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【ストーリー論】ウマ娘のアニメ、ものすごく良くできてない?って話【第1期編⑨】

SHO+XENONです。

 前回、アスリートとしての……というか、ウマ娘としての本分や初心を忘れグラスワンダーに敗北を喫したスペシャルウィークですが、そのために精神的な成長のチャンスを得られました。一方、サイレンススズカにも、もう一皮剥けないといけない、そんな成長の余地があるようです。さあ、二人の覚醒・復活が期待しつつ、物語を追っていきましょう。

前回:

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第9R①冒頭

 スペシャルウィークに、フランスのエルコンドルパサーから電話が来ます。グラスワンダーに負けて凹んでいるかもと心配してくれたのですが、元気そうな声を聞いてエルコンドルパサーも一安心。エルコンドルパサーもフランスで、凱旋門賞に向けて元気にやっているようです。そんなエルコンドルパサーが思わぬ伝言を頼みます。

「私は凱旋門賞に必ず勝ちマース!
 だから、そんな強い私に勝ったスズカさんに、『また勝てる』って伝えておいてクダサーイ!

 それを聞いて複雑な表情のスペシャルウィーク。「私にできることって、もうないのかな……」と葛藤し始めます。
 スペシャルウィーク……、お前まだ分かってないのか。

第9R②夏合宿

 OPの後は病院の前。トレーナーが物思いに更けながら誰かを待っています。「(スペシャルウィークに)スズカのことを考えるなって言っても、無理だよなぁ」「俺のチームはバラバラだなぁ」と、イマイチ未来図が描けないでいるようです。そんな時、サイレンススズカが病院から出てきました。それをトレーナーが呼び止めます。

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 川沿いの堤防上を二人歩きながら話をします。もう足の怪我は大丈夫なよう。合宿に間に合って良かったと喜ぶトレーナーでしたが、サイレンススズカは浮かない様子。

「私、迷惑じゃないでしょうか」

 今の自分のペースに合わせるせいでスペシャルウィークが、またトレーナーが自分達のペースを乱してしまっているのではないかと思い悩んでいることをこぼします。トレーナーは気にするなと一蹴しますが、思う所もあったようで、複雑な表情を浮かべました。

 いよいよ夏合宿。チーム・スピカのメンバーはトレーナーの車で移動しています。助手席で大人しくするサイレンススズカ。海が見えて大はしゃぎのトウカイテイオーと自分にも見せろと不満顔のダイワスカーレット、それを子供かと嗜めるウオッカ。潮風は肌に悪いから嫌いだと不満そうなメジロマックイーンと、それをルービックキューブをしながら「そだなー」とテキトーに流すゴールドシップ、そして、上の空のスペシャルウィーク

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 着いてみるとそこは豪華なホテル! これにはウオッカもゴールドシップもテンションが上がります。その時そこにチーム・リギルの面々もいることに気付きました。続々とホテルに入っていきます。会長も一緒と喜ぶトウカイテイオーと、間近で走りを見られることを喜ぶメジロマックイーン。しかし、「何処へ行く?俺達はあっちだ」とトレーナーが指差す方には、

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何故ホテルのすぐ横にこんなのがあるのか分からない、オンボロな民宿?のような建物でした。一同テンションだだ下がり。

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 入ってみるとスピカの7人はさらに2つのチームに分かれることになっていました。Aチームにスペシャルウィーク、ウオッカ、トウカイテイオー、メジロマックイーンの4名、Bチームにはサイレンススズカ、ゴールドシップ、ダイワスカーレットの3名。これを見て「スズカさんとは別チーム……」と残念そうなスペシャルウィーク。おい、まだ分かってないのか。
 さらに追加で告げられたテーマが「馴れ合い禁止」。互いのチームを競争相手だとして、最終日の勝負に勝てるよう心がけるよう告げました。今回のトレーナーの狙いがちょっと分かってきましたね。
 ところで、第2期アニメも踏まえると、Aチームにトウカイテイオーとメジロマックイーンを一緒にしてしまうと馴れ合いかねないので、トウカイテイオーはBチームにしたほうが良かったのでは? と思いました。

 早速柔軟体操をするAチーム
「馴れ合い禁止ってどういうこと? ボク達馴れ合ってたっけ?」
 怪訝な表情のトウカイテイオー。
「少なくともオレと(ダイワ)スカーレットは馴れ合ってないぜ。でも……」
とウオッカは、メジロマックイーンを見やります。どうやらウオッカは、メジロマックイーンとゴールドシップは馴れ合っていると感じている様子。

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 メジロマックイーンは不満そうですが、トウカイテイオーは頷きます。

「私はスズカさんと馴れ合ってるってことなのかな……」

 スペシャルウィークが伏し目がちに呟きます。「まあそうでしょうね」とメジロマックイーンに肯定されると、「でもそれって、そんなに悪いことなのかな……」と納得いかない様子。そこにトウカイテイオーが歩み寄ります。

「スペちゃん。スズカのことが気になるのは分かるけど、今は集中しないと!」

「そうですわ。ゴールドシップもいませんし、皆で楽しく走りましょ」
 トウカイテイオーの言葉を受けて、メジロマックイーンが立ち上がり走り出します。「だな」とウオッカも続いたところで、「ほらぁ、スペちゃんの行こ!」とトウカイテイオーがスペシャルウィークの手を取って走り出します。こういうところ、Aチームの面々は真面目ですね。

 一方Bチームは、すでにやや温度差が生まれつつありました。全力で走るゴールドシップとダイワスカーレット、そこから少し距離を置いて一人でトレーニングをするサイレンススズカ。「脚、治ってるんだよな?」とゴールドシップは心配そうですが、ダイワスカーレットは「私達の邪魔をしたくないって……」と聞いていたようで、ゴールドシップもその真意が測りかねているようです。
「なあ、やっぱ一緒に走ろうぜ! 一人だとつまんないだろ?」
 ゴールドシップはサイレンススズカを誘いますが、サイレンススズカの表情が曇ります。

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「やっぱり脚がまだ……?」
 ダイワスカーレットが心配そうに訊くと、そうではないと首を振るサイレンススズカ。しかし、しばらく一人にしておいて欲しいようです。今までとは全く違うサイレンススズカのその態度に、二人は困惑の表情を浮かべます。トレーナーもそれを見て難しい表情を浮かべていました。
 夜、皆が寝静まった後も、サイレンススズカは一人寂しそうに外を眺めていました。

 一方リギルの方では、エルコンドルパサーとシンボリルドルフ、ハナの3名がビデオ通話をしていました。エルコンドルパサーはフランスで、世界最強ウマ娘とされるブロワイエに会ったことを話します。その際、持っていたフランス語入門の本にサインを貰っていました。

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 ファンだと思われていた、つまり自分はマークされていないと解釈したエルコンドルパサーは、奇襲でブロワイエを倒せるのではと言いますが、「サインをよく見せてくれないか?」と、会長は何かに気付いたようです。果たして会長の意図とは?

  場面はスピカAチームのトレーニングに移ります。ウオッカを追い抜くメジロマックイーン、それをさらに追い抜くトウカイテイオー、さらに追い抜いてやろうと、あるいは抜かせまいとどんどん加速する3人に対し、スペシャルウィークは明らかに集中力を欠いていました。

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「スズカさんのことを気にしないようにって、考えれば考えるほど気になっちゃう……!」
 それを見たトレーナーは現状を良くないと思っているようです。そこにサイレンススズカが現れました。サイレンススズカはトレーナーに悩みを打ち明けます。

「全力で走れない」

 イップス、精神的な原因によりこれまでのように身体が動かせなくなる現象に見舞われていたのです。怪我への恐怖が、サイレンススズカに精神的なブレーキをかけるようになっていました。

「怪我が治ってもレースで走れるようになれるかは分からない、それってこういうことだったんですね……」

 トレーナーはこの言葉を聞いて、イチかバチかの強硬策を取ることを決意します。

 その夜、Aチームはインディアンポーカーに興じていましたが、スペシャルウィークは完全に思考回路が回っていない状態でした。まあ、それが結果的に面白いことになるのですが……(笑)。

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ウマ娘もインディアンポーカーやるんですね(笑)。

 Bチームは走り込みトレーニングをやっていました。

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 あのサイレンススズカが、いくら一線級の強いウマ娘二人相手とは言え、明らかに遅れを取っています。これまでのサイレンススズカなら絶対にあり得なかったことです。サイレンススズカ、このままで大丈夫でしょうか……。

 いよいよ合宿最終日。水着を着て海岸に集合する7名のチームメンバー。いよいよ勝負の時が来ました。「ビーチフラッグ!?」と沸き立ちますが、「そんな可愛いもんじゃない」と即座に否定するトレーナー。

「今からするのは、トライアスロンだ!」

 トライアスロンとは、水泳・自転車・マラソンの3つを順番に行う、とてつもない運動能力とスタミナを要求される「最も」と言っても過言ではないほどキツイ競技です。そう聞いてメンバーは、

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タノシカッタネー合宿

 すかさずトレーナー、「勝利チームにはホテルのスイーツ食べ放題券をやる!!!」と叫びます。すると、

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 スイーツに目がない女の子達、我先にと海に飛び込んでいきます。お年頃の女子だからというだけでなく、そもそも馬は甘いものがめちゃめちゃ好きらしいですね。角砂糖を舐めたりするようですし、ニンジンを好むのも甘いからだそうで。
 泳いでいく背中を見つめながら、トレーナーは「お前の復活を皆が待ってるぞ、スズカ」と心の中で呟きます。

第9R③覚醒のトライアスロン

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 ウマ娘達は泳ぐのも上手なようです。顔を水につけないクロールで、ものすごい勢いで泳いでいきます。筆者は泳ぐのが好きですが、こんなことをしたら25m泳いだところで溺れます。
 負けるものかとどんどん加速する5人。しかし、サイレンススズカとスペシャルウィークが遅れます。泳ぐのが苦手だからとか、そういうことではなさそう。

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 さて、シーンは自転車に移ります。

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 持ち前の競争意識に「スイーツ食べ放題の誘惑」が加わると、彼女達のスタミナは無尽蔵になるのでしょうか。疲れた様子もなく登り坂をも凄まじい勢いで走り抜けていきます。しかしサイレンススズカとスペシャルウィークはどんどん離されていきます。

 自転車を降り、前の5人はどんどん先に走っていきます。スイーツを賭けた真剣勝負に勝つために……! しかし、サイレンススズカとスペシャルウィークはまだ現れません。

 やっとスペシャルウィークがチェックポイントに到着し自転車を降りました。サイレンススズカも到着しますが、うっかり転んでしまい自転車を倒してしまいます。それを見てスペシャルウィークがサイレンススズカに駆け寄ります。

「スペ、お前何しようとしている?」

 トレーナーがスペシャルウィークを制止します。

お前はレース中に立ち止まるのか!?

 この言葉にスペシャルウィークはハッとします。

スズカ、お前の本気はこんなもんか!? あの時の約束は何だったんだ!?

 サイレンススズカの目が、失っていた輝きを取り戻し始めました。

俺はお前たちがレースに出て、先頭争いをしているところが見たい!
 それが今の俺の夢なんだ!!

 二人の中の忘れられていたものが、覚醒していきます。

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「お前たちはお互いのためになりたいんだろ?
 だったらライバルだと思って全力で高め合え!

 スペ、お前スズカにレースに出てほしいんだろ?
 だったらお前は本気で走れ! お前が背中を見せる番なんだ!

 スズカ、レースに出たいならいつまでも怖がってちゃダメだ!
 背中を追いかけることを怖がるな!」

 トレーナーの心からの叫びが、二人の心の目を、こじ開けました。

「スズカさん……先に行きます!

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 葛藤を乗り越え、涙を鼻水を流しながら、スペシャルウィークはついにサイレンススズカを置いて背中を見せ始めました。一方サイレンススズカも立ち上がり、その後を追いかけました。お互いにライバルであるために、お互いのためになるように……。もう二人に迷いはありませんでした。

 本気になった二人は、みるみる前を行く5人に追いついていきます。そしてとうとう、サイレンススズカが「あの走り」を見せつけます。そして先頭に立ち、「あの感覚」を思い出します。目の前の景色を独占できる、先頭を走る喜びの感覚を…!

 ところが、あまりに調子良く走りすぎてしまい、下り坂のカーブを前に止まれなくなってしまいます。

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 そのまま茂みを突切り、砂浜を走り抜け、そして、

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 犬神家×7

 これにはさすがにトレーナーも大笑いしてしまいます。つられてサイレンススズカも笑い出します。今までも笑顔のサイレンススズカは何度か見てきましたが、こんなにも大笑いするサイレンススズカを見たことがあったでしょうか?

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 そして、さらにそれにつられて皆で大笑いします。スペシャルウィークは、嬉しさもあるのでしょう、涙を流しながら、腹の底から。

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 両チーム棄権となった最終日の勝負ですが、両チーム共にご褒美が出ました。今まで以上に絆を深めたチーム・スピカを見て、トレーナーは新しい夢を語りだします。

「俺はお前達全員が参加するレースが見たい!
 今日みたいな、わくわくするようなレースだ!」

 チーム・スピカが、チーム・スピカとして新しい目標を得た瞬間でした。

第9R・凱旋門賞

 ついにエルコンドルパサーが凱旋門賞に出走します。それをリギル・スピカのメンバー達は画面越しに見つめます。期待をこめた眼差しの中、シンボリルドルフだけが厳しい表情を浮かべます。

「ブロワイエのサイン、何て書いてあったと思う?
 ”私はコンドルより疾く飛べる”だ」

 そう、ブロワイエはエルコンドルパサーをすでにマークしていたのです。そのうえで余裕であると表明していました。
 エルコンドルパサーも闘志を漲らせます。スタートするなり、一気に先頭に抜け出し「逃げ」に徹します。
 あと500m、400m……。エルコンドルパサーは世界の先頭を走っていました。しかし、ブロワイエが後ろに迫ってきます。ブロワイエが、来た…!

 残り50m、ついにエルコンドルパサーは捕らえられ、そして、差し切られました。ほんのわずかな差で、ブロワイエが先にゴールしたのです。

「君は凄かった」

 ブロワイエが差し出す手を、エルコンドルパサーは笑顔で取りました。世界中がエルコンドルパサーの快走を讃えていました。

 その後、シンボリルドルフに呼び止められたスペシャルウィークは、スマホを渡されます。画面には「通話中・エルコンドルパサー」の文字。

「私、途中まで先頭だったんだよ。
 あと……ちょっとだったんだよ……。
 世界……眼の前だったのに…………」

 エルコンドルパサーは泣いていました。世界制覇の夢が破れたこと、あと少しのところで敗れてしまったこと……。様々な悔しさに、涙が止められなかったのでしょう。

 スペシャルウィークはパジャマを脱ぎ、ジャージに着替えます。「こんな時間から?」と驚くサイレンススズカでしたが、

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その表情には闘志が宿っていました。それを見たサイレンススズカが「私も行くわ」と答えたところで、今回はここまで。

第9R・総評

 スペシャルウィークとサイレンススズカにとって大きな足かせになっていたものを振り切り、覚醒を果たした回でした。そして「最強の敵」がとうとう出現した、そんな回でした。セオリーから言えば「もう負けるわけがない」主人公陣営ですが、スペシャルウィークと互角以上の実力を持つエルコンドルパサーを破った「最強の敵」が今後立ちはだかってくることが予想されます。運命の女神はどちらに微笑むのでしょうか? きっとその答えを近いうちに見せつけられることになるでしょう。

ブロワイエ

 ブロワイエはウマ娘の世界のオリジナル、つまり架空の登場人物です。しかし元ネタになった馬はいます。その名はモンジュー。この凱旋門賞の時点で8戦7勝の、実際にエルコンドルパサーを打ち破っている「当時の世界最強馬」でした。

 Wikipediaにはこの先のネタバレも含めて載っているので、気にしない人だけ戦績を御覧ください。


 さあ、次回は覚醒したスペシャルウィークが勝利をもぎ取れるか、注目です。SHO+XENONでした。


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