禁漁区の桜えびはなぜ小さいのか。
昨日は今年の春漁でヤママルは初めて少しだけ天日干しができました。
天日干しは秋漁では気温が低いのでなかなか作れません。
地域の特産品は地形や気候によって、脈々と受け継がれてきたものです。
絶やさぬようにしていきたいと思います。
そして今日も入札がありましたが落札はできませんでした(汗)
さて、今朝付の朝刊に、「禁漁破り」という記事が出ていました。
この日は大井川は出漁できず。
由比も出漁したものの、ハダカイワシばかり。
当日の写真ではありませんが「ハダカイワシばかり」とはこんな状態です。
その後に田子の浦沖で漁をしたということでした。
資源があればこのようなことにならなくて済んだのですが。
いつ打ち切りになっても誰もが諦めるような状況でした。
その「諦め」には人生を左右するような事も含まれていると感じています。
「春漁は禁漁にすべきだった」という意見もあります。至極説得力のあるご意見ではあります。
皆がわかっていることでした。
そうは言っても地域経済の観点からは「一切漁をしない」ということはまずもってあり得ないと思います。
昨今の社会的状況で観光は期待できないものの、漁を打ち切りにした年は観光はもとより広範囲で甚大な影響がありました。
だからこそ「資源回復と経済の両立」を目指しての漁でしたので、とにかく、このような報道があったことは残念です。
黒塗りの部分が禁漁区です。
今後どのような対策をとるのか、様々な観点から議論が行われることを期待しています。
いくら地場産業を続けていきたくても、一つの生き物が絶えてしまうのでは元も子もありません。(「資源」と言うのは人間から見た言い方なので、ここでは「生き物」とします)
また、法的拘束がない自主規制であっても、ここまで地域経済が痛みを共有しながら禁漁区を設定してきたことの効果を科学的に振り返るタイミングではないでしょうか。
とはいえ科学的な研究は最近になって
産学連携として始まったばかりですし、静岡市、静岡県の資源に対する取り組みももっと地域にわかりやすい形、傍聴しやすい形で行われても良いのではないかと思います。
閉ざされていてわかりにくいのです。
頑張って探せば情報が時々見つかります(笑)
色々なことの透明性が上がることは産地の信頼にも繋がります。
前向きに取り組んでいきたいです。
この春漁はここまで抱卵した桜えびはほとんど見られず、昨年度は6月、7月、もしくはそれ以降に産卵を迎えていますので、これから成長した桜えびが産卵をしていくのだろうと思います。
大井川は群れが薄く、混獲が非常に多い。
湾奥部は群れが魚群探知機で散見されていても、獲ってみると魚体が小さい。
というのがこの春漁の極めて少ない水揚げの内訳の印象です。
禁漁をしていたにもかかわらず、温存していたはずの駿河湾奥の桜えびの成長が、網をかけ続けてきた負荷がかかっているはずの海域よりも遅いのが気になります。
(これまでに水揚げされた禁漁区外の桜えびも全て同じ傾向です)
。。。子供の自由研究を手伝った際の、蒲原の川で採取したプランクトンです。
そしてこちらが蒲原の沿岸で採取したプランクトンです。
植物プランクトンに粒子がたくさん付着しています。
桜えびは大きくなったら魚の幼生を捕食しますが、生まれてからしばらくはプランクトンを餌にしています。
自由研究の顕微鏡をスマホで撮影したものですが川から海までの距離がさほど離れていないのにこんなに差があるんだなと思いました。
また、定置網の魚を捌いた際の、捕食されている魚類にも昨今では変動があります。桜えびだけが取り沙汰されていますが、他の魚にも獲れ高や獲れる海域の変動があるのです。
もしかしたら、保護のために禁漁にしていても、実際には漁獲圧以外の環境的な問題も併在しているのかもしれません。
ぜひ一項目でも多くの海のデータをモニタリングして、将来的に活用できるような形で蓄積し、またモニタリングの技術連携も発展をはかっていただきたいです。
上の写真は、資源状況の調査のために網をかける前に使用するタモです。
ローラーを使う網に比べるとごく僅かな範囲の探索になります。
資源には負荷は小さい一方で、得られる情報は少ないです。
資源を正確に把握するためには海中で広範囲にわたる「横方向の調査」も必要です。
限られた資源、そして私たちにとっては限られた漁期。
商業的な漁業と、調査のために網を入れることをうまく共存させる方法も、もっと積極的に考えていただけたらと思います。
厳しい時期こそ行政と漁業者のみなさんが双方向の連携をはかっていただきたいです。
駿河湾らしい品質に繋がる漁業のあり方を探す必要がありそうです。
休む選択肢もありますが、生活を背負っての判断を後押しする動きも必要です。
一切の漁獲をやめて、果たして資源が回復するのか。
なぜ駿河湾奥の桜えびは産卵数が落ち、産卵したあとの成長が遅いのか。
大井川方面は、漁場を休ませれば群れの密度が良好になるのか。
科学的根拠を求めることは大変難しいですが私たちの疑問に応えようという姿勢も見せていただきたいと願います。
そういった意味でも「春漁はやるべきではなかった」というコメントについては、今回の報道の中で2番目に残念な部分でした。
終漁の知らせがくるまでは、前向きに、姿勢を正して取り組むだけです。