見出し画像

「オンライン宿泊」を始めるときに敬意と責任のことを考えた話

 みなさん、おはようございます。福井県で地域をまるごと体感できる宿 玉村屋をやっています、ナカタニ ショーです。心地よい鳥のさえずりが聞こえる朝、いかがお過ごしでしょうか。

 先日、こちらの記事で紹介したWhy Kumanoの『オンライン宿泊』が、yahooニュースのトップに載ったり、テレビで紹介されたりと、プチ流行しているんです。流行っているからではなく、オンライン宿泊の本質に感動と共感を覚えたので、僕が運営する宿「地域まるっと体感宿 玉村屋」でもオンライン宿泊をはじめます!

▼詳細・申込はこちら
https://tamamuraya.jp/2020/05/12/073/

けど、正直なところ、これを始めるのを迷いました。今日はその正直な気持ちをまとめてみました。

1.先駆者への尊敬について

 なにごとも「一番最初」が大変なのです。そして、リスクもある。それはライト兄弟が、世界で初めて空を飛んだとき。日本に「ゲストハウス」がほとんどない時代に、中村功芳が倉敷でゲストハウス「有鄰庵」を始めてゲストが月に2組しかいなかったとき。Appleのスティーブ・ジョブズが世の中で、ガラケーしか使われていない時代に「iPhone」を出したとき。
 数々の先駆者たちはリスクを取りながらも新しいことを生み出す。だからこそ、先駆者は強い。その市場を「本質的に捉え」、相手が気づいていない「ニーズ」を提案し、求められるようになりました。

 あとから始めることは、「薄っぺらい」になりがち。それは先駆者たちがやってきたことの本質を見極めず、流行りに乗り、表面だけを見て真似をするから。何度も何度も写し見づらくなっていくコピーのように。そうならないためには原盤を見なければならないわけです。

 今回でいうと「オンライン宿泊」を日本で最初に始めたのは、Why Kumanoのゴロちゃんとマルちゃんであって、我々は後出しジャンケン組。
 だからこそ、先駆者たちがなにを想ったか、顧客のどういうニーズに触れたかをしっかりと考えなければならないし、その市場を切り開いてくれた彼らに尊敬の念を送らないとならないと感じています。

2.業界の印象を変えるかもしれないという落とし穴

 「ゲストハウス」は、約10年前に日本で産声を挙げました。ゲストハウスをいう枠組みの定義がないのではっきりはしていませんが、日本全体で1000軒以上あるのではないかとも言われています。
 その中で近年問題となってきたのは価格競争質の低下です。ゲストハウスが日本に入った頃は、意思がある人が宿をやっていた。だからゲストハウスはそれぞれの宿で特徴があり、ファンがどんどん増えていった。しかし、近年になり「ゲストハウスはお客さんがどんどん来て稼げる商売らしいぞ」と認識をしたオーナーたちが特にインバウンドが多い都市部で、ゲストハウスを始めたのです。これはただ「稼げる」というだけで、ただの投資対象として始めた。だから、ここに来たゲストに「泊まる場所」を提供するだけ。本来のゲストを心から歓迎し、その地域を楽しんでもらうというゲストハウスを始めた先人たちの想いが、ここに来て消えてしまったのです。

 たった1年だけ宿をやった僕が言うのはとてもおこがましいので言うのをためらうのですが、「ゲストハウス」は、ただの「安宿」に成り下がり、安くないと選ばれない宿へと落ちてしまったと感じるわけです。

3.オンライン宿泊を始めることの責任

 このゲストハウス業界の変遷は、今から我々が始める「オンライン宿泊」にも言えると考えています。ゴロちゃんとマルちゃんが切り拓いてくれた「オンライン宿泊」の可能性。同じ名称を使い、似たようなことをやるのなら、「オンライン宿泊」のイメージを下げてはいけない。二番煎じ、三番煎じの薄いお茶にしてはいけない。そうすれば、彼らが作ってきた道をお茶を濁す形でその場だけのものにして、「オンライン宿泊、行ったけど大したことなかった」と言われるものになってしまう。

4.それでも「オンライン宿泊」を始めるのはなぜか

 だからこそ、「オンライン宿泊」をはじめるときは、かなり葛藤しました。正直、やらないという選択肢も大きかったです。それでもオンライン宿泊を始めたのは3つ理由があります。

① みんなの「おうち時間」を玉村屋らしさで充実したものにするお手伝いをしたい
② ゲ
ストハウスの「交流ができる宿」という魅力を取り戻したい
玉村屋という宿を守る意義を見出したい

① 玉村屋では、臨時休業とともになにか玉村屋の資源を活かして、世の中に貢献したいと考えました。その中で始めたのが、BOOKサービス付き宿泊券です。これはゲストに簡単なアンケートに答えてもらったのを基に玉村屋の約300冊の蔵書からオススメの本を選ぶと言うもの。暮らし方だったり、考え方だったりの参考になる本から、自然の知恵だったり、読み物だったりと。様々なジャンルの中で「この人に読んでほしい」というのを真剣に考えます。本当は玉村屋に滞在してもらい、ゆったりと本を読んでほしいのですが、外出や移動ができない今はそれが叶いません。だからこそ、本をお届けし、おうちでの読書時間を楽しんでいただきたいと思い企画しました。こういった感じで、我々が持っている資源を使って、世の中に貢献できるのが「オンライン宿泊」だと思います。

② ゲストハウスの本来の魅力は、ゲスト同士やスタッフとゲスト、地域住民との交流ができるというところ。そこで交わされる会話は、地域住民やスタッフからの地域情報。ゲストからは各地の旅先の話。ここで得られる「一次情報」というのは本当に価値があるわけです。そんな本来のゲストハウスの良さが失われ、ただ安く泊るドミトリー(相部屋)宿がゲストハウスとして認識されるようになった今、オンラインだからこそ交流することがメインにあり、それが本来のゲストハウスの良さを取り戻すきっかけだと思います。

③ 全国の宿泊業、特に我々のように小規模な宿は「自体が収束したときに、ゲストが戻ってくるのか」というのが心配事のひとつ。だからこそ、オンライン宿泊に参加してくれると言うことは我々の宿に関心を持ってくれてるということ。参加してくださる方がいることで、我々は必要とされている感じることができるのです。

ということで

 責任やら尊敬やら、いろいろと書きましたが、それほど本気でゲストの方に充実した時間を送ってもらえるような「オンライン宿泊」にして、世の中のオンライン宿泊の価値を高めていきたいという決意表明でした。

▼そんな玉村屋のオンライン宿泊はこちらから▼

https://tamamuraya.jp/2020/05/12/073/


この記事が参加している募集

おうち時間を工夫で楽しく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?