片手の上達法
はじめに
この記事はSpeedcubing Advent Calendar 2020 19日目の記事として書かれたものです。18日目の記事は望月さんの「ラノベで覚えよう目隠しキューブ。恋するイヤーマフ2 〜U面上の真紀那先輩〜」です。20日目の記事は荒木さんの「SCJ大会について」です。
こんにちは、KUbersのshoです。普段はOHと3×3を中心に4×4、5×5、メガなどもやっています。この記事では僕の得意競技であるOHの解説をします。OHは初めの頃は、うまく回せなかったり、LLの手順がわからなかったり敬遠されがちですが、ある程度回し方をマスターできれば3×3の知識だけもとても楽しめる競技です。また、持ち替えがしにくいという制約からF2LやOLLでEOを判断するメリットが大きかったり、両手に比べて回すのが遅く、右手が視界を遮らないことから先読みをしやすかったりなど、色々考えながらソルブをするのもOHの醍醐味の一つです。ぜひこれを機にOHを練習してみてください。
※この記事では全て左手基準で考えます。右手の人は適宜左右反転して考えてください。
片手の回し方
片手を始めた人がまず最初に習得すべきことは回し方です。特にR,R’は片手で回す上でとても重要で、意識的に練習しないとなかなか身につきません。まずはAntoine Cantinのこの動画を見てください。
[Antoine Cantin] Getting good at OH - Part 1: Turning
片手の回し方について詳しく説明されているので何度も見ながら練習するのがいいと思います。英語ですが字幕がかなり正確です。
初心者の人はRとR'にかなり苦戦するのではないかと思います。とくにR'は非常に回しづらいと感じるはずなのでこれまで使ってきた自己流の回し方の方が回しやすく感じる人もいるでしょう。しかしこの機会に「正しい回し方」(動画のように小指でF面から押す回し方)に変えることを勧めます。今は自己流の回し方の方がやりやすいかもしれませんが、上達すれば正しい回し方の方が速く回せるようになるはずです。Fazの講座でも言われてます。
動画でも述べられているように多くの場合R'がうまく回せないのは小指が短いからではありません。例えば片手アジア4位のLeo Borromeoのように手は小さくても、速いキューバーはいます。小指が届かないと感じる場合は持ち方が良くないのかもしれません。キューブを下の方から持ちながら、小指の付け根をFDエッジに近づけるイメージで回すといいと思います。なれれば楽に回せるようになります。また、指の長さがOHに関係ないということを言っているわけではなく、例えばJabari NuruddinのようなR2,U'2のダブルトリガーを多用するスタイルは指の長さが重要になってきそうです。
OHはRUgenを多用するので、普段の練習の隙などにRUgenそのもののトレーニングを軽くするのはオススメです。U,R,R'がなんとか回せるようになった人向けにRUgenの練習方法を紹介します。
1つ目はU-Permです。両手ではいろいろな手順が使われますが片手では
Ua : R U' R U R U R U' R' U' R2 / (U2) R2 U' R' U' R U R U R U' R
Ub : z U' R U' R' U' R' U' R U R U'2 / (U2) z U2 R U R U' R' U' R' U' R U'
を用います。UbはUaの左右逆になっています。このようにOHではzを使うことでお手軽に(?)LUgenをRUgenと同じように回せます。この方法はLLだけでなくF2Lでもよく使います。U-Permは片手のPLLにおいてラッキーケースなので爆速で回せるように何度も練習しましょう。OHの指使いは実はそれほど多くはなく、z持ち替えなどとRUgenの組み合わせが多いのでRUgenのU-Permがうまく回せれば他の手順も手に馴染みやすくなっていると思います。
2つ目はRUR'U'を使った練習です。RUR'U'は6回回すともとに戻るので6の倍数回行います。まず、指が限界を迎えるまで(RUR'U')×6nをやり続けます。限界を迎えたら少し指を休ませて再び限界を迎えるまで(RUR'U')×6nをやります。これを指が疲れてくるまで続けます。初めは6回も出来ないかもしれませんがその場合は出来るところまででOKです。毎日やればどんどん指の耐久値が上がってくるのを感じるはずです。
以上の練習は僕が個人的によくやっているもので、同じものを真似する必要はありませんが回しやすい手順を繰り返し回すのはオススメです。
クロス
クロスは両手と大きく変わるわけではありません。結局インスペクションでどれだけ読めるかは両手のタイムに依りそうです。僕自身クロスはあまり得意ではないのですが、インスペクション中に考えることや片手独特のことを簡単に書いてみます。
まず、クロスをD面に作ることにこだわりすぎない方が良いです。OHでは本質的に同じ手順であっても、持ち替えの有無やタイミング、指使い(例えばuとD'やFとy'Rの違いなど)で回しやすさが変わることが結構あります。どの面を回してクロスを完成させるかを読み切っても、実際の指使いや持つ向きなど考える余地がある場合があります。クロスをR面に作ったりrやuなどの2層回し、F'のミハエルトリガーなどを使って、持ち替えが少なく、F2L#1へのつながりが良さそうな回し方がないか考えましょう。U'DやM'などがうまく使える場合もあります。また、僕はCNですが、片手での恩恵は結構大きい気がしています。なにか新しいことを練習したい人はやってみてもいいかもしれません(投げやり)。
これは両手と一緒ですが、F2L#1のエッジのEOは気にしたほうがいいです。エッジが上段に来る場合uとD'(あるいはu'とD)を使い分けることで上段エッジのEOをコントロールできます。EOについてはuesyuuさんの「F2Lの持ち替えを減らすためには」という記事で詳しく書かれています。
F2L
OHのF2Lは両手とかなり勝手が違いますが、そこがOHの面白いところでもあります。
F2L①
片手のF2Lは基本的にRUgenでR側のスロットを、LUgenでL側のスロットを揃えます(当たり前?)。ここでいうLUgenはzしてRUgenという意味です。
RU'R'
例えばI型にIT化されたF2Lは、FRスロットやBRスロットに当然RU'R'、R'URでスロットインします。これと同様にFLスロットやBLスロットにはzU'RU、zUR'U'とスロットインします。このようにL側のF2Lはz持ち替えをしてRUgenで揃えます。クロスがL面にきて最初は混乱するかもしれませんが、L側のF2Lを不要な持ち替えをしてR側に持っていき処理するのは大きなタイムロスなのでやめましょう。OHで使うF2Lは大抵IT化してスロットインという普通の流れなので、パーツの位置をイメージしながら回せばLUgenでも自然にできるようになるはずです。結局大抵OHのF2Lはz持ち替えを使いながらRULgenで揃え、EO反転してるエッジは上段に出してyやy'持ち替えで解消していくという流れになります。
ここらへんの話はplusさんの「OHのコツ【F2L~LL編】」でとてもわかりやすく書かれてあります。F2L以外にもとても参考になることが書かれた記事なのでOHやる人なら読んだほうがいいです。
F2L②
Fやrを使う変態F2LはOHで回しにくいのが多く僕はあまり使いませんが、EOが変わるのを逆に利用出来る場合があります。
r'URU'R'U'r
たとえばこの手順は片手でも回しやすいです。このF2LではULとUBのEOが反転します。
そのことを踏まえてこのF2Lを見てください。U面にエッジが2つありEOが反転している状態です。yしてRULgenで揃えるのも悪くなさそうですが、ここでUすると
赤緑ペアに対してさきほどのF2Lが使えることが分かります。さらにEO反転している赤青エッジがULにあるのでr'URU'R'U'rを回すと
持ち替えることなくRUgenで揃えられる形になりました。
F2L③
一般にOLLはエッジの向きが正しいと嬉しいしドットだと悲しいものです。F2L#4のスロットインを工夫することで嬉しいOLLに出来る場合があります。
例えばこの場合rR'URU'r'(あるいはR'FRF')で十字OLLやドット回避ができます。ドットOLLはかなり面倒くさい手順が多いので色々工夫して回避できるといいですね。
Uは回しにくい
両手の場合UもU'も右手で回すか左手で回すかという違いだけでほぼ同じ速さで回すことが出来ます。しかし片手になると話は別で、左手の場合U'の方が回しやすいです。そのため両手で(時計回りに)U2が出てくる手順も片手で回す際はU'U'と回すことになります。しばしばソルブ中にUするところをU'と回してしまうことがあるかもしれません。両手ならすかさずU2とダブルトリガーするところですが、片手なら誘惑に逆らって(?)U'U'と回さなければいけません。また、同様にRとR'ならRの方が回しやすいです。UとU'の違いがソルブに生かされる場面はそう多くはありませんが意識することで片手に優しい手順を選択できるかもしれません。
上の画像で赤緑エッジを揃える場合
R R U' U' R U R' U R R (10 QTM)
R U' U' R' U' R U' R R U' R (11 QTM)
両手なら上の10 QTMの手順のほうが回しやすいです。しかし、片手の場合は下の手順のほうが1手多いですが、Uが2回少ない分僕は回しやすく感じます。
LL
OLL PLL
まずはOLL、PLLをそれぞれ多くとも2Lookで出来るように練習しましょう。両手手順を片手で回せるなら、ひとまずそれを使えばいいと思います。(例えばsub18程度に)速くなりたい場合は片手手順を覚える必要があります。僕の場合はまずOLL,PLLが1Lookで出来るように回せないものを覚え、一通り終えた後は気の向くままに両手手順から片手手順に移行していきました。片手の手順は両手と同じものや対称的な手順も多いので、実際新しく覚えるのはそこまで多くありません。回し方が独特だったりするので動画を見ながら覚えるのがいいです。
H-PermやN-Permなどの対称的なPLLは回す前にAUFを終わらせることが出来ます。特にN-Permは(僕の手順では)回した後に(白クロスなら)黄色面がB面に移動してしまいAUFが難しいので最初に済ませないときついです。両手と開始面が変わる場合があるので注意してください。
COLL
両手ではそこまで使われない(?)COLLですが、片手の場合結構有用なので覚える価値はあると思います。というのもU-Permは片手において最強のPLLなのでこれを引き出せる可能性が高く、PLLskipの可能性も秘めているのは大きなアドバンテージです。同様にOLLCPや、RUgenである2GLLも覚える価値がありそうですが、僕は覚えては忘れてを繰り返しています...
使用するキューブについて
片手では両手と違ってグリップして回すことが全く無く、人差し指や小指を使ってトリガーや弾くような動作でキューブを回転させます。そのような動作が基本なので、軽すぎるキューブは片手には向きません。かといって重いキューブは小指で回しづらく、結局片手用のキューブには軽すぎず重すぎない絶妙な(?)幅の回し心地に収まる必要があります。僕はDMM-37では1滴で大きく回し心地が変化してしまう(軽くなりすぎてしまう)ことが多いためSilkを使って軽さを調整しています。最近は潤滑剤の種類がたくさんありますし、キューブを良い状態にキープ出来るようにいろいろ試してみるのがいいと思います。特に片手を始めたての人は、キューブが軽すぎて扱いきれていないということがあるかもしれません。片手用に少し硬めのキューブを用意している人もいるようです。
僕は通常のサイズのキューブを使っていますが、どうしても手に馴染まなかったり、大きすぎると感じる場合は小さめのキューブを使うのも一つの手です。例えばアジア2位のTee Kai YangはMini Valk3 Mを使っているようです。
参考サイト
片手を練習する上で参考になりそうなサイトとなるかもしれないサイトを紹介します。
Antoine Cantin(YouTube)
2LookOLLやPLLの動画があります。回し方の解説だけでなく速く回しているシーンもあるので上級者が実際にどのくらいのスピードで回しているかが分かります。ホームページもあります。
Rubik's Cube: How To Solve One Handed (OH)(YouTube)
J Permの動画です。OHを始めるときに見るといいと思います。
cubesolves
上級者の解法がたくさん載っています。色々発見があるはずです。
Speed Cube DB
cubesolvesと同じようなサイトみたいです(最近知った)。先週のFazのCRもあります。
cubeskills
Feliks Zemdegsが運営しているサイトです。たくさん動画があるので順に見ていくといいと思います。この記事見るよりこの動画見たほうがいいです。COLLの手順も載っています。
LaZer0MonKey
動画でトップキューバーのソルブを解説しています。
Best site ever
OLL,PLL,ZBLL trainerがあります。覚えたOLLの反復練習、PLLの判断やAUFの練習などがケースを指定して出来ます。
CubeRoot
片手手順も含めていろいろな手順が載っています。
All my OH OLLCPs(YouTube)
CLLCPが10個くらい紹介されています。僕はこの動画を見ていくつか覚えました。良い手順なのかはわかりません。
Robert's OLLCP
OLLCPが載っています。
Antoine Piau's OLLCP
2 edges orientedのOLLCPが載っています。
Juju ZBLL
フランスの女性キューバーJuliette SébastienによるZBLLアルゴリズムです。両手、片手どちらもあります。物好きな方はどうぞ。
終わりに
以上で僕の記事は終わりです。この記事は片手のタイムが25秒程度だった頃からao100sub14を達成するまでの経験をもとに「せっかく自分の中で得意な競技が出来たから技術的なことを書いてみたい!」というモチベーションから書かれています。トップOHerが書いているわけではありませんが、なにか参考になる部分があったりOHを練習するきっかけになれば嬉しいです。ここまで読んでくれてありがとうございました。