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作り手から直接伝えたいオーダーメイド靴のこと

オーダーメイドの靴を作る仕事をして、もうすぐ18年になります。

オーダーメイドの靴と言うと、自分には縁のないものとか、靴マニアの人が履いていそうとか、あまり身近に感じてもらえないものというのが、私がこの仕事を始めたころのイメージでした。

最近は、オーダーメイドのスーツがだいぶ身近になってきて、そのおかげか若い方でも靴をオーダーしてくださる方が増えています。

ところで皆さんは、オーダーメイドの靴と聞くとどんなものを想像しますか?

高そうなスーツを着ている人が履いている靴?

お金持ちの人が、高級外車の後ろの席から降りてくるときに履いている靴?

じつは、今はオーダーメイドの靴は本当にピンキリで、モノによってはほんの数万円から買うことができます。

ただ、オーダーメイドという括りもじつは範囲がとっても広く、例えば好きな革に、もしくは好きな色に変えてもらえるというのも一応はオーダーメイドになり、

それは靴の世界ではパターンオーダーと言うのですが、足に合わせた調整はほぼしない、もしくはしてもちょっとだけというものになります。

その上になると、呼び方はいろいろであまり統一されていないようですが、いくつかありまして、

最も自由度が高いものが、お客様専用のラストを作ったうえで足に合わせた調整があり、デザインや革を好きに選べるというものがフルオーダーとなります。

「いやいや、自分は既製品でもちゃんと足に合うから、オーダーメイドなんて要らないよ。」

とおっしゃる方、結構多いです。

じつは、私はご注文のお客様のほかにも、イベントなどでたくさんのお客様の足を計測させていただいていまして、新型コロナが流行する前だと年間200名くらいの方の足を計測していましたが、

確かにJIS規格の数値上は既製品でも履けるお客様は一定数(感覚的に2割くらい)いらっしゃいます。

ですが、既製品の靴とオーダーメイドの靴とでは、じつは全く作りが違うのです。

たとえば、中には海外のブランドのモノでかなり手間をかけていて良い素材を使って既製品にしてはかなり頑張っているモノもありますが、

ほとんどのモノは、既製品とオーダーメイドとでは大きく異なります。

仮に、その方がJIS規格の靴に全く問題なく合う足をされているときに、それでもオーダーメイドの靴を履く理由を挙げてみると、

一般的に大量生産を前提とした既製品に対して、オーダーメイドの靴は大量生産ではこなすことが難しい技術をもって製作することが多く、

たとえばカカトのカーブなどは大量生産だとラストを抜く工程で靴の革が裂けないようにある程度の形状にしていますが、

オーダーメイドの場合はひとつひとつ温めながらラストを抜くことができるので、かなり攻めた形状になっています。

つまり、カカトのホールドはオーダーメイドのほうがより安定しやすい傾向があると言えるでしょう。

また、多くの既製品の靴はラスティングを機械でおこなっていますが、

オーダーメイドの靴はそもそもが少量生産を前提にしているのでラスティングの機械を持っている工房は稀で、つまりは作り手が革の状態を見極めながら手作業でラスティングをします。

これは、実際にやったことがある方ならすぐにわかると思うのですが、革はベストな引き具合で引くとパリッと型崩れすることなくキレイに成型されて、キレイな靴ができますし、

履く方の足の状態を知っている作り手なら、引き具合を加減しなが多少やさしい履き心地にラスティングすることも可能で、その違いは履いたらすぐにわかります。

ここまでは、仮にJIS規格の靴に合う足をされているという前提でお伝えしてきましたが、じつはJIS規格に合う足だとしても攻めどころはたくさんあることが多く、

オーダーメイドなら、ほんの1ミリだけ左足の甲周りを締めてあげるとより履きやすくなるなど、多くの方が持っている左右差の調整をすることができますし、

その方のバランスに応じたカカトの高さの調整も可能です。

そんなわずかな調整が履き心地に非常に大きな影響を及ぼします。

おそらく、多くの方が・・・、

「そりゃ、オーダーメイドのほうが良いのはわかっているよ。」

とおっしゃることでしょう。

「わかっているけど、その費用対効果がどれくらいなのか。」

というところが、オーダーメイドの靴に足を踏み入れない理由ではないかと思います。

「既製品の靴で、不自由なく履けているんだから・・・。」

そう言われてしまいそうです。

実際に履いてみないと、どれくらい良いのかなんてわかりませんよね。

ただ、これまでとっても多くのお客様が、もっと早く出会いたかったとおっしゃっているのは事実です。

ここから先は、各作り手によって考え方が異なる部分なので、オーダーメイド靴のすべてがそうだとは言えませんが、

私たちシューリパブリックの靴に関してお伝えするならば、真夏でも靴の中が蒸れにくく、足の指をちゃんと動かすことができて、しっかりと地面をつかむように足を機能させて歩くことができ、

高いねじれ剛性と優しい包まれ具合で1日履いていても疲れにくいという、履いて歩くことに重点を置いた実用的なオーダーメイド靴です。

コンセプトは、日常仕様のオーダーメイド。

皆さんに履いていただきたいと思っています。

私たちが作る靴に限らず、どこの工房でも作り手が独自のコンセプトでお客様のための靴を作っています。

どこかの工場で作られて、流通に乗って来るような原価率が20%くらいのモノと違い、そこの工房で作られて場合によっては原価率が100%みたいなモノもあって、

ある意味とってもお得感があるものばかりです。

そして何より、作り手の顔が見えて、作り手が何を考えて何を目的としているのか直接聞くことができるのです。

靴の工房に行ったら、何も買わずに帰りにくいと思うかもしれませんが、それはあらかじめ見学と言うことを伝えて、まずは作り手や靴をしっかりと確認して、

そのうえで気に入ったらオーダーすればよいのです。

今後改めてお伝えする予定ですが、既製靴のサイズレンジは本当に狭く、これですべての方々の足を賄うのは難しいです。

もし、既製品の靴では不具合がある方、より履きやすい靴を求めている方、自分だけのオリジナルの靴を求めている方、ぜひオーダーメイドの靴に目を向けて見てください。

ひとつお伝えしておくと、オーダーメイド靴の工房は、それぞれ方向性というか得意な分野と言うか、いわゆる得手不得手があります。

その工房は、どんなものを作っているのかざっとリサーチして、よくわからなければ直接聞いてみてから見学に行くと良いでしょう。

たくさんの方々が、靴と足の問題が解決することを願っています。


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