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大柄
背が高いんだから、何着ても似合うんじゃないの?
オシャレな人にアドバイスを乞うと、たいていサラリとこう返ってくる。
そんなら、今着ているこの服も、似合っておりますんですか?という言葉をグッと飲み込む。
そう、私はイケてない。
せっかく背が高いんだから、大きな柄の物を着なさい。
表面積大きいんだから、着映えするよ。
と、母は良く言う。
そんな大きな柄の服は、日本ではラガーシャツって呼ぶんです~。
と思うのだが、たまに母はそんな服を私に見繕ってくれる。そしてそれは実際、評判がいい。
ある時、母と雑貨店にいた。
文具からキッチン雑貨まである大きな店で、洋服もおいてある。
普段は洋服コーナーはスルーであるが、なんとなく隅の方のハンガーラックに目が行った。
そこにはマリメッコのワンピースがかかっていた。かわいい。そして柄が大きい。これはイケる…?
鏡の前で自分に当ててみる。いいような気がする。
母に声をかけた。
「ねえねえ、見て!マリメッコのワンピース、どう?似合う?」
いいね、と言ってくれるかと思いきや、母は自分の欲しいものを物色するのに忙しいのか、ちらっと視線をよこしただけで
「もう、そんなの、やめときなさい」
と、やけに邪険である。あれ?ご推薦の大柄ものですけど?
「でもこれ、マリメッコだよ!可愛いよ?」と言ってみた。
マリメッコって何?と聞く母に、勢いづいて
「ほら!『かもめ食堂』で、もたいまさこが来てた服だよ!」
と説明する。これでちょっとはノッて来るか…?!
「ああ…そういえばそんなの着てたかねえ…」
うう~ん、だめか…。
「大柄だよ?ダメかな」
とキラーワードを出すも
「大柄っていっても、大柄ようがあるでしょ」
と返された。「大柄よう」とは何だ?もうちょっと粘ってみるか。
「でも、もたいまさこが着てたんだよ!藤原紀香が着てたっていうなら厚かましいって思うけど、もたいまさこだよ?!もたいまさこが着てたなら、私にも着れるんじゃないかな…?」
さあどうだ!もたいまさこ攻撃!
すると母は、困ったように小さくため息をつき、言った。
「あんたともたいまさこは、違う」
…はい、その通り。私ともたいまさこは、違います。
完璧に正しい、けれど最高に微妙なコメント…。
なぜだか打ちひしがれた気分で、私はそのワンピースを静かにハンガーラックに戻した。
あれから何度もこの店には行っているし、そこにマリメッコの服がいつもおいてあるのを知ってはいるが、以来、私は一度も手を出してはいない。
「大柄よう」って、何だ?
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