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連番トリテを追及して制作した『たたリテ』『トラットリッテ』

この記事は、『Trick-taking games Advent Calendar 2022』15日目として書いた記事です。

はじめに。本来12月24日に頒布する予定だった『トラットリッテ』に焦点を当てて書く予定でしたが、私の体調不良でイベントへの出展を見送る結果になってしまいました・・・そのため、記事の内容を一部変更し、『トラットリッテ』の前身となった『たたリテ』の方により焦点を当てて書いています。

◆まずは自己紹介

 初めましての方が大多数だと思いますので、まずは自己紹介から。北海道のボードゲーム制作サークル『しずくみち』のこみちと申します。よろしくお願いします。
 私にとってトリテはとても感慨深く、2020年にサークル活動を始めて2年ちょっとの中で、一番考えたり調べたりしたジャンルであり、好きと苦手が極端に二転三転したジャンルです。無論今は好きなジャンルです。

◆”連番”トリテとは

 ここでいう連番トリテとは『ヤギ戦争』や『ボトルインプ』のように、
 ①カードの中に同じ数字がない
 ②数字が途切れずに続いている
 の2つの条件を満たすものとします。もっとも私は、この2つの条件を満たすものは上記の2つと『ヤギの愛』を含めた3つしか知りません。さらにスートの概念があるものとなると『ボトルインプ』だけになってしまいます。他にもあればぜひ教えてください。

◆連番トリテを作ろうと思った理由

 トリテは好き嫌いがはっきり分かれるジャンルと耳にすることが間々ありますが、個人的に好きなジャンルに落ち着いたトリテをもっと手軽に遊べたらいいなと思いました。
 では、どうすれば手軽になるのか。そこで最初に考えたのは「誰がトリックを取るのかひとめで分かる」ようになれば良いのではということ。そもそもトランプで遊ばれていたトリテ。スートが何種類かあり、どのスートにも同じ数字が存在する。マストフォローで、フォローできなかった場合は負け。フォローできた中で最も大きいランクを出したプレイヤーがトリックを取る。切札やビッドはなし。個人的にはこれがトリテの土台だと考えています。が、初心者にとってこの中にも分かりにくさがあります。
 それは「フォローできなかった場合は、たとえ数字が一番大きくても負けになる(トリックを取れない)」という点。ここでつまずくプレイヤーを実際何度か見かけたので、この点を解決すればもう一段階手軽に遊べるトリテになるのではないかと考えました。目をつけたのは2つ。
①フォローの概念をなくす
 『ヤギ戦争』や『5本のキュウリ』のように、スートをなくしてフォローの概念をなくしてしまう。『ヤギ戦争』は特に数字が大きい人が勝つという点が明確で分かりやすい。ただ、私がトリテって面白いなと感じたのが、マストフォローのギミックだったこともあり、そこはトリテの醍醐味として残したい。
②フォローできなかった場合も勝敗に関われるようにする
 『ボトルインプ』はフォローできたかどうかに関わらず勝敗に関わることができ、一段階手軽に遊べるという点で良さそう。また『ボトルインプ』は連番で同じ数字がなく、基本的には大きい数字を出した人がトリックを取るという点も分かりやすかった。ただ出されたカードによっては大きい数字ではなく、特定の数字を出したプレイヤーがトリックを取るという例外がある。ここは1つにまとめた方が良さそう。

 ということで、私のトリテをより手軽に遊べるようにするための結論は「マストフォローで、フォローできなかったかどうかに関わらず、大きい数字を出したプレイヤーがトリックを取る。どれが大きいかを明確にするため、数字は連番にする」ということでした。

◆昨年リリースした『たたリテ』

・フォローの仕方:マストフォロー
・トリックの勝者:フォローできたかどうかに関わらず、大きい数字を出した人が勝つ
・ランク(数字):連番
 までを私なりの連番トリテの定義
として確定させました。トリテのマストフォローのみを抽出して、他のプレイヤーが持っていそうな強いカードを出させるという戦略。逆に自分も出したくないのに出さなくてはいけない場面が生まれるもどかしさ。私がトリテを楽しいと思った部分の根幹を損なわない範囲で削れるところは削れたかなと思います。
 ここからはそのゲームオリジナルの要素の追加。せっかくシンプルにしたので、ここからゴテゴテ肉付けしたのでは台無し。トリテとして遊びやすい軽いものとして候補に上がったのは先述した『5本のキュウリ』と『ヤギ戦争』。特に『5本のキュウリ』の7回目のトリックで負ければ良いはとてもシンプルに感じました。ただ、『ヤギ戦争』の4回目までのトリックで、全トリック終了時最終的な勝者が誰になるのか決まるというギミックも面白いなと思いました。
 であれば良いとこどり。4回目までに最終的に誰が勝つのかを決めるが、本当に勝てば良いのは最後のトリックだけというギミックにしました。そこに連番にしたことでできそうなギミックを加えて『たたリテ』が完成しました。
※『たたリテ』の詳しいルールは、こちら(pdfファイル)

◆『たたリテ』でできた課題

 『たたリテ』は概ね狙い通りに作ることができました。トリテを遊んだことのない人やトリテに苦手意識を持っていた人に「遊びやすい」と言ってもらえたことは有難い限りです。さらに『5本のキュウリ』味を感じてくれる人はいるかなと思っていましたが、『ヤギ戦争』味を感じてくれた人がいたのは嬉しかったです。
 反面、課題としてトリテで度々取り上げられる手札運問題が『たたリテ』にもありました。ルール上、小さい数字か大きい数字のどちらかが手札にないと不利になってしまいます。かなりライトなゲームなので『たたリテ』に関してはあれで良かったかなとも思いますが、トリテ好きとしては引っかかるところ。
 『たたリテ』より前に試作を始めて本格的に作り始めようとしていたゲームがあるのですが、気付けばトリテを遊んだり調べたりしていました。手札運問題を解決するため、切札やビッド、ゲーム前の手札入れ替え、ゲーム中のランクの強さ変動などなど、様々な試みがなされてきた歴史がある中で、それを放置したまま別の方向に進むことにすごくモヤモヤしたのだと思います。自分なりの解決策を見つけたいなと思いました。
 また、連番に関してもより手軽に遊べるようにするための意識が強く、もっと連番だから出来そうなことがあったのではないかと思っていたことも大きかったです。
 トリテを作ったけど…と不完全燃焼感がどうしても拭えなかったので、それから手札運問題の解決、連番トリテのさらなる追求に移行することにしました。

◆『トラットリッテ』の制作開始

 次作に取り組むにあたり設定した課題は3つ。
①『たたリテ』の時に確立した連番トリテの要素は崩さない
②より連番であることが活きるギミックを作る
③手札運問題の解決

 この3つを念頭に置いて考えていたときに着目したのが『フォックス・イン・ザ・フォレスト デュエット』。トリックの結果によってマス上を前後に動くギミックで、次作を制作するにあたり最初に決定したのがゲームボードでした。これを皮切りに、ざっくりとしたルールやコンポーネントが決まり、いろんな方にテストプレイをしていただき、最終的な形が決まりました。
 本当はここを一番詳しく書いていたのですが・・・最終的にどんな形になったのか、その概要はツイッターで「#トラトリPV」で検索していただければ、簡単ではありますが、動画でご覧いただけます。

◆課題は解決できたのか

①『たたリテ』の時に確立した連番トリテの要素は崩さない
 これは最初から制限をかけて作っていたので問題なし。
②より連番であることが活きるギミックを作る
 これに関しては、ゲームボードをブラッシュアップしていく中で『たたリテ』よりも連番であることを活かしたルールにできたのではないかと思っています。
 また、初めに考えていたのは対戦形式のルールですが、副産物的に協力形式のルールも思い付きました。協力形式のルールに関しては、スートも活かせて、かつより遊びやすいものになってくれたと思っています。2~5人で遊べるゲームですが、2人で遊ぶのと5人で遊ぶのとでは協力ルールの難しいポイントが違うのも味わっていただけたら嬉しいです。
手札運問題の解決
 これは最後の最後まで悩まされました。どの数字のカードを持っていたとしても使えるところまではいきましたが、どうしても最後のトリックを取った人が勝ちやすい、つまり大きい数字を持っている方が勝ちやすい印象が拭えませんでした。これなら解決するという案もいくつか思い付きましたが、大体が数字の強さが変わるもので、私がトリテを作りたいと思ったときに一番最初に考えた「誰がトリックを取るのかひとめで分かる」に反してしまうので、本末転倒もいいところ。
 いっそ協力ゲームとして出そうかと挫けかけた時に光明が差しました。それまでずっと対戦と協力どちらもトリックを取ったプレイヤーができることを同じにしていました。が、対戦と協力を切り離そうとした瞬間、対戦でトリックを取ったプレイヤーのできることに制限をかけるという発想が浮かびました。実際に試してみたところ、最後のトリックを取った人が勝ちやすいという印象はなくなり、意図的に最後のトリックを取ってもらうという戦略も生まれる結果になりました。
 実に簡単なことなのですが、私は普段2人でゲームを遊ぶことが多く、ゲームの中には2人専用のルールがあるものも間々あります。2人で遊べることはとてもありがたいのですが、3人以上で遊ぶ機会があると、思っていたルールと違ってあたふたすることがあります。自分が損するだけなら良いし、人がミスするのも特に気にならないのですが、自分が一緒に遊んでいる人に迷惑を掛けてしまうのは申し訳ないと思ってしまうので、自分が作るゲームではなるべく人数などでルールを変えなくて良いように意識して作っています。今回はその考えが長い間首を絞めてしまっていました。まだまだ甘い・・・
 と、そんなこんなで手札運問題についても私なりに向き合い、どんな手札でもゲームに勝てる仕様にできたのではないかと思います。

 ルールの全容については来年のどこかで頒布したいと考えているので、そのタイミングでお伝えできれば幸いです。

◆連番トリテの位置づけ

 連番トリテは、トリテをもっと手軽に遊べたらいいなという思いから制作したトリテです。そのため、トリテのややこしいと思われそうな要素をなるべく省いて作っているので、初めて遊ぶ人、トリテに苦手意識を持つ人に触れてほしいと考えています。少しでもトリテって楽しいかも?と思ってもらえたら嬉しいです。もちろんトリテ好きな人にも触れてほしいです。
 が、「マストフォローで、フォローできなかった場合は負け(トリックを取れない)」というのが最もスタンダードなトリテのルールだと思います。マストフォローに慣れたらスタンダードなトリテのルール、それに慣れたら切札があるもの、カードに特殊効果があるもの、ビッド式、ルールが途中で変わるもの、、、いろんなトリテに触れて、少しでもトリテ好きな人が増えてくれたら最高です。

◆最後に

 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。久々に長々と文章書いたなあ。何事もやっていないとやり方を忘れてしまいますね。
 ところで、トリテって今はどれだけメジャーなジャンルなのでしょうか。大富豪くらいメジャーになったら良いなあ。

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