YouTuberたちの電磁的猥褻犯罪行為

最近のニュースから

昨日、「広瀬ゆうちゅーぶ」の名で活動するユーチューバー本名佐藤亜耶容疑者(28)が公然わいせつの疑いで逮捕された。朝日新聞6月28日によると、

アダルトサイトを通じてわいせつな行為を生中継したとして警視庁は、東京都江戸川区西小岩2丁目の広告業佐藤亜耶容疑者(28)を公然わいせつの疑いで逮捕し、28日発表した。佐藤容疑者は動画投稿サイト「ユーチューブ」で「広瀬ゆうちゅーぶ」として活動するユーチューバー。アダルトサイトでは、2016年3月以降、少なくとも7千万円を得ていたという。保安課によると、佐藤容疑者は2~3月、自宅で動画配信サイト「FC2ライブアダルト」を使い、わいせつな行為をしているところを生中継で配信し、サイト利用者に閲覧させた疑いがある。1分あたり39~600円を閲覧者に課金していたという。「お金もうけのためだった。顔をマスクで隠していたのでばれないと思った」と供述しているという。

このところインターネット動画配信サイトの内、アダルト系の配信においてモザイクなしの動画を投稿しお金儲けをしていたとして一般女性の逮捕が続いている。警察による取り締まり強化の一環だろう。氷山の一角に過ぎず、こうした「犯罪」が溢れていると思われる。

6月24日毎日新聞

インターネットの動画投稿サイト「FC2動画」に、自分の性器を撮影したわいせつな動画を投稿したとして、京都府警向日町署は24日、わいせつ電磁的記録媒体陳列の疑いで、長崎市琴海村松町、長崎県職員、福田美姫容疑者(22)を逮捕した。

6月26日産経新聞

福岡県警は26日までに、インターネットの動画投稿サイト「FC2ライブ」でわいせつな行為を中継したとして、公然わいせつの疑いで、福岡市中央区の会社役員、西田直人容疑者(42)と、同市南区の無職、岩淵雛容疑者(22)を逮捕した。県警によると、西田容疑者は「違法と思っていない」と容疑を否認、岩淵容疑者は認めている。2人の逮捕容疑は5月11日、中央区のマンション1室で、岩淵容疑者が下半身を露出するなどしたわいせつな映像を配信し、不特定多数の利用者に閲覧させた疑い。


条文の整理

現行の刑法は、わいせつ物等頒布罪について
第175条
1 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。

と定め、「電気通信の送信による頒布」もその範疇に含めている。一般に「わいせつ電磁的記録等送信頒布」と呼ぶ。平成23年に改正がなされ、新たに加わったのだ。

一般にサイバー刑法と呼ばれる「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」の中の一つがわいせつ物頒布罪の拡張だった。昨今のインターネットの爆発的普及は、個々人単位での配信を容易にし、その結果、雑誌社やテレビ局の様なプロを介在しなくとも世間にばらまくことが出来る様になった。この中に猥褻なものが含まれるのであれば取り締まりの対象とすべきなのだが、配信=送信行為自体を、以前の法律にいう「記録媒体その他の物」に読み込むのは確かに少し苦しい気もする。

法制審議会刑事法(ハイテク犯罪関係)部会

この法律改正の土台となった「法制審議会刑事法(ハイテク犯罪関係)部会第3回会議(平成15年5月15日開催)」の議事録から当時の議論を少し追ってみよう。非常に長い議論であり、何が送信で、何が頒布で、何が記録で、何がわいせつなのか、その定義付けの悩ましさを物語っている。
http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi_030515-1.html


● 質問を兼ねているのですが,第二の一の,わいせつな電磁的記録に係る記録媒体,この「わいせつな」というのは,記録媒体に係るのではなくて,電磁的記録に係るのでしょうか。というのは,二項が「わいせつな電磁的記録」というふうになっていて,先ほどのと結局絡むのですが,電磁的記録というのは,ある状態を表す用語で,その状態を表す用語を頒布するという概念が第二の一の後段では出てきて,第二の一の前段の方では「わいせつな電磁的記録に係る記録媒体」,こっちは媒体ですから物の概念の方に引きつけているのだと思うのですが。これは私どもも議論してみたのですが,わいせつというのは何なのだろうかという議論をして,情報がわいせつなのか,その情報をあるデータ化した,形式化したものがわいせつなのか。そうすると,文書とか図画とかも,文字づらがわいせつなのではなくて,文字づらから出てくるものというとまた変になるのですね,情報というか,それがわいせつなのだろうと。それを形式化したのが文字づらになっていて,それを紙に印刷したというふうになっているだけではないかというふうになってくると,もともと日本の刑法の「わいせつ」という概念の図画とか文書とかいうのも,実態は紙っぺらだとかそういうものがわいせつなのではなくて,このコンピュータの,今議論しているものと非常に似ているのではないか。そうすると,この際,電磁的記録というのがわいせつだということになってくると,これは,電磁的記録というよりは,データという形で,私たち,日本語でどう表現するか難しいのですが,そういうふうにして統一できないのかと。この物とですね。こんなことをやるとちょっと問題になるのかもしれませんが,そういう議論になりまして,とにかく第二の一の前段,後段を比べてみると,わいせつな物があり,わいせつな記録があるということの議論からいうと,わいせつに係るものとは何なのかということで少し悩んでしまったので,その辺は余り問題にならないのかというのがちょっとあるのですが,皆さんいかがでしょうかということで。冒頭の発言で申し訳ないのですが。
● いかかでしょうか。もし御意見がありましたら。
● ○○委員も御指摘のとおり,もともと現行法の「わいせつな文書」というのは,やはり,わいせつというのは中身で勝負をしているのだと思われますが,要綱で書いております「わいせつな電磁的記録に係る記録媒体」あるいは「わいせつな電磁的記録」も同じ意味で考えればいいと考えております。
 それと,形式的なことでありますが,第二の一の1行目の「わいせつな」は「電磁的記録に係る記録媒体」に係っていて,他方,後段の方は「わいせつな電磁的記録」です。ただ,「わいせつな」の意味は,今申し上げましたように内容の問題でございますので,そういうことで理解すればいいというように考えております。
● 先ほどの御指摘につきまして,ここは,わいせつ文書,図画と並んだ形で記録媒体というふうに言っておりますので,内容自体が直ちに可視的でないような電磁的記録に係る記録媒体であって,内容がわいせつなものということでございます。他方,中身はわいせつではないけれども,その記録媒体の表面とか形がそれでわいせつだということが仮にあるとすれば,「その他の物」という整理になろうかと考えております。
● 第二の一なのですが,もう一回確認したいのですが,一の方は,「わいせつな」は,「電磁的記録」ではなくて「電磁的記録に係る記録媒体」というふうに読むのだ,そういうふうに係るのだということですよね。
● はい。
● 今までの判決例の動きというか,いろいろな工夫があったわけですけれども,せっかくここで罪刑法定主義の絡みから電磁的記録を入れたわけですから,物,それから電磁的記録という形で規定されたら,この条約の趣旨にも合致するのではないかというふうに考えるのですけれども,あえて媒体なのだというふうに限定した理由というのはどういうふうに考えたらいいのでしょうか。
● 第二の一は前段と後段に分かれているわけでございますが,前段はあくまでも有体物グループで,後段は電磁的記録という,有体物ではないものを客体とするものという形で分けて整理をしているところでございます。
● もう一つは,文書,図画というのも,紙なりフィルムなり,それも一種の記録媒体でございますので,その内容としてのわいせつということでございます。それと同様に,記録の方法と,それに関する記録媒体ということで,これはこれで並んだ,可視的なもので記録媒体という,方法と媒体ということで,記録媒体自体はいろいろな形態は現にあるわけでございますので,並ぶことには,それはそれで一つ理由はあるのかなと思っております。
● 行為態様のことが気になったからなのです,その書きぶりで。前段については,物については,公然陳列と頒布ということになっていますけれども,電磁的方法で電磁的な記録を動かした場合には頒布だけですよね。公然陳列は入っていないのですが。例えばわいせつ画像を不特定多数にバッとばらまいたという形態は頒布という概念に入れる……。つまり,前段と後段で頒布の概念は違うのですか。
● 前段で言っておりますのは,有体物という形でとらえられますものの頒布ということでございます。公然陳列もそういった物の公然陳列ということで,前段は一貫しております。なお,後段部分につきましては,物と言わずに記録の頒布ということでございまして,これは媒体上に記録された状態のものを相手方の支配下に出現せしめるといいますか,そういった意味として理解されているのではないかと思います。
● 頒布又は公然陳列という形で後段も定めれば,頒布概念は前段と後段と同じになるというふうに思うのですが,その必要はない……。
● そういう御趣旨でございましたら,電磁的記録というのは,あくまでも記録媒体を前提にしているものでございますので,電磁的記録の公然陳列というのは,結局それが記録されている記録媒体の公然陳列にほかならないわけで,その意味で,後段の方は要らないといいますか,前段で規定され尽くしているということになると考えております。
● ただ,公然陳列についても二つ概念がありますよね。外から見て媒体自体がわいせつなものを公然陳列するのと,それから,一定の処理方法を加えて,中にある情報を記録したデータを一定の形で外に出して,また情報,つまり観念にして表示する,この二つを公然陳列には含んでいるわけでしょう。だから,おっしゃられることだとすると,それは,後段そのものが要らなくなってしまうんじゃないですか。
● 私も同じことなのですけれども,従来は公然陳列でやっていたわけですよね,わいせつな電磁的記録を送るのは。後段を作られたということは,それは頒布で処理されるということだと。あるいは,記録媒体の公然陳列というのはもうなくなったのかなという感じを受けたのですが,間違っていますか。
● 後段を設けるのがここの改正の一番大きなポイントですが,それは,有体物の移転を伴わないといいますか,そういう形での頒布行為というのは現行法上で処罰できるのかどうか疑義がある。具体的には,電子メールでわいせつな画像を不特定多数の者に送るという行為は,有体物の移転を伴わないので,それが現行法に入るのかどうか疑義があるということで,それを処罰するということを明確にするために設けたものでございます。
 それから,先生がおっしゃったような御疑問が生じるので,そこが不明確にならないように,殊更,前段の方に「電磁的記録に係る記録媒体」を入れて,これの公然陳列は現行どおり前段に当たるということを明確にしようとしているということでございます。
● 確認なのですが,例えばダイヤルQ2で,ファックスにつなぎまして,ファックスにわいせつな紙を入れまして,それにアクセスしてきた者がそのファックスを受け取るというようなものがあるときに,これは第二の一の「その他の記録」に当たりますね。したがって,これを頒布したということになると。それからもう一つは,公然陳列の方は,もとの,オリジナルの紙又はファックスの機械を公然陳列したということになりますね。この二つが成立し得るということでいいのでしょうか。
 つまり,ファックスの場合は,公然陳列で考えますと,その物自体ですから,ファックスの機械になるのか,もとの紙なのか知りませんが,そういうものですね。それは,恐らく第二の一のところの図画かその他の物に当たると思うのですが,それとともに,何人もの人に頒布しているわけですから,頒布に当たりますね。その場合は,後段の方の,電気通信の送信によってその他の記録を頒布したということになりますね。この両者が成立するということでいいのでしょうか。
● 公然陳列は,不特定多数の者が内容を閲覧できる状態に置いた段階で成立するので,まずそこで公然陳列が成立して,現実に不特定多数の人にファックスでわいせつな内容のものを送って,不特定多数の者の受信機のところでそれが出てくるような形で不特定多数の者に送ったら,送った行為の積み重ねで後段の罪が成立するという理解で考えております。
● したがって,今までの,手元にある媒体そのものを陳列しているというところは変わらないので,その他の記録の解釈についても,今のように,ファックスの場合は,送られたものはその他の記録に当たるけれども,手元にあるものは,従来の図画ないしその他の記録あるいは文書でというお考えですか。
● 公然陳列については,現行法の解釈は一切変えないという前提で考えております。
● 分かりました。
● 結局,頒布概念を広げるか,つまり二項を作って新しい内容を含んでいるよ,占有移転を含まないものも含むんだよというふうにするか,逆に,公然陳列の対象を,媒体ではなくて電磁的記録自体を,つまりデータを明らかに--電磁的記録の公然陳列という概念をとっていくかということで,二つの方向がとれるのではないかと思うのです。
● ウェブページでわいせつ画像を見せるようなパターンを前段の公然陳列から後段の方の公然陳列に持っていくとすると,前段の公然陳列は,そういう形ではない,有体物の公然陳列だけとなるという,そういう分け方をすることになると思いますが,それに合理性があるのかという疑問があろうかと思います。
● ただ,むしろ立法の沿革を見ると,本来外形的なわいせつ物について規制をして,それに今度はあぶり出しが出て,何らかの操作,そしてビデオ,そして電気通信と,こういうふうに展開することによって概念が帰着化してきたという経緯もあるわけですから,逆に,その物についての規定と,無形的なデータなり電磁的情報に関する規定を二つ書き分ける方が,私どもが勉強した限りでは分かりやすいというふうには思うのですけれども。
 それから,それによって,適条が違いますので,概念が違うというところもはっきりするわけですけれども,第二の一については,これは相変わらず物についての今までの議論を対象にしていますので,公然陳列は物についてだけ,前段の頒布は占有移転,後段になるとそれが含まれないと。公然陳列はどうなったかというと,一項で処理される。本当は物の内容のデータを陳列するわけですけれども,物を陳列したということで。
 今まで裁判例の中で争われたことについては,これも決断を示すのかもしれませんけれども,せっかく条文をこうやって新しく作るのであれば,むしろストレートに,今までの判決なり--川崎支部でしたか,裁判官は,電磁的記録自体がわいせつ物だというふうに言ったケースがあったと思うのですけれども,そうした形でストレートに電磁的記録についてのわいせつ性を認める形で処理をされる方が分かりやすいのではないかとは思うのですけれども。
● ほかにいかがでしょうか。御意見を賜りたいと思いますが。
● 私の方にも誤解があったのかもしれませんが。
 そうしますと,電磁的記録については,公然陳列がいわば未遂的な,要するにアクセス可能な状態にしておくのが公然陳列で,配るのは頒布だという話ですが,そうであれば,結局,後段は法定刑も同じですし,実質的に置く意味がどれだけあるのかというのがよく分からない感じがします。
● 公然陳列を伴わない頒布行為というのも当然あり得ると思われます。
● 電子メールに添付してファイルを送りつけるというのは「陳列」ではないと思うのです。もしそこまでわいせつ物陳列罪でとらえられるということですと,新たな規定を置く意味はないのかもしれませんけれども。例えばウェブページを開設して,誰からでもアクセスできるような形で,わいせつな画像を載せていたというのであれば,陳列ですよね。ですけれども,そういう形ではなくて,メールに添付して送りつけるということになりますと,「陳列」では,とらえられないのではないかという感じがするのですけれども。
● それはいかがですか。
 今度の案によりますと,ただいまの○○委員の例はどうなりますか。
● 後段の罪の典型例です。
● この頒布という概念が前段と後段で違うわけですよね。後段の頒布は,我々が普通考えている頒布とは違う。我々が考えていると言うと変な言い方ですけれども,頒布というのはやはり,物があちらへ行くという,そういうふうに普通は考えられるわけで。電気通信事業法では電気通信という言葉を使っていて,「有線,無線その他の電磁的方式により,符号,音響又は影像を送り,伝え,又は受けることをいう。」という定義になっているのですね,電気通信という言葉で。こういうものが利用できないのかなと。電磁的記録というような場合には,既存の「頒布」という言葉でない用語を何か作った方が実際は分かりやすいのではないか。一般国民から見て,電磁的記録を頒布するという,これは,今までの刑法はそうなんだといえばそうかもしれませんけれども,この際,せっかくこういうのを作るのだったら,もう少し,電気通信事業法とか,ほかでどういうことを言っているかも見ながら,言葉の統一的な,国民に分かりやすい用語を作った方が私はいいのではないかと。そうすると,前段と後段がそれなりに生きてくるというふうに思われるのですけれども。
● 今の○○委員の御意見,全くごもっともな部分もあると思うのですけれども,ただ,この際に考えなければいけないのは,頒布というのは,ただ単に一回的に,一個的に相手方にその物を渡すという行為ではございませんので,不特定多数の者に渡す意思をもって渡すというのが頒布という言葉でございますから,第二の一の後段の方についてもそういう限定がかかるということになろうかというふうに思います。ただ単に「送信」などといたしますと,その限定が外れるという,そういう実際上の違いはあるというように思います。今の骨子は,後段についても従来どおりの限定をかけた形で,ただ,渡し方が違うというものまで捕捉しようというものだというふうに私は理解しているところですが。
● 今の点は私どもが議論しているときも当然出た議論でありまして,ただ,「頒布」という日本語で電磁的記録を送るということを表すということは,これはそう単純ではないのではないか。だから,そもそも,不特定多数の者に送るにしても,もっと国民に分かりやすい用語をこの際使った方がいい。前段と後段で同じ言葉を使って少し分かりにくくしているというより,私は,やはり,前段なら前段,後段なら後段で新しい言葉を作った方がいいと思いますね。
● いかがでしょうか。大体,このような行為について,これを規制するという点では皆さん同意見のようでございまして,あとは言葉の問題のように感じたのですが。
 「頒布」という概念につきまして,多分当初の「頒布」という概念は,物を不特定多数の者に配布するということだったと思いますけれども,それが次第にわいせつ概念において広がってきたのだろうと思います。そういう意味で,この言葉をそのまま使うのも一つの手か,あるいは,新しい時代に即した用語を使うというのも一つの考え方かとは思いますが,この問題は,これから検討していただくことにしたいと思います。
● 例えば,○○委員の言ったことを具体化するとすると,この条項を「わいせつな電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に送信した者も同様とする」というような形にすれば,送信というのは確かに「不特定又は多数」ということが入っていませんけれども,それを条文の中に入れてしまえば,非常に明確になって,それこそ卑近な例ですけれども,自分の恋人にわいせつな画像を送信した場合もなるのかとか,みんな心配になりますよね。それは違うんだよということも……。一対一の送信は入らないと,前回,○○幹事もおっしゃっていましたけれども,今これだけ写メールとかいって写真メールで送っていて,あの中には,わいせつというか,ラブリーなものですね,そういうものが当然含まれているはずで,一対一の通信の中でそういうものをやりとりするものは含まれていないということをはっきり条文に書いた方が,私は,刑法の保障機能というか,処罰の明確化という意味からもいいと思うのですけれども。
● 今の点に関連しまして。今回,コンピュータ犯罪との関連でこれを新設しようということですから,できるだけ用語も新しくした方が国民にとっては分かりやすいだろうという気がいたします。前段と後段で同じ言葉が違って理解されるというのは,立法の在り方という点でやはり誤解を招くおそれがあるのではないかと危ぐされるのです。概念の相対性ということで言えば別にどうってことないのですが,やはり誰が見てもすぐ分かるような文言を工夫して,新たなものを新設するについての目的にかなうような文言をこれから検討された方がいいのではないかと思っております。
● そういう考え方もあろうかとは思うのですが,先ほどの○○委員の御意見は,「頒布」という言葉を使うかどうかという問題ではないと思うのです。「頒布」という言葉自体は,物の頒布の場合も,さっき○○委員がおっしゃったように,特定の人との間で一対一でやりとりするということではない。「布」という語は,広くばらまくことを言うわけで,電気通信の送信によって頒布するということであれば,さっきおっしゃったようなところはカバーされていないことは,その言葉自体の意味としてはっきりしていると思うのです。ただ,「頒布」という言葉がややコケむしたような言葉なので,ちょっとコンピュータ通信のような新たな事柄にはそぐわないのではないか,若い人には分からないのではないか,といった御意見としては○○委員の言われたことも分かるのですけれども。
● 内容は,私は,今提案されているものと同じことを言ったつもりなのです。
● 先ほどおっしゃったのは「頒布」という言葉を使うかどうかの問題ではなく,限定を置いているのか置いていないかという問題だろうと思うのです。「頒布」という言葉を使うかどうかは,○○委員がおっしゃったような意味では問題とはなり得ると思うのですけれども,ちょっと論点がずれているのではないかということです。
● ほかにいかがでしょうか。
● 簡単な事例で解釈を教えていただきたいのですが。
 骨子の第二の一の前段が,対象が有体物,後段が記録ということでございますけれども,例えばハードディスクにわいせつなデータがありまして,それを直接ファックスで相手方に送る場合に,ファックスで送るときには紙にプリントアウトしませんけれども,受信者の手元でプリントアウトされて出てきたような場合というのは,行為の対象が有体物かデータであるかということで一項の前段,後段を適用するということでしょうか。どちらにしても適用されるとは思いますけれども,ちょっと教えていただければと思います。
● ハードディスクにわいせつな画像があって,コンピュータ通信のファックスで不特定多数の人のファックスの受信機に記録を出させるという場合は,後段であります。誰でもアクセスできるようにしていたら,その段階で公然陳列になる場合がありますが,少なくとも前段の物の頒布にはならないという整理で考えております。
● 重ねてで申し訳ないですけれども,先ほど○○委員のおっしゃったような事例,私が申し上げたのに対しておっしゃったような事例,あるいは,今,○○幹事のおっしゃったようなことですが,古典的な議論とつなぎ合わせれば,そういう一方的にわいせつな情報を送りつけるというような行為は174条の類型ではないか。174条と175条について,昔から,古典的な事例で議論がありますが,174条の類型に当たるんじゃないかという議論も可能かもしれない。
● 公然わいせつとわいせつ物の公然陳列との仕分けをどうするかというところであろうかと思われますが,今回の要綱(骨子)として提案されているところは,できるだけ今の概念を崩さない形で同等の結果なり行為というものを表したいということで書いているものでございます。先ほど,記録を送信するとおっしゃったのですが,記録自体は媒体上に記録された状態ということでございますので,記録に係る電磁化された情報を送信するというふうなことかもしれませんが,情報の送信そのものをもって,そういう情報をばらまくことが頒布罪という整理も一方ではございますけれども,そうなりますと,今お話ございましたような公然わいせつと公然陳列との区別をどのようにしていくのかという問題もこれあり,結局,ここでは,これまであった頒布と同じような結果を,物の移転はないものの,相手方に生じさせる,不特定又は多数の者にそういった記録状態を生じさせるということを「頒布」という言葉で表そうとしていると。したがって,頒布という意味合いの中には,相手方が不特定又は多数であること,それから,ここでも記録を頒布と言っておりますから,相手方に,ある程度永続的な状態での記録が生じて,それを支配・管理している状態を出現せしめておると。その意味で,物が移動するかしないかだけの差ではないかと。したがって,いろいろな要素としまして,頒布という言葉を使った方が,これまでの概念からも理解がむしろしやすいのではなかろうかという整理でございます。
● いかがでしょうか。ただいまのような説明で。
● ○○委員の言われたこととの関連なのですが,いったんデジカメなどで映像を撮って,それをメールで送信する場合は175条に,この新しいものに当たると思うのですが,これを例えば,技術的にどうかは知りませんが,ライブでこれを中継するというか,不特定多数の者に送りつけるというようなことがあれば,これは174条ということでよろしいでしょうか。
● 174条と175条の法定刑の違いを説明するとすれば,有体物に化体した形で存在させるかどうかというところに大きな理由を求めるべきであろうと考えていますが,そうすると,ライブで送る場合,送信する方にもライブ状態でしかないし,受け取る方のところも瞬間に消える情報しかないというときは,174条類型だと整理すべき問題だと考えられるかなと思っております。
● ということは,ライブで送られている場合は174条で,仮にそれをビデオに撮って全く同じ映像を送ったというときは,174条にも当たるし,175条,新しい条文の前段にも後段にも全部に当たるということに……。
● ライブで非常にわいせつな行為が流されておりましたら,今も公然わいせつ罪だと思われるのですが,現にやっておらないで,それを録画しているもの,記録された状態のものを不特定多数の者に流しておりましたら,今もやはり公然陳列なのではなかろうかというふうに思われます
● 前段にも後段にも当たり得る……。
● 今の件なのですが,私も今の御説明に賛成なのです。というのは,ライブであれば,その行為自体がわいせつ行為として行われているわけですよね。ところが,いったん記録にとられますと,これは,行為それ自体は終わっていて,中の情報自体が画像として伝えられていったりする,こういうことになりますから,行為それ自体はもう終わっているのですよね。という理解で,私は今の分け方が可能だ,理論的にも可能だと思います。
● アナログのときと,例えば今の中継ですか,例えば株主総会なんかもそうなってきていますが,違うのですよね。いずれにしても,電波に乗せてデジタル通信で送るということは,どこかに記録して,一回何らかの形で操作したものを送るわけですよ。だから,記録化されたものかそうでないかというのは,ライブであっても,それは記録化されたものを送るのです。それじゃなくて,そのまま光の状態を,レンズを通して,そのレンズの状態をそのまま送っている,それとそうじゃないものを区別できるかというと,それは概念的にはあるでしょうけれども,今はそうはしないと思います。そうすると,記録されたものかどうかという分け方というのは,どうなのでしょうか。
● これは,現行法の174条と175条の区別で,現にある問題でありまして,これについてどう説明するのかというのは,多分,ここにおられる委員・幹事の先生方でも多少の幅をもって理解されているのではないかと思います。それと同じような区別が,この要綱(骨子)の第二が立法化されれば,新175条として作られるわけでございますけれども,同じ問題が引き続いてあるということとして理解しておけば足りるのではないでしょうか。ここで,こういうものが174条だ,これが175条であるということを確定する必要は何ら存在しないんじゃないかというふうに思われますが。
● 骨子第二の関係につきましては,大体問題点は出てきたように思いますので,これで一応打ち切りまして,第一の点について補足的に,もしございましたら。
● 第二と第一とちょっと関係するのでございますが,先ほども問題にいたしましたが,「所持」,「保管」という言葉でございます。第二の方は,「所持」,「保管」というのが両方使われておるわけでございます。ところが,第一の方では「保管」が使われておる。先ほど,保管というのは広いのだという御説明がございました。それだと,第二の方でも「保管」だけにすればよいのではないかという問題が生じるわけですが,恐らくそこでカバーし切れないようなものを「所持」と考えているのではないかというふうに思われます。そうすると,第一の方でも同じような問題がないのだろうかというのが翻って気になってくるところでございまして,第一と第二と両方見たときに,その点,何か捕捉されるべきものが捕捉されずに落ちているということになりはしないかというのが若干気になるところでありまして,その点についてのお考えをお示しいただければというふうに思います。
(中略)
● 一つだけ。確認的な質問でしかないのですが,先ほどの議論の中で,第二の一の後段の「頒布」という言葉で大分議論がありましたので,こういう理解でよろしいかということをお聞きしたいのですが。
 「送信」という実態をとらえた言葉にしたらどうかという御意見があったのですが,記録の送信だけではなくて,先ほどの説明によりますと,その他の記録というのは,ファックスで打ち出すという方法によるのも含むのだ,こういうことだったと思うのですが,送るのは記録なのですけれども,受け取る方はファックスという,これは多分紙媒体なのでしょうけれども,不特定多数の人の機械でサッと出てくるという事態を想定しますと,これは送信というよりも,送信をして打ち出すというところまで含むわけですね。あるいは,紙媒体で,ファックスという形で手元に届くということまでも含めた頒布ということなのではなかろうか,こう理解したのです。そうしますと,必ずしもこの「頒布」という言葉を,不特定多数の人に送信するというふうには読みかえられないことになるのではないか。そういう形態を考えると。したがって,後段の場合は,情報それ自体が伝わる場合もあるし,ファックスを使って,紙媒体でもって結局のところ手元に届くという場合も両方含む,そういう頒布だということになると,配るものがどうかということによって自然と頒布の意味は違ってくるというふうに理解しておけばいいのかな,こういうふうにお聞きしたのですが,そういう理解でよろしいかどうか確認したいということです。
● 情報を不特定多数の者に送るだけで,どこにも有体物にわいせつな情報が化体されない状態では,175条にはならないという理解に立っております。相手方,不特定多数の人のところに有体物に化体された形,つまり記録ができ上がらなければならないということで,情報を不特定多数の人に送っても,有体物に化体された状態,すなわち記録がない場合は後段ではとらえないという整理で考えています。
● わいせつな電磁的記録を送りつけるということで,後段は成立しますね。
● 電磁的記録の場合は,そうなります。
● その場合も頒布したことになるわけですね。
● はい。
● その場合もなるし,また,受信機の方でファックス機能を持っていて,ファックスという形で,多分紙でしょうけれども,紙で出てくる場合も後段ですね。送るものが記録ですから。これは両方含めた頒布概念だろうと考えますと,それは先ほどのように,記録を送信したというだけではなくて,その他の記録の頒布も含んでいるので,そういう形態も含むとすれば,これはいろいろあるということなので,要するに送られている物によって頒布形態がおのずと違ってくるという,頒布の現象がいろいろ違ってくると。その限度において前段の「頒布」と言葉は違ってくることはあるけれども,それは送る物体が違うわけですから,情報であったり,あるいは情報が紙になったりするわけですから,おのずと頒布という言葉が違ってくるというふうに理解をして,これを必ずしも「送信」という言葉に置きかえる,不特定多数の限定のついた「送信」というものに置きかえれば同じ意味になるとはならないのではないか,そういう意味ですけれども。
● 今のは,ファックスの場合に,必ずしも紙に打ち出さなくても構わないのではないですか。紙を電気に変えて相手方に送り,それをまた同じ紙に戻すというわけではないので,紙に書かれた内容が電気的な信号として送られて,受け手の方の管理下に届けば,それで成立しているように思うのですが。その意味で,電磁的記録の形のものを送ったのと同じではないか。紙に打ち出さないで,コンピュータにためるというタイプのファックス通信もあるわけですので。
● それは電磁的記録の頒布じゃないかと思うのですよ。だから,その他の記録の頒布はどういう場合かという先ほどの質問に対して,○○幹事の方から,それはファックスの場合もあるのだというお答えだったので,それも含めた頒布概念を考えるといろいろあるなということではなかろうかということです。
● その場合も,要するに相手方のコンピュータないし機械に届けば成立しているのではないでしょうか。
● もう少し整理していただいて,次回につなぎたいと思います。

最高裁判例(H26/11/25)

その後、わいせつ電磁的記録等送信頒布についてはいくつかの判例が出ている。多くのアダルト動画は海外のサーバーを経由して行う。国内でダウンロードをしただけでこの罪に問えるのか。
平成26年11月25日最高裁判例事案は以下の様に言う。ダウンロードは送信に当たっての契機に過ぎない、という論理である。

(判決文)
原判決及びその是認する第1審判決の認定並びに記録によれば,(1)日本在住の被告人は,日本及びアメリカ合衆国在住の共犯者らとともに,日本国内で作成したわいせつな動画等のデータファイルをアメリカ合衆国在住の共犯者らの下に送り,同人らにおいて同国内に設置されたサーバコンピュータに同データファイルを記録,保存し,日本人を中心とした不特定かつ多数の顧客にインターネットを介した操作をさせて同データファイルをダウンロードさせる方法によって有料配信する日本語のウェブサイトを運営していたところ,平成23年7月及び同年12月,日本国内の顧客が同配信サイトを利用してわいせつな動画等のデータファイルをダウンロードして同国内に設置されたパーソナルコンピュータに記録,保存し,(2)被告人らは,平成24年5月,前記有料配信に備えてのバックアップ等のために,東京都内の事務所において,DVDやハードディスクにわいせつな動画等のデータファイルを保管したというのである。
2 所論は,サーバコンピュータから顧客のパーソナルコンピュータへのデータの転送は,データをダウンロードして受信する顧客の行為によるものであって,被告人らの頒布行為に当たらず,また,被告人らの行為といえる前記配信サイトの開設,運用は日本国外でされているため,被告人らは,刑法1条1項にいう「日本国内において罪を犯した」者に当たらないから,被告人にわいせつ電磁的記録等送信頒布罪は成立せず,したがって,わいせつな動画等のデータファイルの保管も日本国内における頒布の目的でされたものとはいえないから,わいせつ電磁的記録有償頒布目的保管罪も成立しないという。
3 そこで検討するに,刑法175条1項後段にいう「頒布」とは,不特定又は多数の者の記録媒体上に電磁的記録その他の記録を存在するに至らしめることをいうと解される。そして,前記の事実関係によれば,被告人らが運営する前記配信サイトには,インターネットを介したダウンロード操作に応じて自動的にデータを送信する機能が備え付けられていたのであって,顧客による操作は被告人らが意図していた送信の契機となるものにすぎず,被告人らは,これに応じてサーバコンピュータから顧客のパーソナルコンピュータへデータを送信したというべきである。したがって,不特定の者である顧客によるダウンロード操作を契機とするものであっても,その操作に応じて自動的にデータを送信する機能を備えた配信サイトを利用して送信する方法によってわいせつな動画等のデータファイルを当該顧客のパーソナルコンピュータ等の記録媒体上に記録,保存させることは,刑法175条1項後段にいうわいせつな電磁的記録の「頒布」に当たる。また,前記の事実関係の下では,被告人らが,同項後段の罪を日本国内において犯した者に当たることも,同条2項所定の目的を有していたことも明らかである。

最高裁判例(H13/7/16)

ところで10年前に既に似た様な判例が存在している。当時はまだ法令さえ変わっていなかった時代である。先の部会の議論に言う「判例の工夫」の一つだ。

(判決文)
原判決の認定によると,被告人は,自ら開設し,運営していたいわゆるパソコンネットのホストコンピュータのハードディスクにわいせつな画像データを記憶,蔵置させ,それにより,不特定多数の会員が,自己のパソコンを操作して,電話回線を通じ,ホストコンピュータのハードディスクにアクセスして,そのわいせつな画像データをダウンロードし,画像表示ソフトを使用してパソコン画面にわいせつな画像として顕現させ,これを閲覧することができる状態を設定したというのである。まず,被告人がわいせつな画像データを記憶,蔵置させたホストコンピュータのハードディスクは,刑法175条が定めるわいせつ物に当たるというべきであるから,これと同旨の原判決の判断は正当である。
次に,同条が定めるわいせつ物を「公然と陳列した」とは,その物のわいせつな内容を不特定又は多数の者が認識できる状態に置くことをいい,その物のわいせつな内容を特段の行為を要することなく直ちに認識できる状態にするまでのことは必ずしも要しないものと解される。被告人が開設し,運営していたパソコンネットにおいて,そのホストコンピュータのハードディスクに記憶,蔵置させたわいせつな画像データを再生して現実に閲覧するためには,会員が,自己のパソコンを使用して,ホストコンピュータのハードディスクから画像データをダウンロードした上,画像表示ソフトを使用して,画像を再生閲覧する操作が必要であるが,そのような操作は,ホストコンピュータのハードディスクに記憶,蔵置された画像データを再生閲覧するために通常必要とされる簡単な操作にすぎず,会員は,比較的容易にわいせつな画像を再生閲覧することが可能であった。そうすると,被告人の行為は,ホストコンピュータのハードディスクに記憶,蔵置された画像データを不特定多数の者が認識できる状態に置いたものというべきであり,わいせつ物を「公然と陳列した」ことに当たると解されるから,これと同旨の原判決の判断は是認することができる。

児童ポルノの「公然陳列」(H24/7/9)

通称を児童ポルノ法と呼ばれる法律は正しくは「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」と呼ぶ。その7条に禁止規定が並び、公然陳列は今の7号にある。

第七条 自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。自己の性的好奇心を満たす目的で、第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管した者(自己の意思に基づいて保管するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)も、同様とする。
2 児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
3 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4 前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
5 前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
6 児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
7 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
8 第六項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。

事例は、児童ポルノのURLを投稿しただけでこの公然陳列に当たるのか、と言うもので、最高裁はこれを当たると認めたが、大橋正春・寺田逸郎両裁判官が反対意見としてこれを痛烈に批判した。

(反対意見)
原判決の認定によると,被告人は,共犯者と共謀の上,共犯者がインターネット上に開設したウェブページに,第三者が他のウェブページに掲載して公然陳列した児童ポルノのURLを,その「bbs」部分を改変した上で掲載したものであるというのである。
原判決は,被告人の行為は,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)7条4項の「公然と陳列した」に該当するとして,児童ポルノ公然陳列罪の成立を認めた。 刑法175条にいうわいせつ物を「公然と陳列した」とは,その物のわいせつな内容を不特定又は多数の者が認識できる状態に置くことをいい,その物のわいせつな内容を特段の行為を要することなく直ちに認識できる状態にするまでのことは必ずしも要しないとするのが当審の判例(最高裁平成11年(あ)第1221号同13年7月16日第三小法廷決定・刑集55巻5号317頁)であり,その趣旨は,児童ポルノ法7条4項の「公然と陳列した」にも該当するものである。
しかし,「公然と陳列した」とされるためには,既に第三者によって公然陳列されている児童ポルノの所在場所の情報を単に情報として示すだけでは不十分であり,当該児童ポルノ自体を不特定又は多数の者が認識できるようにする行為が必要で,この理は,所在場所についての情報が雑誌等又は塀に掲示されたポスター等で示される場合に限らず,インターネット上のウェブページにおいてなされる場合にも等しく妥当する。ウェブページ上で児童ポルノが掲載されたウェブサイトのURL情報が示された場合には,利用者が当該ウェブページの閲覧のために立ち上げたブラウザソフトのアドレスバーにURL情報を入力して当該児童ポルノを閲覧することが可能となり,そのために特段複雑困難な操作を経る必要がないといえるが,このことは,パソコンで立ち上げたブラウザソフトに雑誌等で示されたURL情報を入力して閲覧する場合においても同様であり,両者の間に特段の違いがあるものではない。
平成13年決定の判旨の後段部分は,当該事件の内容から明らかなように,被告人自身が開設・運営していたパソコンネット上において,そのホストコンピュータに記憶,蔵置させた画像データの閲覧について,再生閲覧のために通常必要とされる簡単な操作に関し述べるものであり,本件のように,被告人によって示されたURL情報を使って閲覧者が改めて画像データが掲載された第三者のウェブサイトにアクセスする作業を必要とする場合まで対象とするものではないと解される。 そうすると,本件について被告人の行為は児童ポルノ法7条4項の「公然と陳列した」には当たらず,公然陳列罪が成立するとした原判決には法令の違反があり,これが判決に影響を及ぼすことが明らかであり,原判決はこれを破棄しなければ著しく正義に反するものと認められるから,刑訴法411条1号により原判決を破棄し,本件については幇助罪が成立する余地もあることから,同法413条本文により,幇助罪の成否について更に審理を尽くさせるため,本件を原審である大阪高等
裁判所に差し戻すべきものと考える。

なお,被告人の行為は社会的には厳しく非難されるべきものであり,また,新たな法益侵害の危険性を生じさせるものであるという原判決の指摘も理解できないではない。しかし,そのことを強調し,URL情報を単に情報として示した行為も,「公然と陳列した」に含まれると解することは,刑罰法規の解釈として罪刑法定主義の原則をあまりにも踏み外すもので,許されるものではなく看過できない。被告人の行為については児童ポルノ公然陳列罪を助長するものとして幇助犯の成立が考えられるのであり,その余地につき検討すべきであって,あえて無理な法律解釈をして正犯として処罰することはないと考えられる。

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