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足部アーチを臨床で測る!

足部のアーチ構造は衝撃緩衝と安定性というヒトにとって非常に重要な機能を有しています。衝撃を受けた際の緩衝作用が破綻すると、たちまち足部・足関節周辺に障害をもたらします。

そのため、足部アーチの評価は非常に重要になります。

足部アーチは内側縦アーチ、外側縦アーチ、横アーチがあります。各アーチの構造や機能については他の方にお願いして、

この記事では「アーチを臨床でどのように計測するか?」をテーマにして話しを進めていきたいと思います。特に内側縦アーチおよび横アーチの臨床で測定可能な評価方法について紹介したいと思います。

内側縦アーチの評価

内側縦アーチは臨床でも非常に重要であり、その高い・低いの判断によって障害発生や動きとの関連について考察することが多いです。
明らかに見ればわかるような扁平足症例などもいるかと思いますが、程度を表すことは難しいです。
そこで定性的な評価ではなく、定量的に評価することが必要になります。
内側縦アーチを測定する代表的な方法にはアーチ高を測定する「Arch height index」、舟状骨後の高さの変化を見る「Navicular Drop」、フットプリントを使って評価する「Arch Index」が有名かと思います。
また、日本で内側縦アーチの評価に用いられるのは舟状骨高で測定したアーチ高率を使う報告が多く見られます。

内側縦アーチ評価①

これらの研究方法は昔から再現性や妥当性について検証されてきました。また障害発生との関係についても研究されています。
しかし、Navicular drop testは舟状骨高の変化を見るため、触診スキルやマーカーの太さなどの違いによって大きく値が異なるため、信頼性を疑問視する報告があります。また、Arch IndexはArch Indexとの妥当性が低いことやフットプリントを使う必要があり、現場ですぐに利用することが難しいです。
先に説明したArch height Index(AHI)は信頼性や妥当性についても比較的良好で、かつ簡便に評価可能なことが魅力です。
そこで、今回はArch height indexについて説明していきたいと思います。

Arch Height Index(AHI)の測定方法

内側縦アーチ評価②

どうでしょう?
難しくないですよね?
研究では特性の計測機器を使用していますが、臨床では条件を一定にすれば自分の方法で試してみればいいと思います。
測定場所と測定する定規やメジャーなどを決めておけば簡単にできます。
実際、時間がない時はデジタルカメラで足部を撮影して、あとで測定するなどの方法をとっています。その場ではすぐ結果は出せませんが、次回患者さんが見えた際に説明に使えます。

ちなみにですが、デジタルカメラを使って測定する方法の信頼性も高いことが報告されています!

ではこのAHIと障害との関係はあるのか少し文献を見てみたいと思います。

AHIと障害との関係

AHIの高比によって障害発生パターンが異なる(Williams2001)
・高アーチ:下肢外側障害、下肢骨障害、足部・足関節障害
・低アーチ:下肢内側障害、下肢軟部組織障害、膝関節障害

グラフ

※Williams DS 3rd et al: Arch structure and injury patterns in runners. Clin Biomech (Bristol, Avon). 2001 May;16(4):341-7.より引用改変



アーチの高い・低いによって障害発生パターンが異なるというのは興味深い治験だったかと思います。
ですが、あくまでパターンがあるだけです。
全員に当てはまるわけではないです。

内側縦アーチの高さの評価一つで全てが分かるわけではないので、他の評価と組み合わせて病態を考えていくことが大切です。

横アーチの評価

横アーチは外反母趾などの前足部障害を評価する上で非常に重要であり、内側縦アーチとの関係を合わせて足部アーチ機能を評価する上でも重要になります。
しかし、横アーチは先述した内側縦アーチのように見ればわかるか?と言われると人によって判断が分かれるかと思います。

しかし、横アーチの臨床的な評価はあまり多くありません。

レントゲンを使った測定や超音波による中足骨頭測定、フットプリントを使った測定が報告されていますが、機器を利用した測定であり、誰でも簡単にというわけには行かないと思います。

横アーチ評価①

ですが、臨床でもトラブルの出やすい横アーチの評価は必要だと思います。
そこで臨床でも簡単に測定可能なノギスを使って横アーチを測定する方法をご紹介したいと思います。

Transverse Arch Length(TAL)の測り方

横アーチ評価②

これも簡単そうですよね?
場所も道具もそんなに必要ないですし、測定自体もそこまで難しくないですよね?
しっかり触診できれば問題なく測定可能です。
この測定方法の興味深い点は静止立位と荷重位を測定し、その変化量を見ていることだと思います。
静止立位では前足部にほとんど荷重がかかっていません。したがって静止立位での測定がそのままアーチ機能を反映しているかは疑問が残ります。
しかし、前足部まで荷重をかけることによってアーチの変化を捉えようとしています。
つまり、もとも横アーチが低いのがさらに低くなるのか、もともと低くて変化しないのかなどアーチ機能を考える幅が広がり、考察が深まります。

ではこのTALと障害との関係はあるのか少し文献を見てみたいと思います。

TALと障害との関係

MTSS群では健常群と比較して横アーチの柔軟性が低下し、MLA比が低下していた(Kudo2015)。
つまり、荷重をかけた際に横アーチの柔軟性が低下していると、荷重ストレスを受けられず、脛骨にストレスが生じるためと考えられます。
TALの低下は前足部のみならず下腿も含めた下肢障害につながることを示唆する報告です。

やはり足部のみならず下腿や足関節の障害の要因を考える上でも、横アーチ機能を測定することは非常に重要な指標になります。

アーチ評価のヒント

まず大前提として、目の前で訴えている患者さんの主訴は複数の要因からなっている可能性が高いです。

アーチの低下=足部の痛み

と捉えるのは非常に危険です。
もし違った場合、同介入すればいいか困ってしまいます。
一つの評価でわかることは多くありません。
アーチの評価も一つの評価であって、それで全て解決するわけではありません。

まとめ

足部アーチの評価は非常に重要な情報をもたらしてくれます。
そして、その情報をどう解釈するかで治療方法が変わってきます。
足部アーチの評価にはいわゆる「正常値」がないです。
そのため、目の前の患者さんの健側と患側の左右差から違いから病態を考察していくことになります。
それが足部アーチを見ることの面白さかもしれませんね!

臨床では「時間がない」、「場所がない」、「道具がない」などいろいろなものがありません・・・

ですが、今回紹介した方法は簡便に行えて、かつ再現性なども研究されている方法になります。
ぜひぜひ皆さん、現場で使ってください。

参考文献

1)Williams DS, McClay IS. Measurements used to characterize the foot and the medial longitudinal arch: reliability and validity. Phys Ther. 2000; 80(9): 864−871.
2)Williams DS 3rd et al: Arch structure and injury patterns in runners. Clin Biomech (Bristol, Avon). 2001 May;16(4):341-7.
3) Kudo S et al: Flexibility of the transverse arch of the forefoot. J Orthop Surg (Hong Kong). 2014 Apr;22(1):46-51.
4)Kudo S et al: Forefoot flexibility and medial tibial stress syndrome. J Orthop Surg (Hong Kong). 2015 Dec;23(3):357-60.


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