歩いて帰ったと聞いています。

なので、そんなに頻繁にあることとは思いませんが、10時間くらい歩き続けるということで考えてみましょう。

お仕事をしていれば、朝自宅を出てから帰宅するまで10時間くらいという方は珍しくないですし。

長時間快適に歩き続ける、もしくは長時間快適に履き続けることができる靴は、私が考えるところでは、ねじれ剛性が十分にしっかりしている靴だと思っています。

ねじれ剛性がしっかりとしているとは、靴自体が外的な力でねじられたときにねじれにくいことを意味します。

一番上の写真では、私が靴を思い切りねじっているのですが、頑張ってもこれくらいが限界です。

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じつは、人の足は前の方のジョイント部分は屈曲することができますが、上の写真で私が親指と人差し指で示している後ろ半分はほとんど動きません。

ここがポイントなのです。

この部分がグニャグニャだとどんなことが起こるかというと、歩いているときに靴がねじれて、そのねじれが足に伝わり、足はそれに対してねじれないようにたくさんの力を使うことになるのです。

そうならないように、靴の後ろ半分はしっかりと補強を入れて、外的な力がかかってもカッチリとしていて(ねじれ剛性が高くて)ねじれず、足に余計な負担をかけないことで、疲れにくくなります。

これは、自動車のプラットフォームやボディのねじれ剛性と似ています。

これから500キロほど走ろうというときに、クルマのねじれ剛性が弱くてグニャグニャだったりすると、乗っている人に衝撃が伝わり、無意識にそれに対して身体を安定しようと力を使い、疲れてしまいますが、

最近のクルマのようにちゃんと計算されてねじれ剛性が高い場合には、サスペンションもしっかりと機能することもあって衝撃が乗っている人に伝わりにくく、結局は疲れにくいということになります。

もちろんクルマの場合はそれだけではありませんが、クルマ自体のねじれ剛性は乗っている人の疲れに大きく関係します。

靴も人を乗せて移動するということではクルマと同じです。

外からの衝撃は、吸収するべきところで吸収し、靴自体はねじれ剛性を高く保ってムダに足がぶれないようにしておくことが、疲れにくいということにつながります。

加えて言ってしまえば、靴の場合は単に快適であるだけではなく、足を機能させて健康で良い状態に保つということも必要ですので、疲れにくさと同時に歩きやすさもしっかりと考えなくてはいけません。




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