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#17_長谷川あかりさんのからあげ

料理家の長谷川あかりさんを知ったのは「味な副音声〜voice of food〜」というポッドキャスト番組だ。この番組はフードエッセイストの平野紗季子さんが食への深い愛を語る番組で欠かさず聴いているのだが、そのゲストとして出演されていたのだ。

この回で長谷川さんは手間のかかる料理と時短レシピの中間のようなものを目指している、という内容のお話をされていた。僕自身、手のかかった料理は大好きだし作るのも苦ではないが、平日は時間がないため休日にまとめて作る、という解決策を取っていた。しかし最近はそれも難しくなりつつあったのでこの回を聴いて、ここに救いの道がある、、と感じた僕は忘れないようにTwitterをフォローした。

ただその放送以降もレシピに必要なものを揃えて作る、という時間もなかなか取れず、手癖で作れる料理を作る毎日が続いていた。そんな中、同棲中の彼女からからあげが食べたい、というお願いをされた。今こそ長谷川さんのレシピに頼る時だと思い、僕は再びTwitterで彼女のからあげのレシピを調べたのだった。

まずはこの通りに材料を揃ようと思ったのだが、そもそもの材料が少な買った。からあげというと、タレにしょうがやニンニクを入れるレシピをたくさん見るが、これはしょうゆだけ。しかも衣も片栗粉や小麦粉と、普通にキッチンにあるものだ。僕はキッチンで残り少なくなっていた片栗粉と小麦粉、そして鶏肉を買うだけで良かった。

レシピ通りに作り始めるとあっという間に準備ができた。僕はこのレシピの倍量で作ったので20~30分くらいかかったが、このレシピ通りの分量であればほんの10分〜15分くらいで準備でき、揚げるのも込みで30分くらいで完成するのではないだろうか。揚げている途中はキッチンにしょうゆのいい匂いと、パチパチという音が満ちて食べるのが待ち遠しかった。完成したからあげは時間がかかっていないはずなのに美味しく、そして安心できる味だった。僕も彼女も仕事の疲れをすっかり忘れてお腹いっぱい食べた。

作り終わって改めてこのレシピについて考えてみた。するとますますそのすごさに気づいた。このレシピでは作る過程だけではなく、準備、片付けの手間まで省かれているのだ。まずタレを揉むだけで染み込ませる点がすごい。前日から漬け込んだりしなくてもこれで十分に味が染み込むので、取り掛かりのハードルが一気に下がる。また染み込ませることでしょうゆだけで十分な美味しさが得られるため、薬味や調味料をいくつも用意する必要がなくなる。また味付け、衣付けは全てZiplocの中で済む。これにより終わった後の洗い物が劇的に減る。さらにZiplocを使うことで衣をつける工程でいくつもバットを広げたりするスペースもいらなくなるので、キッチンが狭くても作業に困らない。油は最小限でも火力を調整することでカリカリジューシーが得られ、片付けは簡単になる。
味付けなどで足し算をして美味しさを作るのではなく、準備や片付けの手間で引き算をして手軽さを得る。これこそが彼女のレシピの魅力、そして哲学であり、多くの人に支持される理由なのだと分かった。

今日作ったからあげは冷めてからでも美味しいということだから、明日以降食べるのも楽しみだ。今度はハンバーグも作ってみよう。きっと楽しい食卓になるはずだ。


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