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「なな星くんとふた星ちゃんの願い星」後編


なな星くんとふた星ちゃんの願い星(後編)
作さよちゃん、絵Joo

地上では、強い日差しがやっと緩む日が、少しずつ出てきました。空では天の川が、なな星くんとふた星ちゃんを乗せた雲をゆったり運んでいます。ふたりとも気持ちよさそうに寝ていて、まだ目を覚ましません。

すると天の川は、支流を地上に向けて伸ばし始めました。ゆっくりスルスルと、支流はてんとう虫たちを乗せて降りていきます。

地上の虫たちは様変わりしていました。日暮れにはヒグラシが鳴き、そのうち夜には、コオロギが鳴き始めるようになりました。いつまでも続くように思われた夏も、ちゃんと終わりが来ていました。そんな中に、なな星くんとふた星ちゃんは戻ってきたのでした。

天の川の支流は、2人をそっと地面に降ろすと、空へ帰っていきました。天の川の上とは違う空気に、ふたりは目を覚ましました。
「あれ?僕たちキラキラの雲に乗って、空の上で寝てたと思ったけど。あれ、夢だったのかなぁ。。。ふた星ちゃん、起きてる?」
「うん。不思議な夢だったねー。でも、涼しくて気持ちよかったね。」
「そうだね。。。でも、ホントに夢だったのかなぁ? お願い事をしたまでは覚えてるんだけど」
「それよりなな星くん、お腹空いた!アブラムシを探しに行こう。」
「そうだね!行こう。」
ふたりは元気に飛び立っていきました。

なな星くんもふた星ちゃんも、ひと夏を天の川で過ごしたことを覚えてませんでしたが、おかげで、元気に秋を過ごしました。
赤とんぼが、ねこじゃらしの原っぱを、ツイッ ツイッと飛んでいます。
ふた星ちゃんが思い出したように、
「あ、なな星くん。なな星くんはお星さまに何をお願いしたの?」
「ナイショ。ふた星ちゃんは?」
「じゃ、ナイショ。」

それから、ねこじゃらしの穂先にぶら下がって、ゆらゆら揺れて遊びました。
「あーそうだ。なな星くん、お星さまに何をお願いしたの?」
「ナイショ。ふた星ちゃんは?」
「ふふふ。ナイショ。」

それから、赤く色づいたコキアの畑で、かくれんぼをして遊びました。
「ところでなな星くん、何をお願いしたの?」
「ナイショ。ふた星ちゃんは?」
「んー、ナイショ。」

短い秋を楽しんで、それからふたりは、冬に備えて寝床を作りました。ふた星ちゃんは、そこに、たくさんのタマゴを産みつけました。それからふたりは、葉っぱの下で寄り添いました。
「ねぇ、なな星くん。お星さまへのお願いは、なんて書いたの?」
なな星くんは、今度はちゃんと答えました。
「ふた星ちゃんとずーっといっしょにいられますように。僕は、ふた星ちゃんを守りたいんだ。ふた星ちゃんは?」
「私は、希望の星をたくさん残したい。」
「じゃあ、僕たちの願いは叶ったね!」
「そうね、これからもずっといっしょね。そしてこのタマゴたちも、春になればたくさんの星になる。」
ふたりは顔を見合わせて笑いました。そして、静かに目を閉じました。

ほとっ。
雪がひとひら、2人の上に落ちました。

ほとっ。
ほとっ。

ほと、ほと、ほと、ほと、ほと、、、。



春。
(カサッ。
カサコソ。
カサコソ、カサコソ、、、。)



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