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【ストーリー論】ウマ娘のアニメ、ものすごく良くできてない?って話【第1期編④】

SHO+XENONです。

 今回は第4Rについてです。今までは史実にほぼ忠実に展開してきた物語ですが、この辺りから少しずつズレが目に見える形で出てき始めます。そのことも含め、ウマ娘プリティーダービーアニメがどれだけしっかりと王道展開で構成されているか、見ていきましょう。

第1R

第2R

第3R

第4R①冒頭

 前回の最後でモチベーションを取り戻したスペシャルウィークでしたが、やはりそうそう簡単に気持ちはガラッと入れ替わってくれません。落ち込む気持ちがまだ心を強く厚く覆っているようです。ぼーっとして考え込んでしまい、牛乳は零すわ、金槌で指は打ってしまうわ……。

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 極めつけは、体重計に乗った後のこの顔。

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 まるでFXで有り金全部溶かしたウマ娘の顔です。前回の敗因の一つは、やはりこれだったのですね。

第4R②ダイエット

 ダービーに向けて燃えるスペシャルウィーク。セイウンスカイやエルコンドルパサーに、集中しすぎるあまり授業を聞いていないことや、電柱にぶつかって謝っていたことなどを暴露されます。いじられるスペシャルウィークのご飯の盛りが少なくなっていることにグラスワンダーは気付きます。よく見てますね。

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 よく見るといわゆる主菜のおかずもないですね。かなり食べる量を意識的に減らしているようです。でも、糖質が多いわりにたんぱく質がほとんどなくなっているのが気になります。栄養管理的にはあまり正しい食事制限の方法とは言えません。しかし恐らくは、これもわざとそういう描写にしているものと思います。(ちなみに余談ですが、筆者はこの量のご飯だったらよそいますし食べます。白米や麺類が大好きなので糖質制限は苦手です。)

 そんな中、ハルウララが高知から帰ってきます。デビュー戦の結果は5着。1着以外は全て敗北という厳しいこの世界ではありますが、「一生懸命走る姿が良いね」と言われて「走るのが楽しい」「また走りたい」と大喜びのハルウララの姿に、スペシャルウィークは感化されたようです。グラスワンダーも早く足の怪我を治して復帰すべくリハビリを頑張ると言い出します。
 セイウンスカイとはダービーでぶつかることになりますし、エルコンドルパサーもマイルカップに出ることがTVCMで流れます。スペシャルウィークも負けていられません。

 夕方のロード練習中、ゴールドシップはたい焼き屋の屋台を見つけます。盛大にお腹を鳴らすスペシャルウィークに、おごってやるとトレーナー。それぞれがそれぞれの好みのたい焼きを注文しますが、スペシャルウィークは「私は大丈夫」と遠慮します。
 スペシャルウィークはダイエットしようとしていたようです。トレーナーは「×kg、増えたんだろ?」と見抜いていた模様。その上で「体重が増えるのは悪いことじゃない」「速く走るための身体ができあがってきた証拠」「強くなるためにはどんどん食って筋肉量を上げたほうが良い」と諭します。が、スペシャルウィークは納得している様子ではありません。ここのあたりはアスリートというより一人の女の子としての側面が強く出ていますね。
 実際、筋肉量を増やすにはどんどん食べることが大事です。筋肉が増えればその分脂肪が燃えやすい身体になりますから、結果的に身体を大きくして体重を増やすプロセスを経ることになるのです。が、この辺はあまり聞き入れてもらえないものですよねぃ。読者の中でダイエットを試みている人はよく覚えておいてくださいね。

 さり気なくトレーナーが、「特に脚は……」とスペシャルウィークの脚を揉みだした辺りで、他のチームメンバー4人から蹴りを食らわされます。こういう辺りチームメイトの息があっていて、仲が良いことが分かって良いですよね。トウカイテイオーもすっかり打ち解けているようです。

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 ダイエットと聞いて、チームメイト達も協力してくれるようになりました。トウカイテイオーもこの流れを楽しんでいます。
 ちなみに、ゴールドシップが注文したシークレット味のたい焼きの正体は、からしでした。

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 スペシャルウィークのダイエットについては、「あいつらと遊んで気分を入れ替えた方が良いだろう。色々引き摺ってちゃ先には進めないものだ」とトレーナーは放任する様子。一方サイレンススズカには、3つのレースに出てもらうことを告げますが、サイレンススズカは気のない返事。「どんな舞台であろうとも、ただ思い切り走るだけ」、無表情のままそう言うサイレンススズカに、「秋の天皇賞が終われば、いずれは……」と何か知っている様子。いったいこの会話が意味するところは何でしょうかね? サイレンススズカの物憂げな表情からは、その真意を読み取ることはできません。この後ストーリーの進行上で明らかになるでしょう。

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 さて、いよいよチームメイトの考案するダイエットメニューをこなしていくことになりました。ダイワスカーレットがスペシャルウィークにさせたのは――――

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 ニンジンの箱の封印!
 目標を達成するまで開けることは許されないようです。目の前にぶら下げられたニンジンという言い方はしますが、封印されたニンジンとは……(笑)。

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 ウオッカは「地獄の筋トレメニュー」!腹筋背筋腕立て伏せ腿上げ、各100回。これにはスペシャルウィークも「許して~!」と弱音を吐きます。

 トウカイテイオーは「二人共分かってないなぁ」と、楽しいダンスの練習をさせることに。しかし、

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 やっぱり厳しい!!

 ゴールドシップに至っては、ダイエットと何の関係もないプールの飛び込み。セイウンスカイが先に綺麗な飛び込みを見せるも、スペシャルウィークは怖気づいてしまいますが、足を滑らせてそのまま転落することに……。

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 さすがに可哀想になる顔をして浮かんでいます。溺れなかっただけマシ、でしょうかね。

第4R③模擬戦

 さて、部員達がコメディタッチのダイエットパートを繰り広げている中、トレーナーは映像を見返しながら研究しています。スペシャルウィークの走り方を見て何か気付いたようです。

 翌日、チーム・リギルの練習に顔を出すトレーナー。ハナに模擬戦の申込みをします。指名する相手は、タイキシャトル、日本一のスプリンター(短距離型)と評されるウマ娘です。トレーナーはどうしてもスペシャルウィークと競わせてみたいと言います。ハナは渋々ながらもこれを了承し、かくしてタイキシャトルvsスペシャルウィークのタイマンマッチが組まれます。しかし、何故トレーナーはタイキシャトルを指名したのでしょうか?
 しかしここでサイレンススズカが思わぬ行動に出ます。スペシャルウィークの目の前に歩み寄り、「反対です」と言い切ったのです。サイレンススズカは、スペシャルウィークが悲しむ姿を見ていました。2度の敗北を味わわせることで彼女の心を折ってしまうことを恐れていました。しかしそれを口にはせず、体重が増えたこと、勝負服が入らなかったこと、その状態で走ることで怪我をしてしまう可能性を理由に挙げました。
 トレーナーはサイレンススズカの心中を読み切っていました。だから「今のお前じゃ勝てない」と言い切った上で、「強い奴と当たるのが強くなる一番の近道」だと説明します。「強くなれますか?」と不安そうなサイレンススズカに、「一度の本番で学べることはトレーニングの数倍はある。今はグダグダ言わずに走ってこい」と発破をかけます。「私、やってみます!」と言ってサイレンススズカを見る目は、もう迷ってはいませんでした。その目を見て、当初はやや不服そうだったサイレンススズカも、笑みを浮かべて「わかったわ」と承服します。
 このやりとりの中でも、スペシャルウィークの決心、サイレンススズカの想い、トレーナーの彼女達を見ている目など、多くの情報が暗に含まれています。本当に魅力的な人たちがここに集まっていますね。

 いよいよ模擬戦当日。ギャラリー席にはたくさんの生徒が集まってきていて、ゴールドシップがやきそばを作って商売していました。そして案の定、オグリキャップが山盛りのやきそばを食べていました。食べ物のあるところに必ずいますね、オグリキャップ(笑)。

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 トレーナーは、「相手をよく見ろ、全部盗め」とアドバイスを送ります。その言葉通り、スペシャルウィークはレースが始まるやいなや、タイキシャトルの後ろについてその動きを観察します。タイキシャトルの速さは本物で、ついて行くだけでも精一杯ですが、そこで思わぬ発見をします。スリップストリームです。高速で移動する物体のすぐ後ろでは空気の回転が起きて吸着する効果が生まれます。これによって、風の抵抗を受けずに済むだけでなく、より小さな力で大きな出力を生み出すことができるのです。トウカイテイオーはこの時初めて説明されて知ったようでしたが、トレーナーもハナも「上手い位置取り」と評しました。

 しかし、坂道に差し掛かったところでタイキシャトルと差ができてしまい、スペシャルウィークはスリップストリームの恩恵を得られなくなってしまいます。皐月賞の時に坂道で追いつけなかった記憶がフラッシュバックします。何故自分が遅れるのか? スペシャルウィークの目は、タイキシャトルの走法の変化を捉えました。リズムが変わっていたのです。スペシャルウィークもすかさずこのリズムを真似します。ウオッカとダイワスカーレットはそれに気付きませんでしたが、トレーナー、そしてトウカイテイオーが、スペシャルウィークの走法の変化に気付きました。坂道に適した走法、それまでのストライド走法ではなく、ピッチ走法に咄嗟に切り替えていました。スペシャルウィークは実戦でそれをタイキシャトルから盗んだのです。

 ギリギリまで追いすがるスペシャルウィークを、タイキシャトルは突き放しにかかります。しかし、笑顔で追いかけてくるスペシャルウィークを突き放せません。タイキシャトルの顔から余裕が消えました。

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 ゴールの瞬間、わずかにタイキシャトルが先を行っていたものの、それは決して余裕の勝利ではありませんでした。事実、距離を詰められてきており、あと200mでも距離が長かったらスペシャルウィークに差し切られていたかも知れませんでした。

 スペシャルウィークはまた敗北を喫しました。しかし、確かな手応えを感じたようです。皐月賞の時とは違い、その評定は晴れやかでした。タイキシャトルの方も「ベリー・エキサイティングでした」と評価しました。価値ある敗北、成長ある敗北でした。

 NHKマイルカップにはエルコンドルパサーが出走していました。ここでも後続に2バ身近い差をつけ、見事に勝利を収めました。これで5戦5勝、乗りに乗っています。
 次のレースとして、エルコンドルパサーはダービーへの出走を予告しました。スペシャルウィークとセイウンスカイに加え、エルコンドルパサーまでもが出走してくることで、さらに熾烈な争いになることが確実になったのです。
 チームメイトたちの視線を浴び、「私、一着取ってみせます!」と勢いづいたものの、手の指を思い切り机にぶつけてしまいました。やっぱり何処かでオチが付く娘なんだなといったところで、今回はここまで。

第4R・総評

 さらなる大きな勝利のための、大きな飛躍を遂げるための、いわば成長回といったところですね。週刊少年ジャンプなんかでよく見かける修行パートのようなものですね。主人公の成長を視聴者も一緒に見ていく、そして次の戦いへの大きな応援のパワーに変えていくための回でした。

 今まではセイウンスカイを見据えていれば良かったのが、エルコンドルパサーという更なる強敵の出現が示唆されています。つまり、セイウンスカイに勝つだけではダメで、エルコンドルパサーにも勝たなくてはならない、両方に土をつけなければならないということで、次のハードルはまた一段と高くなってしまいました。しかし、そのハードルを超えられるような経験値を今回得られたことで、次回への期待が膨らみます。

 さて、冒頭にも触れましたが、史実とは目に見える形でズレが出てきました。タイキシャトルと模擬戦をしたこともまあズレと言えばズレですが、物語上においては大したズレではありません。現状での一番のズレは、エルコンドルパサーのダービー出走です。
 実はこの時、史実においては、エルコンドルパサーにはダービーの出走権がありませんでした。グラスワンダーも同様ですが、外国産の馬は当時クラシックレースを走れなかったのです。そのため、史実に忠実であるなら、エルコンドルパサーはダービーに出ていてはいけないのです。
 また、エルコンドルパサーがダービーに出ることにより、本来のダービーの結果とは異なる結果を生みます。勝利すれば本来の勝者を落とすことになりますし、敗北すれば逆にエルコンドルパサーの経歴に傷をつけます。これまでかなり史実に忠実にだったところで急に史実と違うことをするには、その辺の整合性を考えねばならなくなるのです。
 さあ、アニメ制作スタッフは、この問題をどうクリアしたのでしょうか?勝つのはエルコンドルパサーか、セイウンスカイか、スペシャルウィークか、それとも全く予想もしない他の誰かなのか……?
 次回が楽しみになりませんか? 早く見たくなりませんか? 下のリンクから今すぐ見に行っても良いんですよ?

というわけで、明日は第5R、いよいよダービーです。SHO+XENONでした。


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