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靴磨きの少年

初めまして!
名古屋シューケアサークル「靴磨きの少年」リーダーのおかてつです。
僕は以前4年ほどシューケア用品の販売に携わってました。
最初は全く知識がなくて、シューケアなんて面倒な事だと思ってました。
メーカーさんとお喋りしたり、知識が増えていき自分自身が手入れができるようになり、意外と簡単でさらに夢中になれる事に気づきました。
その後にお客様に靴磨きを知ってもらうことでその楽しさを知ってもらいたくて、楽しみながら仕事をしていました。
今は別の職務をしていますが、未だに趣味として嗜んでおり、そこから友達が増えたこともあります。
今回はその友達と皆に楽しいことを知ってもらいたいという気持ちで立ち上げました。
僕自身そこまで「詳しいです!」とは言えませんが、メーカーさんから教えていただいた事や自分の持つ知見を皆様にお伝えしますので、何も怖がることなく全力で楽しんでください!
以下、革についての知識やお手入れ方法等をご紹介します。
固い文章ですがお付き合い下さいませ。

皮革の基礎知識

皆さん革ってどのようにして生まれてるかご存知ですか?
人間の皮もそうですけど牛の皮も柔らかいです。
普通に切り取っただけでは革靴のように堅牢な物を作ることができません。
知ってる方もいるかもしれませんが、化学的な処理である「鞣し」をすることによって「皮」が「革」になるのです!

この処理を行うことで皮は腐敗しにくくなり、毛穴が開き柔らかくなり、さらに耐水性・耐熱性などの革本来の性質が生まれます!
つまり強靭にする作業ですね。
この作業は表面の毛をとり、皮下脂肪をきれいに取り除いたりする作業が終わったものに鞣し剤を使ってコラーゲン繊維を定着させることで安定します。

主な鞣しの方法は大雑把に分けて2種類あります。

クロム鞣し(鉱物性)とタンニン鞣し(植物性)ですね!
どちらの方が優れてるというわけではなく、得意な分野が分かれてるので、使用目的によって使い分けるのが正しい革の使い方かなと思います。

クロム鞣し
耐熱性、柔軟性に優れていて、軽くて弾性がある。
切り口は淡青色が多く、直接染料で染めやすい。
主に革靴のアッパーに使われます。
代表例:レッドウィング、一般的なビジネスシューズ

タンニン鞣し
硬くて丈夫。伸び、弾性が少ないので革靴の底材、中底、芯材などに使われています。
ヌメ革がこれにあたります。
代表例:イルビゾンテの革小物、お財布

中にはクロム鞣しとタンニン鞣しを両方使った混合鞣しというものも。

表皮層のしくみ

牛革の断面図はミルフィーユ状に3層に分かれています。
クリームの浸透する部位が別れるところなので知っておいて損はないと思います!

①表皮層
革靴などの表面にあたるところです。
ワックスやクリームのロウ分がここに留まります。
ロウが膜を張ることによってクリームの中に入っている油分、ビタミンなどの栄養分、水分などにフタをします。

②銀面
ここに油分が留まります。
油分も水分も抜けてしまうとカサカサになり、クラック(破れ)が起きてしまうことも。
しっかり定期的に油分を入れてあげることでここに留まり柔軟性を持たせてくれます。

③繊維層
第3までは油性クリームだと浸透しづらいですが、「乳化」の作業が行われることによってクリームの中の
水分やビタミン、コラーゲンなどの栄養が入り劣化を防いでくれます。
以上からわかるのは、一番粒子の細かいものが一番奥に浸透するということです!

クリームの違い

乳化性クリーム
いわゆる一般的なビン入りのクリームです。
初心者〜上級者全ての人に向いてます。
ツヤ感は割とありますし、栄養効果が高いものが多く、柔軟性と保湿をさせる効果もあるので通常のメンテナンスとしてオススメのものです。
乳化性は油と水をうまく合体させ乳化させているので、第1〜第3層までくまなく浸透します。
食べ物で例えるとマヨネーズなどが乳化されて油と水分が上手く混ざってますね!

油性クリーム
最近靴磨き界隈で主流なのはこっちになってきましたね。
初心者の方より上級者の方が使っている事が多いです。
ツヤ感は格別に高く、ワックスと違って屈曲部分に塗っても割れにくいです。
栄養効果が高く、全体を光らせれるので、鏡面しない方にもむしろオススメです。
油性は第3層までは届かず、第1〜第2層まで行き届きます。
たまにブラッシングをする際に水を付けて固く絞ったクロスで水分補給してあげるといいですね。ツヤも出ます。

油性ワックス
これに関してはほぼメイクアップ用と言っても大丈夫でしょう。
よくつま先やかかとをピカピカにしてる方はこちらを使っています。
ツヤを最大限に与え、防水性も与える事ができます。
ただ、トゥやヒール、側面以外の屈曲部分に塗ってしまうと
ワックスの層が割れてしまうので、その部分だけに留めましょう!
どうしても光らせたい方は油性クリームの方を!


お手入れ手順

まずは必ずシューキーパーを入れてからお手入れをして下さい!シワをしっかり伸ばして、屈曲部分にクリームをしっかり入れ込まないといけません。
また、普段からシューキーパーを入れて上げとほうがソールの返りを防いで靴の寿命を長くさせれますので持ってない方はぜひ手に入れてみて下さい!

①ブラッシング(馬)
毛が長くて柔らかい馬毛ブラシを使う事で表面のホコリやコバの間のホコリまで落としてくれます。
ワックスの上からコシのあるブラシを使うと、毛の細かい線が入ってしまうのでご注意を。
ワックスの油分が上手く浸透していけばブラッシングだけでツヤが出るようになります。
ブラシも育てれるので、革靴と一緒にレッツ経年変化!

②汚れ落とし
お化粧品でいうところのクレンジングにあたります。
スッピンにさせることで化粧ノリがよくなると聞いたことありませんか?

表面の汚れ、古いクリームを落とし込んで次のクリームの浸透性を上げる役割があります。
pHの強い汚れ落としは皮革にダメージを与えてしまったり、染料も落としてしまう時もあります。
汚れ落としはゴシゴシ擦るのは厳禁です!汚れを溶かす溶剤が溶かしてくれますので、優しく擦って下さい。
水性クリーナーは全般的にpHが強い傾向があるので、薄い色の革やデリケート革で心配な方はクリームタイプの方がオススメです!
またクリームタイプは同時にツヤ出し・保革もしてくれる効果もあります。

③栄養補給、補色
やっと本番です!
化粧水・乳液で栄養補給するとともに肌質を整えます。
革自体は生きていないので、油分・水分を自分から出すことはできません。
そこで肝心なのが乳化性のクリームなどで栄養分を補給してあげることです!
また、乾燥している革やプレメンテでしっかりケアしてあげたいという人にはデリケートクリーム系を先に塗ってあげることをオススメします!
クリームも浸透しやすくなりますし、革の乾燥を抑えて柔軟性も増すので、コンディションを整えるにはベストです!

塗り方ですが、ステッチ部分やコバとアッパーの間の隙間部分まで塗り込んであげましょう。塗布用ブラシを使うと楽ですが、指で塗る方やクロスでぬる方などさまざまですがお好みの方法でOKです!
色に関しては1〜2トーン明るめのクリームを選んであげるといいです。
油分が抜けた革に対しては色が濃くなることが多いので、濃淡ハッキリさせたいなどの目的がない限りは薄めの色を選びましょう。
顔料系・染料系とありますが、一般的なクリームは顔料系も多いので、そこまで浸透することはないので汚れ落としで落とせることも多いです。
染料系になるとその名の通り革を染めてしまうので注意が必要です。補色が本当に必要な時やエイジングを楽しみたい方は挑戦してみてもいいのでは無いでしょうか!

塗り方のメリット
指塗り:指の体温でクリームが溶けやすく、革に入り込んでる質感がわかる。プロの方がよくこちらのやり方をしています。
ブラシ塗り:初心者の方は特にオススメ。塗りムラも出にくいので、まずは黒いクリームとこちらを買うことをオススメします。
クロス塗り:塗り過ぎが無い。水分の多いクリームを使うとクロスがクリームを吸いすぎて摩擦が起き、ダメージを与える可能性があるので注意。
水分の少ないクリームの時は塗り伸ばしやすい。

④ブラッシング(豚)
2度目のブラッシングです。最初の埃落としとは違い、クリームを浸透させつつツヤを出すのが目的です!
固いブラシを使い、表面に対して力は入れずに高速に磨いていきます。
手の動きが早いほど摩擦が生まれ、熱とともに浸透・光沢が増します!
この時点でピカっと光ってくるのでは無いでしょうか。
また、油性クリームを使う際、ハンドラップなどで水を少しブラシに付けながら磨くとツヤ感がさらに増します!
これはロウ分の多いクリームに対して効果的なので、コードバンクリームなどでも有効です。
馬毛ブラシと同じく、乳化性・油性クリームが浸透した豚毛ブラシは、クリームを付けなくても補色。ツヤ出しができたりします!ブラシに油分と色が浸透しているんですね〜!
革靴のエイジングと共にブラシのエイジングも楽しめるなんて靴磨きってなんて素敵なんでしょう。

⑤仕上げ
余分なクリームを乾いたクロスで拭き取っていきます!
おかてつオススメとしてはフランネル生地のクロスです。
200円ぐらいで買えますが、ネルシャツで要らないものがあればそちらか、最悪コットン100%の要らないTシャツで大丈夫です!出来るだけ繊維の詰まったものを選んでください。
そんなに難しく考えず、全体を拭いてあげましょう〜!
油性クリーム系はクロスに少し水を含ませながら拭き取ってあげましょう!
全体に素敵なツヤが出てくるはずです。

鏡面磨き

ここからはメイクアップをしていきます。
ハイシャインなどいろいろな言われ方がありますね!
デイリーケアとしては必要ではないので、時間がある休日や挑戦したい時、商談靴や結婚式のドレスアップにいかがでしょうか。
ワックスは撥水効果をもたらせてくれたり、銀面を覆って守ってくれる効果もあります。
デメリットとして革の中にある汗などの水分を発散させる力を損なわせたり、厚化粧をすれば革に対してダメージが残る時も。電車の中で革靴の事だけは死守するなどの愛情も高まってしまうので注意が必要です。
また、コツの要る作業なので忍耐が必要です・・・でも光った時の感動と言ったら!
ここでハマる人は多いと思います!

①ベース作り
指かクロスで塗り広げます。
使うクロスはキメの細かいクロスを使ってあげてください。
クロスの場合は最初にクロスに少量の水を含め湿らせてからワックスをとって塗っていきましょう。
こうする事でクロスにワックスが染み込みにくくなりますし、滑りがよくなります。
履きジワの寄る屈曲部分には塗らないでください。ワックス部分の膜がヒビ割れてしまうのでご注意を。
塗り方のコツは下地を作るようにシッカリと塗りこみ、少しだけ(2〜3分)乾かすのがポイントです。乾燥させる事でワックスの中の水分が飛び、固くなるため光らせやすくなります。

②塗り伸ばし
ここからはクロスに少しワックスをつけながら、水を1滴ほど垂らして、毛穴のデコボコを埋めつつ大きく円を描くようにくるくると磨いていきます。力を入れてはいけません!優しくくるくる回すような感じです!引っ掛かりが出てくるかもしれませんが、そのタイミングでまた1滴垂らしましよまう。あくまで滑りをよくする目的なのでつけすぎないように!

ちなみに水ではなくアルコールでも代用できます。むしろ揮発性が高いので、水分が浸透するでもなく光らせやすいです。
商品として売っているポリッシュウォーター、もしくはウィスキーなどでも良いでしょう。糖分が多いものは控えて下さい。
また、買ってすぐのワックスは有機溶剤などが揮発していないため柔らかく、光らせにくいです。
ワックスは固いほど光らせやすいので、買ってすぐのワックスを日陰でホコリが入らないようにしつつ通気性の良い場所で1週間ほど放置してください。
パキパキに割れるぐらいがちょうどいいです。これをドライワックスと呼びます。

以上、拙い文章ですが、基本的なお手入れ+αのシューケア方法のご紹介でした。
皆様の靴と心が光り輝いてくれたら幸いです。
最後までご覧頂いてありがとうございました。