コウモリの寓話

コウモリは、鳥の一族が優勢になると「私は鳥の仲間です。あなたたちと同じように羽を持っています。」と言い、獣の一族が優勢になると「私は獣の仲間です。ネズミのような灰色の毛皮と牙があります。」と言い、形勢が有利な方に加担しました。
 その後、鳥と獣は和解して争いが終わります。すると、何度も寝返ったコウモリはどちらの種族からも嫌われて仲間外れにされ、やがて暗い洞窟に身を潜めるようになりました。

動物たちはイナゴの大群を追い払おうと必死に戦いますが、奴らは自在に飛び回って攻撃をかわし、群を成して反撃してきます。膨大な数の敵を前にして、鳥も獣も手をこまねいていました。

 この様子を見ていたコウモリは、一計を案じます。
 そして、イナゴの大群に近づくと、こう耳打ちしました。
「明日の朝、鳥と獣が、君たちに総攻撃を仕掛けかけてくるよ。君たちはすばしっこいから逃げ切れるとは思うけど、たくさんの仲間が死ぬだろうな。」
 イナゴは、けげんそうな顔をして聞きました。
「お前はどうして、わざわざそんなことを教えに来たんだ。お前は鳥の仲間だろ?」
「いいや、ボクには灰色の毛皮と牙があるだろ。鳥じゃないよ。」
「だったら獣の仲間だろう?」
「いいや、ボクには羽があるだろ。獣じゃないよ。本当はね、ボクは君たちと同じ虫の仲間なのさ。だから、こうして助けに来たのさ。」

「いや、やっぱりボクは鳥でも獣でもないよ。コウモリはコウモリなのさ。」

何者でもないから“何か”できるのかもね。変化を促すのは「新人」か「新参者」のように。

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