【書籍紹介】負動産時代を読んで(朝日出版社)

負動産時代。。。
公務員のはしくれとして、この「負動産」というキーワードが気になり、購入してみました!
読後の感想として、なんとなく今まで頭のなかでこのような社会問題がいずれ将来起きるかもしれないという懸念があったのですが、それが確信へと変わりました。
著書を読んで次の3点が今後の社会問題となるかもしれないと思い、書き連ねてみます。
1 相続人が多数の所有者不明の土地問題
2016年時点で、所有者がわからない土地の総面積が九州に匹敵し、2040年には北海道とほぼ同等の面積となる・・・
確かに、現在の不動産は不動産売買等によって、土地の所有権が変わった場合も土地の登記を義務にしておらず、登記しないことをもって罰則にしていません(対抗要件にはしていますが)
特に、土地所有権の移転における登記がなされないことの問題として
「相続」
が問題になってきます。
この著書でも、相続時に登記がなされなかったことで、その後の土地利用に支障をきたしているケースも紹介されています。
土地利用が支障をきたすということは、行政のまちづくりにも非常に影響が大きくなります。
開発したいエリアに未登記で法定相続人が何百人もいるという土地がある場合、その土地にはなかか手がつけずらいということになります。
その土地が駅前や一等地にあったとしても、行政は二の足を踏まざる得ないのが現状です。
(法定相続人を全員探し、同意を得る作業は多大な労力と人件費がかかります)

2 マンション建て替え問題
次に、老朽化してきたアパート(マンション)の建て替え問題も上げています。
アパート(マンション)のように共有持ち分の場合、取り壊ししたりするのに共有持ち分者の全員の同意が必要となります。
全員の同意が得られない場合は、老朽化していたとしても取り壊しができなくなります。
老朽化していても建て替えができなければ、土地所有者やアパート(マンション)オーナーにとっても負担になることは間違いないと思われます。
もちろん、居住者の権利も守られなければならないのは事実ですが、著書にもあるとおり、一人の反対で取り壊したくても取り壊せないという状況が起き、その結果、建物の一部が破損し、第三者に損害を与えた場合は、オーナーの責任になります。
著書にもありますが、居住者全員の同意ではなく、多数決で決める仕組みをつくる必要があると思います。

3 アパート(マンション)のサブリース契約にまつわる問題
3つ目に川口市のようなベッドタウンでは、マンションやアパートが多く建てられており、マンション経営が相続対策として注目されたこともありました。
しかし、こうしたマンションやアパートのオーナーと管理会社とで、「サブリース契約」と呼ばれる一定期間家賃保証を行っていることが今後の社会問題となる可能性があります。
「サブリース契約」とは、オーナーがアパート(マンション)を建て、そのアパート(マンション)を不動産会社が買い上げて、オーナーに一定期間家賃保証を行うビジネスになります。
家賃保証が一定期間あることから、初心者でもアパート経営をはじめるには敷居が低くなりますが、一方で、家賃保証期間が経過後はオーナーが全て経営を行わなければならないことになります。(修繕費も貯めていかなければなりません)
川口市にサブリース契約のアパート(マンション)がいくつあるのかは調べてみないとわからない部分もありますが、ゼロではないと思います。今後、アパート(マンション)のオーナーの経営問題も社会問題化してきそうな予感がします。
以上3つを上げさせていただきました。
他にも「公図の面積やかたちが実態と即してない」「地籍調査が全く進んでいない」など多くの問題が日本の土地行政に山積していますが、一番は登記の未登記問題でしょう。
著書のなかでは、海外の事例をとりあげて今後の打開策を提案していました。
「負動産」問題は地方自治体の方が大きな問題となってくるので、私が住む川口市でもどのように今後取り組んでいくのか注目したいと思います。


最後になりますが、
この国の将来の不動産問題について関心のある方には非常におすすめの一冊といえるので関心のあるかたはぜひ読んでみてください


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