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1人で食べたい
暑くなると、スイーツの好みが俄然、和風になってくる。アイスクリームよりはかき氷、チョコレートよりは水羊羹。
私にはたまに食べ物のブームが来て、ネコのようにしばらく同じ物ばかり食べる習性がある。それを家族みんなに強要することもあるが一人でこっそり食べたいブームもある。その時々である。
今現在のブームは甘酒である。自作の甘酒を冷やして、一人冷蔵庫の前でクッとあおるのがたまらない。一応、家族にも勧めてみるのだが、夫も娘も「美味しいね」と言いつつも一口以上は飲まないので、自動的に私だけのブームとなってしまっている。
さて、古い日記を読んでいたら、10年ほど前に「水羊羹ブーム」が来ていたようである。しかも一人でこっそり食べたかった模様。娘が2歳の頃の話である。私もすっかり忘れていた一件であった。
2007年8月6日
今、水羊羹にハマっている。
娘が遊びに熱中している間に急いでお茶の準備をして、一人これをほおばると、自然に顔がにっこりしてしまう。
しかし今日は、いざという時になって
「プリンちょうだい!」
と、目ざとく我が水羊羹を見つけた娘がこう言ってきた。
あんた、目の前にクッキーあるやろ。それにこれはプリンじゃない。プリンなんてどこで覚えたん?
「プリンちょうだい!!」
しょ~がないなあ、一口だけやで。
「おいしいねえ」
おいしいよねえ。お母さんも食べよ。
「プリンちょうだい!」
ええっ?! 早っ!! お母さんも食べたいんやけど?
「おいしいねえ」
そうかそうか。じゃあ今度こそ。
「プリンちょうだい!」
いやだから、プリンじゃないって
「プリンちょうだい!プリンちょ~だい!!」
はいはい…どうぞ…
と、こんな感じでほとんど食べられてしまった。因みに今まで娘は本物の「プリン」をプリンだと分かって食べた事はないはず。なのになぜこれをプリンと思ったか? 確かにお皿に「プッチン」してたべていたのではあるが。
そして夜。さっきの事。
娘を夫と共に寝かしつけていたら、夫も一緒に寝てしまった。
私一人リビングに戻ってきて、今度こその水羊羹にトライ。はあ~、今日も一日お疲れさんだ。
片付けをしてお茶を入れ、羊羹を持ってさあテーブルに座ろうとしたら、部屋の入り口に、のっそり夫が立っていた。びっくりして息を呑む私に向かって、夫は寝ぼけた声で一言。
「…なんか…一人でいいもん食ってる…」
だ~か~ら~。
お願い、一人で食べさせて?
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