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【ストーリー論】ウマ娘のアニメ、ものすごく良くできてない?って話【第1期編⑥】

 SHO+XENONです。
 ついにこのアニメのストーリーを追っていく(勝手に始めた)連載も、第1シーズンの折返しまで来てしまいました。
 物語も一段落ついて、次の展開に舵を切る頃合いです。どうなっていくか、改めてアニメを見返しながら追っていくことにしましょう。今回はいわゆる中休み的な展開から、次回以降に向けてさらに物語の波が大きなうねりを見せる回です。「見て楽しい」回ですので画像多めでいきます。

ここで視聴しながらどうぞ

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前回の記事はこちら

第6R①冒頭

 秋の到来。スペシャルウィークはここまでに起こったことを手紙にしたためています。

 宝塚記念ではエアグルーヴらを破り、圧倒的な逃げ切りでサイレンススズカが勝利を収めたこと。

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 メジロマックイーンがついに(恐らく折れて)チーム・スピカに加入したこと(そしてゴールドシップと運命的な何かを感じさせられること)。

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 夏合宿で海に行ったこと。

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 ゴールドシップ、よくこれ平気だったね……(笑)。

 そしていよいよ明日、トレセン学園のファン大感謝祭が行われること。サイレンススズカも左回りしながら何処から回るかを考えてそわそわしています。

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第6R②大感謝祭

 ついにファン大感謝祭当日になりました。チーム・スピカのメンバーは皆で回ろうと言っていたのに、早々にバラバラに動き出してしまいます。トウカイテイオーは会長を求めて走り出してしまうし、ゴールドシップはメジロマックイーンを無理矢理連れて「稼ぎ」に行ってしまいました。ウオッカとダイワスカーレットはどっちが先に回りきるかを競って走り出してしまい、残るはスペシャルウィークとサイレンススズカ。「お祭りは楽しんだ者勝ちだから」と促されて、スペシャルウィークも行くことにしました。

 色々な出店にイベントが目白押し。ヒシアマゾンナリタブライアンも楽しそうに「ちびっこ探検隊」を引率しています。こういう「普段なかなか見られないリラックスした状態」が見られるのは良いですね。

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 まるで宝塚歌劇団の男役のような耽美さを堪能できる執事喫茶なんてのも出ています。エアグルーヴテイエムオペラオーフジキセキと、とてもカッコ良くキマってますね。失神する女性まで現れるほど。

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 シンボリルドルフもいるようで、やっぱりキマってます。

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 会長のファンクラブがあったらNo.0001をゲットしていそうな会長ファンのトウカイテイオー、大はしゃぎで声援を送り、ちょっと呆れられています。

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 余談ですが、トウカイテイオーを含め、この5名の中で元ネタも牝馬なのはエアグルーヴだけです。その観点からでもこの中に入ってくるエアグルーヴは、カッコいい女の子の代表格かも知れませんね。

 マチカネフクキタルメイショウドトウの占い屋で占って貰っているメジロマックイーン。今日の運勢は【凶】。開運のためのラッキーアイテムは【焼きそば】と告げられたところで、そこにゴールドシップが「助けてくれ、人多すぎで捌けねえ」とやってきます。焼きそばが向こうからやってきたと、メジロマックイーンは喜んで(ちょっと調子に乗って)助けに向かいます。意外とお調子者なのが良いですよね、メジロマックイーン。

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 サイレンススズカに話しかけるのは、新登場となるエイシンフラッシュナイスネイチャ

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 次の毎日王冠で一緒に走れて光栄だと言われて、サイレンススズカもちょっと恥ずかしそうにしています。
 と、広場の方から何やら声。そこではドーナツ大食いバトルが行われていました。司会はイナリワン、そして挑戦者はタマモクロススーパークリーク、そしてオグリキャップ

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 優勝賞品は巨大ドーナツぬいぐるみ。タマモクロスはこれが欲しくてたまらないようです。

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 その想いを爆発させスパートをかけるタマモクロス。それを横目に「イケる!」とスーパークリークもスパート。オグリキャップはマイペースに次々とドーナツを口に放り込みます。
 タマモクロスが最後の1個を口に放り込み、なんとか飲み込んで挙手するも、なんとオグリキャップと同時。同着かと思いきや審議の札。映像による確認を行うことに。その映像に映っていたのは――――

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 なんと、スーパークリークが勢いよくドーナツを手に取った際に薙ぎ払われたドーナツが、オグリキャップの皿に…! オグリキャップの皿はこの時点で空であるため、実は二人が「イケる!」と言っていた時には完食していたのです。しかし、この分も食べた上でなお、タマモクロスと同着になるほどの早さで、オグリキャップはドーナツを駆逐していたのでした。「確かにちょっと多かったような」と呟くオグリキャップに、会場から一斉にツッコミ。
 わざとではないとはいえ、妨害してしまったスーパークリークは失格。申し訳無さそうに「ごめんなさい、飛ばしてしまって……」と謝るスーパークリークに、オグリキャップは「こちらこそ、お前の分まで食べてしまってすまない」と謝り返します。仲良しですね。
 第33回ドーナル大食いバトルの勝者はオグリキャップ。巨大ドーナツぬいぐるみが手に入らなかったタマモクロスは落ち込んでしまいますが、なんとオグリキャップが今手に入れたばかりの巨大ぬいぐるみをタマモクロスに差し出します。「私はドーナツを食べたかっただけだ。」これにはタマモクロスも感激して「オグリん~~~!」と抱きつきます。オグリキャップ、何というイケメン! お腹ぽっこりしてるけど。

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 この有様を見て拍手しながら、お腹を鳴らすスペシャルウィーク。「スペちゃんも出たかったのね。」

 ところでこの第33回ドーナツ大食いバトルの結果、実は第33回有馬記念そのままなんですよね。タマモクロスの引退レースとなったこの有馬記念では、後ろから迫ってくるタマモクロスからオグリキャップが逃げ切って、1着オグリキャップ、2着タマモクロスとなりました。3着にはスーパークリークが入っていたのですが、進路妨害をしてしまっており失格となっています。そんなところまでしっかり再現しているあたり、芸が細かいですね。

 夕方になり、スペシャルウィークとサイレンススズカは、エルコンドルパサーとグラスワンダーも交えてスイーツを食べています。

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 ここでついに、グラスワンダーが毎日王冠に出走し復帰を果たすことが明かされます。毎日王冠ではサイレンススズカと激突するわけですね。一緒に走れることを楽しみにしているグラスワンダーに、サイレンススズカは「私もよ」と同意した後、「来年は一緒に走れないかも知れないから」とつい口走ってしまいます。サイレンススズカは海外に挑戦しようとしていたのです。今絶好調のサイレンススズカとジュニアチャンピオン(!)のグラスワンダーが出ると聞いて、エルコンドルパサーも出走することを決意します。ここで当代最強格の3名の激突が毎日王冠で実現することになりました。

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 あれ、オグリキャップさん、あなたさっきあのドーナツ食べてましたよね??

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 ……まだ食べるの!?

 そこにウオッカとダイワスカーレットが大量の景品を持ってやってきます。本当に二人共全部回ったようで、「トレーニングより疲れたかも……」とこぼす程疲労困憊のようです。
 ゴールドシップとメジロマックイーンも「稼ぎ疲れた」と言って帰ってきました。一生懸命焼いて売っていたのは、ラッキーアイテムの焼きそばではなくお好み焼きだったようです。やっぱり【凶】でしたね。

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 最後にトウカイテイオーも帰ってきました。執事の格好をして。

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 トウカイテイオーはこういう格好似合うんですよね。長いポニーテールが快活な少女のイメージを持たせますが、実は意外と美少年のような中性的な顔立ちや肢体をしているのかも?

 裏切り者ー!とゴールドシップはトウカイテイオーに固め技を食らわせます。メジロマックイーンは「これ以上染まらないうちに私も……」と後ずさりますが、心の声が丸聞こえだったのかゴールドシップに咎められます。この雰囲気に楽しそうに笑うサイレンススズカ。スペシャルウィークもつられて笑ってしまいます。

「楽しかった」

 そうサイレンススズカは笑います。そしてスペシャルウィークに「ありがとう」と。学園に来てからサイレンススズカはあまり周囲と馴染もうとしなかったようです。しかしスペシャルウィークと出会うことで変われたと。
 サイレンススズカは走りながら、眼前の景色をずっと見ていたいと考えていました。しかしトレーニングやレースを通してその楽しさを忘れていってしまっていました。でももしかしたら、あの時の感覚を、スピカでなら思い出せるかも知れない。スピカに来てから走るのがまた楽しくなって、色々なレースに出たくなったと。そのために海外に行きたいと。今は本当に楽しいと。サイレンススズカの想いが溢れてきていました。

第6R③毎日王冠に向けて

 感謝祭明け、グラスワンダーは全力で走り込みますが、それをハナに咎められます。ハナはグラスワンダーにはあくまでGIレースと勝って欲しいと考えており、それに向けて無理をさせないよう、グラスワンダーのためを思ってトレーニングメニューを指示しますが、グラスワンダーは「どうしても毎日王冠で勝ちたい」「こんなゆっくりでは(勝てるものも勝てない)」と焦りを見せます。

 想いのすれ違いを、ハナはカクテルでかき消そうとします。そんな時スピカのトレーナーが現れました。トレーナーはハナの姿勢に理解を示します。実はこの二人、険悪な仲ではないんですね。お互いのことをよく分かっているようです。ハナもトレーナーも、ケガの恐ろしさをよく知っていました。これ以上ケガをさせたくない想いも共有していました。
 トレーナーが急に、ハナに大事な話があると迫ります。大人な雰囲気の中、トレーナーが切り出した大事な話とは、

今夜、奢ってくれない?

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 一方その頃サイレンススズカは、いつもより多く回っていました。

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第6R④毎日王冠

 とうとう毎日王冠の日がやってきました。毎日王冠は東京(府中)レース場にて行われる、芝・1800m、GIIのグレードで、天皇賞秋の前哨戦として位置づけられることが多いレースです。

 スピカのメンバーも揃って応援にやってきました。例によって作戦はなし。「またそれ……」とウオッカは呆れますが、「あいつは好きに走らせるのが一番」と、トレーナーは自信満々です。

 ファンファーレが鳴り、各ウマ娘がゲートインしていきます。6番には10ヶ月ぶりに復帰を果たした無敗のジュニアチャンピオン・グラスワンダー。4番には連戦連勝、世界を見据える、エルコンドルパサー。そして2番にサイレンススズカが入りました。これにナイスネイチャとエイシンフラッシュも加わった激戦となります(史実ではこの二人は参戦していません。ナイスネイチャは本来この時点では引退しており、エイシンフラッシュは産まれていません)。

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 さあゲートが開きレーススタート。グラスワンダーがやや遅れましたがだいたい作戦通りの位置取りで後方待機。サイレンススズカは先頭です。
 次第にグラスワンダーが前に出てきました。エルコンドルパサーも後ろから追いかけてきます。直線に来てグラスワンダーが遅れ始め、エルコンドルパサーとサイレンススズカの一騎打ちの様相になりました。エルコンドルパサーは余裕の笑みを浮かべ、さらに加速! しかしサイレンススズカに届きません。ここでエルコンドルパサーの表情が本気のものに変わります。絶対に差し切る意思の強さで更なる加速を図ります。しかし――――

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――――サイレンススズカのスピードはエルコンドルパサーを上回っていました。異次元の逃亡者はスピカのメンバーの声援を受けて笑みを浮かべながら、エルコンドルパサー、グラスワンダーという強敵を圧倒して1着でゴールインしました。無敗だった二人が、とうとう土をつけられることになりました。

 勝利を称える声援の中、サイレンススズカが口にするのは、チームメイトへの、特にスペシャルウィークへの感謝でした。

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 一方、初めての敗北を味わったエルコンドルパサーの瞳からは、大粒の涙がこぼれ落ちていました。あのエルコンドルパサーがこんな顔を見せることを、視聴者は想像できたでしょうか?

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 とぼとぼとターフを後にするグラスワンダーの目の前にはハナが立っていました。申し訳ありませんでしたと目を伏せたグラスワンダーを待っていたのは、叱責の言葉でもなく、安っぽい慰めでもなく、抱擁でした。「これでいい。次のGIでピークに持っていけばいい」というハナの言葉が、グラスワンダーにとっては一番の慰めだったことでしょう。

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 エルコンドルパサーが天皇賞でのリベンジを誓う中、サイレンススズカは観客席に手を振ります。
 その時の動画を見返し、同じくハナがリベンジを誓う中、その横で空気を読まないトレーナーが大いに勝利を喜び、そしてハナの怒りを買ったところで、今回はここまで。

第6R総評

 前半は物語の中休み、後半は憧れの存在の才能が最大にまで開花する、そんな昇り調子のお話でした。前回の主人公の成長も合わせて、さらにどんどんと才能の翼を広げ、活躍の幅を広げていくことが期待される、そんな王道展開の中盤によくあるお話でした。

 しかしこういう回の次には、だいたい大活躍が待っているのではなく、とても大きな挫折が待ち受けているのがセオリーです。調子付けば調子付くほど、その落差はより激しいものになり、抗いきれないような大きな悲劇が襲い掛かってくることになります。王道展開を知る人ほど、そろそろ怖くなってくる頃合いではないでしょうか。

ナイスネイチャについて

 余談ですが、今回登場したナイスネイチャについて。ナイスネイチャは、どちらかというと2期での描かれ方が強く印象に残るキャラクターだと認識されているのではないでしょうか。それもそのはず、史実においてもナイスネイチャはトウカイテイオーの同期であり、ここで登場してくるのは実は結構違和感のあるチョイスだったりします。この段階でナイスネイチャがレースに出ていることによって、2期の時間軸と若干整合性のとれない部分が出てきてしまっているからです。
 この時点では第2期のアニメの構想がそんなにできあがっていなかったことが伺えます。また、1期のアニメではなるべく多くのウマ娘達を登場させようと苦心していたように思います。そのためにこのような登場の仕方となり、まただからこそ齟齬が出てきてしまっても目を瞑らざるを得なかったのではないでしょうか。

次回について

 史実をよく知っている人ほど、次回を見るのには勇気がいることになるでしょう。総評で触れた「抗いきれないような大きな悲劇」について心当たりがあるからです。しかしそれだけに、次回はとても重要な回になります。だからこそ、明日はこれまで以上の超長文で書くことになると思います。

 それではまた明日お会いしましょう、SHO+XENONでした。


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