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【ストーリー論】ウマ娘のアニメ、ものすごく良くできてない?って話【第2期編①】

SHO+XENONです。

第1期バックナンバー:

 一通り第1期について書いてきたので、勢いで第2期もやっちゃいましょう。

Season2に対する個人的な見解

 いわゆる第2期の主人公は、第1期でも主人公にかなり近い立ち位置にいたトウカイテイオーが昇格する形となり、同時に準主人公、あるいはダブル主人公としてメジロマックイーンが昇格する形で就いています。前回の主人公だったスペシャルウィークは第1期のトウカイテイオーやメジロマックイーンのポジションとなり、サイレンススズカは渡米しているということで出番がかなり抑えめになっています。

 第2期が第1期と決定的に違うところは、主人公のタイプと、それに基づく物語の展開です。第1期主人公のスペシャルウィークは、類稀なる才能を持ってはいましたが、【努力型】【成長型】の主人公として描かれている一方、トウカイテイオーは最初から抜群の才能を開花させている【天才型】の主人公です。
 前期においてはサイレンススズカが同じく【天才型】でしたが、【努力型】の主人公であるスペシャルウィークと良い意味で対照的であるが故に、憧れの対象からライバルへと関係性が変化していっていました。しかし今回は相方とメジロマックイーンも同じ【天才型】です。そのため、天才型同士の関係性がどのようになっていくのかは注目です。
※注:天才型は努力も成長もしないという意味ではありません。

 史実においては第1期より前の時間軸に第2期が来ていることになりますが、アニメ「ウマ娘」の世界においては第1期と第2期は連続した時間軸となっており、そのまま継続して続いていると思われます。そのためにやや時間軸的にちぐはぐになっている部分もありますが、その部分については追々触れていきましょう。

アニメ見ましょう

Blu-rayも買っちゃいましょう

Ep.1-1:あの日

 その日、日本ダービーが行われている東京レース場では、皇帝・シンボリルドルフが、またも勝利の数を増やそうとしていました。

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 並ぶことなく他のウマ娘達を抜き去り、圧倒的な強さでゴールを駆け抜けたその皇帝の姿を、瞳を輝かせながら見つめる少女の姿がありました。

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 完全無欠なる6連勝、無敗での2冠。その姿に、少女は羨望と憧憬を抱いていました。

 勝利を祝う記者会見で、少女は居ても立ってもいられず、報道陣をかき分けてシンボリルドルフの元へとやってきます。

ボクは、シンボリルドルフさんみたいな、強くて格好良いウマ娘になります!

 マルゼンスキーに「才能と努力と運が完璧に揃わないと難しい」と嗜められますが、シンボリルドルフには「トレセン学園への入学」を勧められます。

「キミの名前を聞いても良いかい?」

トウカイテイオーです!」

「よし、覚えておこう」

 この時、シンボリルドルフとトウカイテイオーの絆は生まれました。そして、ここからトウカイテイオーの壮大な物語は始まりました。この時はまだ誰も知りませんでした。この少女が後に、全てのファンを魅了する物語の主人公になることを。

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Ep.1-2 そして時は経ち

 テレビでは天皇賞春に勝ったメジロマックイーンのこと、また無敗の5連勝中のトウカイテイオーがダービーに出走することなどが報じられていました。スイッチを消すと、トウカイテイオーはルームメイトのマヤノトップガンに「先に行くねー!」と告げ、寮の自室を後にしました。

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 途中で寄った「Funny Honey」にて「硬め・濃いめ・多め」のはちみつドリンクを買っていると、周りには次々とファンが集まってきます。あどけない中学生くらいの少女らしさと、早くも人気者であることが伺えます。

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 ところでこのはちみつドリンク、結構高いですけど、しょっちゅう買って飲める程度には、お小遣いが貰えているってことでしょうかね? 筆者の1回の食事は1,000円いかないことの方が多いので、ちょっと考えさせられます(笑)。

 トレセン学園に次々と登校してくる生徒たち。まずはメジロマックイーン。メジロ家のご令嬢らしく優雅に歩いて登校です。

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 続いてスペシャルウィークは、前期でも見た、人参を咥えて走ってくるスタイルで登校してきました。

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 相変わらず息ピッタリすぎて気に入らない者同士のウオッカダイワスカーレットは、競い合うように走ってきました。

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 ゴールドシップは…………なんでセグウェイに乗ってるんだ???

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 そしてトウカイテイオーが校門をくぐると、その先でスピカの面々が待っていました。

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 今日はオープンキャンパス。チーム・スピカが案内係といういことになっていました。くじ運悪いトレーナーがハズレくじを引いてしまったため……らしく、メジロマックイーンとゴールドシップに締められていました。この二人の息の合い方、キン肉マンでしょうか?

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 皆思い思いの形でオープンキャンパスの案内を努めます。看板を立てるダイワスカーレット、パンフレットを配るスペシャルウィーク、レース場を案内するウオッカ、授業中の教室を案内するゴールドシップ。お腹を鳴らすオグリキャップ…………おっとオグリキャップは案内係ではなく平常運転でした。

 新たにやってきた少女ウマ娘二人。そこにトウカイテイオーとメジロマックイーンが案内に現れました。あちこち見て回り、「他に見て回りたい所ある?」とトウカイテイオーに聞かれると、それには答えず片方の少女が満面の笑顔を作ります。

私、トウカイテイオーさんの、大・大・大ファンなんです!

 目を輝かせながら皐月賞が如何にカッコ良かったかを語り、ダービーに勝つよう応援の声をかけます。
 すると続いてもう片方の少女が、メジロマックイーンの大ファンであること、天皇賞が素晴らしかったこと、自分もメジロマックイーンのようになりたいことなどを語りだします。
 この情景に過去の自分を重ねたトウカイテイオーは、その時のシンボリルドルフがそうしたように、トレセン学園に入ってくることを促し、名前を訊ねました。

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キタサンブラックです!」
サトノダイヤモンドです!」

 まさかの、後の超名馬たち!!
 この二人に対してトウカイテイオーが言った言葉も、あの時と同じでした。

「よし、覚えておこう!」

 その夜、生徒会長・シンボリルドルフが帰路に就こうとしていると、校門の傍でトウカイテイオーが待っていました。
 トウカイテイオーがオープンキャンパスの感想を「子どもたちが可愛かった」と述べると、シンボリルドルフは「懐かしい」と答えます。

「(冒頭の)その時のテイオーは、今日の子どもたちと同じくらいの年ではなかったかな?」

 トウカイテイオーも気付けば当時のシンボリルドルフと同じ立場になっているのでした。「ダービーは勝てそうか?」と訊ねられたトウカイテイオーは、「勝てそうじゃなくて、勝つんだよ! だって約束したからね! シンボリルドルフさんみたいな、強くて格好良いウマ娘になります!」
 シンボリルドルフは一言で答えます。「ああ、期待している。」

 本来、現実世界におけるシンボリルドルフとトウカイテイオーは、実の親子です。ここでもまるで親と子との会話のように進んでいきますが、現実での関係も踏まえた上での表現なのでしょう。

Ep.1-3 ダービーに向けて

「テイオー!先頭まで上がれー!」
 トレーナーの声が響きます。練習場で走るトウカイテイオーは、最後尾から先頭まで上がっていきます。しかし、先頭にいたメジロマックイーンがスパート。トウカイテイオーに先頭を譲ろうとせず加速していきます。トウカイテイオーも負けじとスパートをかけ、二人は残りのメンバーをどんどん置いて行ってしまいます。二人は並走したまま、何処までも何処までも走り続けます。ここから、トウカイテイオーとメジロマックイーンはお互いを意識し合う、それも実力の伯仲したライバル関係であることが伺えます。

 食堂にて、大きな丼で人参丼?を頬張るトウカイテイオー。

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 それを向かいの席で眺めて呆気にとられているのは、同期であるナイスネイチャ(後ろにはもっとヤバいのがいますが)。

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「食べないの? だったらボクが!」とナイスネイチャのおかず(ハンバーグ?)を持っていってしまうトウカイテイオー。これ、相手がオグリキャップやスペシャルウィークじゃなくて良かったなぁ?

 ナイスネイチャは怪我をしてしまった右足を気にしながら、自分には縁遠い世界で頑張るトウカイテイオーのことを褒めます。褒めながら視聴者にわかりやすく、ダービーの凄さと、その中でも優勝を狙っていけるだけの実力を持つトウカイテイオーの強さを、端的に説明してくれています。

 そこにけたたましい声をあげながらやってきたのはツインターボ。ナイスネイチャと同じチーム・カノープスに入ったとのこと。

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 ツインターボは現れるなりトウカイテイオーに「ダービーで勝つ!」と宣戦布告。しかしナイスネイチャに「あんた出られないじゃん」と嗜められます。どうやらツインターボやナイスネイチャはコメディリリーフ的な役割のようですね(本当にそうかな?)。

 トウカイテイオーは、朝練、授業、トレーニングに励み、皆が談笑に耽っている時も、皆が帰った後も、鍛錬に勤しんでいました。トウカイテイオーは溢れんばかりの才能を持っていると同時に、他の追随を許さない努力家でもありました

 そして細やかなお洒落も忘れません。レース前には美容院に行って髪を整えて貰います。

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ん…………「調子に乗んな」?
 髪を整えているだけなのに、美容師からも、隣の客からも声をかけられるばかりか、外には人だかりが。凄まじい人気です。アイドルか何かかな?

 勝利の祈願に神社に寄ると、そこにはジャージ姿のメジロマックイーンが。

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 メジロマックイーンも、次の宝塚記念に向けて自主トレしていました。彼女もまた天才であり努力家のようで、その点もトウカイテイオーとよく似ています。

「明日ですわね、ダービー。緊張していますの?」
「えへへ、ちょっとだけね。小さい頃から目標にしていた、夢の舞台だもん」

 トウカイテイオーの無敗の三冠の夢のためには負けられない大舞台です。しかし、どうやら理由はそれだけではないようです。

「ライバルが勝ったのにボクが負けちゃったら超かっこ悪いでしょ? だから、絶対に勝つんだ!」

 トウカイテイオーはメジロマックイーンをすでにライバルとして意識していたのです。メジロマックイーンの方は「ライバル……」とその言葉を確認するように呟いていました。

 蹄鉄も打ち直しました。自室に貼ってあるシンボリルドルフのポスターと、手書きで「めざせ!!無敗の三冠ウマ娘!!」と書いた貼り紙を見て、トウカイテイオーは気持ちを奮い立たせました。

Ep.1-4 二冠

 日本ダービーが行われる東京レース場は、入場規制が敷かれるほど多くの人が押し寄せていました。またこの様子は全世界に生配信されており、アメリカにいるサイレンススズカも画面をじっと見つめていました。

 8枠大外、これまで誰も勝ったことがないところにトウカイテイオーは入りました。しかしトウカイテイオーは何一つ気にしている様子はありません。余裕のテイオーステップを見せつけてパドックに登場し、見に来てくれたキタサンブラックの応援に笑顔で返すほど。

 長い廊下を走ってくると、チーム・スピカのメンバーが勢揃いで待っていました。

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「調子良さそうだな」
「楽しみなんだぁ、ライブが」
「もう勝った気でいるよ」

 そんな会話の後、メジロマックイーンが声をかけました。

「応援してますわ、ライバルとして

 神社で言われたライバル宣言を、ここで返したのです。
 トウカイテイオーはそれに笑顔で頷き、ターフに向かっていきました。

 2番人気のリオナタール(架空のウマ娘、モデルは恐らくレオダーバン、マルゼンスキーの子)、3番人気のシダーブレイド(架空のウマ娘、モデルは恐らくシャコーグレイドミスターシービーの子)と、かつて一斉を風靡したウマ娘達が期待を寄せるライバル達がひしめく中、無敗の二冠がかかったトウカイテイオー(史実ではシンボリルドルフの子)も現れます。

 チーム・リギルのメンバーも総出で応援にかけつけてきていました。トウカイテイオーは今やライバルチームのエースとされているようです。如何にトウカイテイオーの才能が抜きん出ているかを象徴していますね。

 いよいよファンファーレが鳴り、スタート!トウカイテイオーの才能、努力、そして運が試されます。日本ダービーは「最も運のあるウマ娘が勝つ」のですから。
 だいぶ外を走らされていることに不安気な様子のメジロマックイーン。しかしスペシャルウィークは「大丈夫」と断言します。外側は埋もれないし芝が綺麗なので、最後の直線まで行ければそこから一気に抜けられると言うのです。
 そして第4コーナーを曲がって直線。トウカイテイオーの眼前には広い緑の空間が広がっていました。スペシャルウィークが言った通りに(実はスペシャルウィーク自身がこれを一度経験しています)。

「トウカイテイオー、行っちゃうよぉっ!!」

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 余裕綽々の笑顔を浮かべ、トウカイテイオーがついにスパートをかけます。「こうなったらもう無重力状態だな」とシンボリルドルフをして言わしめる飛ぶような走りで、圧倒的なスピードで、後続を寄せ付けることなく1着でゴールを切りました。シンボリルドルフ以来の無敗での二冠達成です。

 そして会場をテイオーコールが包み込みました。そこでたかだかと掲げた手は「2」、あの時のシンボリルドルフと同じ「二冠達成」を意味するポーズでした。

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「"帝王"は"皇帝"を超えたかもしれない」
「天才はいるなぁ、悔しいけど」

 おめでとうとハナがトレーナーに声をかけようとしますが、それを制しました。
「おめでとうは菊花賞にとっておいて。あいつはまだ、目標を達成していないから」

 そしてダービー後のウイニングライブ。それを眺めていた笑顔の観客たちの中で、たった二人、トレーナーとシンボリルドルフだけが、顔を曇らせました。トウカイテイオーの左足がおかしい……。そのことに気付いたのはたった二人だけでした。まさにこれからだという時に、無敗の三冠に王手をかけたという時に、トウカイテイオーに試練が襲いかかる……!!といったところで今回はここまで。

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Ep.1総評

 「天才の物語が今まさに始まる」、そんな雰囲気の第1話でしたが、その最後に早くもこの物語が波乱のものになることを物語る不穏な気配が漂ってきました。第1期とは違うんだということをビンビン感じさせられますね。第1話にして早くもエンディングが特殊なのもそれに輪をかけています。OP曲がまだ一度も流れていないですし…!
 史実においてこの後何があるかは、知る人は知っているし、Wikipediaでいくらでも調べられます。そしてそれを知っているからこそ、この不穏な空気がどれほど重いものかが嫌でも叩きつけられるのです。第1期のように運命の打破が用意されているのか、それとも現実は非情にトウカイテイオーを叩きのめすのか。視聴者サイドも相当の覚悟を要求される物語です。
 第1期よりも、「次を見るのが怖い」気持ちが強くなっている感じがしますね。では、次回をお楽しみに。

時空の歪みとその解決

 さて、第1期から第2期を視聴するにあたり、半ば仕方がないとはいえ、どうしても時空の歪みが発生してしまっていることに注意しなければなりません。史実においては1期と2期の時間軸が逆であることにより、どうしてもある程度は避けられないのです。

 今回着目したいのは、トウカイテイオーはシンボリルドルフ以来の無敗の二冠を達成したということ。この話が1期から時間的に自然に繋がっているとすると、1期の時点ではすでにナリタブライアンが三冠を達成しており、この時間軸においてもナリタブライアンは三冠ウマ娘の一人であるはずです。つまり、この時点でトウカイテイオーがシンボリルドルフ以来初めての三冠に王手という表現だったら、時空の歪みによりナリタブライアンの実績が抹消されてしまうところでした
 ところが、史実の通りであるなら、ナリタブライアンは三冠を達成した時無敗ではありませんでした。ですので、もしナリタブライアンの三冠の後でトウカイテイオーの無敗の二冠が達成されていたとしても、表現上は間違っていないのです。ここが「上手くかわしてみせた」ところですね。

 ちなみに無敗の三冠を達成したのは、史実においてはシンボリルドルフ以降はディープインパクトとその子コントレイル、そして無敗牝馬三冠のデアリングタクトのみで、いずれも2005年以降、つまりトウカイテイオーから14年、ナリタブライアンからでさえ11年も経ってからのことです。

エモいポイント

 今回の最後、トウカイテイオーの左足の異常に気付いたのは、トレーナーとシンボリルドルフだけでした。この二人がどれだけトウカイテイオーを気にかけ、ずっと見てきているかを1秒もかけずに描き出していると思うのです。これってエモくない?

 でももしかしたら、メジロマックイーンも気付けたかも知れませんね。今回はそれが描かれなかったか、たまたま気付けなかったというだけで。


 それでは次回またお会いしましょう。SHO+XENONでした。


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