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アキレス腱炎には遠心性トレーニング!

アキレス腱炎は靭帯でも最大の腱の大きさを有していますが、障害発生が非常に多い部位でもあります。
一般的にアキレス腱の圧痛、腫脹、耐荷重量の低下はアキレス腱障害を有していると判断されます。

アキレス腱炎はランナーに多く発症すると言われていますが、Rolfらは1/3の症例はデスクワークなど座る時間が多いライフスタイルのヒトに発症すると報告しています。

アキレス腱炎はアスリートだけでなく、一般に運動してない人にも発症しやすい病態となります。

Paavolaらは急性期から亜急性期のアキレス腱炎は初期から治療を行うことで84%は症状が改善したと報告しています。つまり、症状が出現していたら、なるべく早期からの介入が非常に重要になります。

アキレス腱炎の詳細な病態(腱中央部、付着部、)やリスクファクター、一般的な治療方法については他の著者に譲り、私はアキレス腱炎に対する筋力トレーニングにエビデンス(根拠)があるのか文献を中心に紹介していきたいと思います。

アキレス腱炎に対する保存療法

アキレス腱炎では安静指示が言われますが、これについては強いエビデンスはありません。
痛み止めとしてのNSAIDsは初期の痛みの軽減に有効ですが、長期的な利用は腱の脆弱性を生じさせると行った報告もあり、使用には注意が必要だと言われています。
また寒冷療法も疼痛の軽減や炎症を抑える目的で行われますが、アキレス腱炎に対するエビデンスはありません。ただし、疼痛の軽減が得られたり圧迫と組み合わせることで腫脹が抑えられるといった報告もあり、実験プロトコルが組みにくいというのが実情ではないかと思います。。。
アキレス腱炎に対する保存療法で特に強調されるのが遠心性収縮を利用したトレーニングです。
理由は腱のリモデリングが期待できるといった理由があるためです。
実際にその有効性についても報告されています。
そのため、アキレス腱炎に対する遠心性収縮を用いたトレーニングの有効性と具体的な方法について説明していきたいと思います。

Maffulli N et al: Achilles tendinopathy. Foot Ankle Surg. 2019 Apr 18. pii: S1268-7731(19)30052-9

アキレス腱炎に対する遠心性収縮トレーニングの効果

論文名

・疼痛の軽減
・VISA-A scoreの改善

※VISA score(Victorian Institute of Sport Assessment)はジャンパー膝の重症度分類を評価するための評価スケール。そのアキレス腱バージョンがVISA-A score (Victorian Sports Assessment-Achilles)。

アキレス腱炎に対する遠心性収縮トレーニングについては目立った副作用の報告もなく、むしろポジティブな結果が多く報告されていました。

負荷が高いトレーニングなので、何かしらトラブルが起きそうな気がしますが、後述するAlfredsonプロトコルに則ってやっている研究が非常に多かったです。なので、明確なプロトコルに則ってやれば、二次的な障害の発生を防ぎながらトレーニングができると考えられます。

アキレス腱炎に対するAlfredsonプロトコル

画像2

Alfredson H, Pietilä T, Jonsson P, et al. Heavy-load eccentric calf muscle training for the treatment of chronic Achilles tendinosis. Am J Sports Med 1998;26:360–6.

このAlfredsonプロトコルは昔から行われている方法で、エビデンスも比較的得られている方法です。
必ずしもこのプロトコルがやれなくても、両足で行い、徐々に片足に移行したり、求心性収縮を入れた方法もいいのではないかと個人的に思っています。
また、運動の速さについては特に述べられていませんが、雑に運動をしても効果が出ませんので、ゆっくり正しい姿勢で丁寧に行うことをおすすめします。

まとめ

・アキレス腱炎はアスリートだけでなく、普通に生活している人にも起こりやすいです。
・初期治療で8割の人が症状の改善があるため、早めの対処が大切になります。
・遠心性収縮トレーニングが最も有効であり、プログラムに則って積極的に行っていくことが望ましいです。

参考文献

1)Rolf C, Movin T. Etiology, histopathology, and outcome of surgery in achillodynia. Foot Ankle Int 1997;18:565–9.
2)Paavola M, Kannus P, Paakkala T, et al. Long-term prognosis of patients with Achilles tendinopathy. Am J Sports Med 2000;28:634–42
3)Maffulli N et al: Achilles tendinopathy. Foot Ankle Surg. 2019 Apr 18. pii: S1268-7731(19)30052-9.
4)Wilson F et al:Exercise, orthoses and splinting for treating Achilles tendinopathy: a systematic review with meta-analysis. Br J Sports Med. 2018 Dec;52(24):1564-1574.
5)Alfredson H, Pietilä T, Jonsson P, et al. Heavy-load eccentric calf muscle training for the treatment of chronic Achilles tendinosis. Am J Sports Med 1998;26:360–6.

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