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カウンセラー、すみれ組さんにスカウトされるの巻

0歳、1歳、2歳、3歳、4歳、5歳、
生まれてほんの数か月から数年しか過ごしていないけれど
彼らの毎日は濃密でスリリングです。
お砂場で泥だらけになっても、絵具で色とりどりになってしまったお顔も
いつも笑顔に彩られています。
美味しい時は、「おいしい!」とからだ全部で表現します。
悲しい時は、体の中から水分が全部なくなってしまうのではないかと思うくらい滝のような涙を流します。
怒りが爆発したときは、床にからだを投げ出して、ごろごろ転げ回ったりします。
彼らはいつでも<今ここ>に真剣です。
<今ここ>の一瞬一瞬をけして逃しません。
気もちを出し惜しみしたり、明日のことを考えて遊びもほどほどに、なんて考えもしないのです。
そんな彼らの姿を日々じーっと観察していたカウンセラーに、すべり台の1番上から男の子が声をかけてきました。
「ねえねえ、ようちえんに入りたいの?」

うらましいなあ、こんな風に<今ここ>をめいいっぱい味わえたらきっと幸せだろうなあという思いでいっぱいになっていた矢先の投げかけに、
カウンセラーは、意表を突かれてしまったのでした。
そして苦笑いしながら、なんとかこう答えました。

<うん。みんながとっても楽しそうだから、いいなあって思ってたの。>

返事を聞いた男の子と近くにいた数人の女の子までが、
「じゃあ、すみれ組さんに入りなよ」
「そうそう、すみれ組さんがいいよ、おいでよ」
口々に誘ってくれたのでした。

カウンセラーは、うれしいやら気恥ずかしいやら、
<え~、すみれ組さんがおすすめなの?入れたらいいなあ>
などと返事を返しました。
そのやりとりを聞いていたすみれ組の先生は、
「ええ~、なんでカウンセラーの先生を誘ってるの?」
と苦笑いしつつ、「もう、すみません。。。。笑」
と謝ってくれたのでした。

カウンセラーは、いえいえ大丈夫ととりなしながら
「いいなあ、お仕事が無かったら、すみれ組さんに入れるんだけどなあ」
と何割かは本音をにじませながら、うれしいお誘いを丁重にお断りしたのでした。

<今ここ>を深く濃く味わえること
子どもたちは、まさにこれの天才です。
その彼らの生命力のまぶしいほどの輝きに目を細めながら
自分自身がたとえ彼らの何十倍も長く生きて、年を重ねてきたとしても
<今ここ>の一瞬のきらめきや深みを感じ取れる人でありたいと
願ったのでした。
純粋で無垢でひたむきな こども心のようなものが いつのまにかどこかへ消え去ってしまわないように 
大事に大事にこころの引き出しにしまって、時には取り出して
限りあるいのちを全うしていこう
そんなふうにこころに誓った日となりました。

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