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統一教会解散署名/呼びかけ人 藤田庄市氏のコメント

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藤田庄市(呼びかけ人。75歳)

 長くなり申し訳ありませんが、以下、私の思いです。
 安倍元首相狙撃殺害事件から一か月後の8月8日に次のメモを、宗教専門紙の原稿の一部にするつもりで記しました。

<「公共の福祉」侵害と「信教の自由」>
 全国霊感商法被害対策弁護士連絡会が元首相殺害事件後の7月12日に開いた記者会見の資料によると、統一協会は幾多の刑事、民事とも裁判になった事件を引き起こしてきた。そのうち、民事判決の30件(22件は2000年以降)は統一教会本体の責任を認めている。その多くが山上容疑者の母親のような高額献金事件だ。
 信心決定(しんじんけつじょう)の自覚ある宗教者、政治家、法律家に、統一教会に対する解散命令如何について、あえて問いたい。解散命令は「宗教法人法81条1」に「著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」の場合とある。献金事件の裁判において、統一教会は宗教行為であると主張している。では、どんな内実の宗教行為であろうと、裁判で違法とされても、宗教行為であるならば、「宗教法人法のいかなる規定も」「(宗教)行為を行うことを制限してはならない(1条2)」のであろうか。これまでの統一教会の所業は「著しく公共の福祉を害」していないのだろうか。オウム真理教に殺された坂本堤弁護士が、幹部の上祐史浩(現ひかりの輪代表)に「こちらには信教の自由がありますから」と断じられた際、「他人を不幸にする自由はない」と即座に反論したことの意味を、この「解散命令」条項に重ねて、慎重かつ冷静、トータルに「信教の自由」を考える時期なのではないだろうか。(20220808)

 私は宗教が「好き」です。40数年間、インディペンデントのフォトジャーナリストとして宗教取材を続けてきました。柱とする取材分野のひとつがカルト問題です。1995年のオウム真理教事件を機に、カルトと対峙する位置に立って本格的に取材を始めました。取材現場ではカルトが「信教の自由」を道具にして、いかに被害を及ぼし、人権を侵す「凶器」となり果てているか。いやというほど見せつけられました。
 しかし一方、取材当初、カルトの本質とは何かと問いを発した時、それが掴めずに七転八倒しました。統一教会の元信者の方々をはじめ、オウム事件の被告たち(2018年に死刑執行)などからいろいろ教えていただき、また、学ぶことにより、「スピリチュアル・アビュース(霊的虐待、信仰虐待、宗教虐待)がその本質であると確信することができました。それが「精神の自由(信教の自由)」を侵害し、「精神操作(マインドコントロール)」を可能にし、違法行為から2世の苦悩まで、カルト問題を惹起する根本原因であると見据えることができました。全国霊感商法被害対策弁護士連絡会(連絡会)の公開申し入れ書の「3 著しく公共の福祉を害する」行為の第一に「信教の自由の侵害」とあります。その意味の大きさが身に迫ってきます。
 2000年前後、カルト取材を続ける中でエホバの証人2世の方たちと出会い、苦悩に満ちた来歴を知り、言葉を失くしました。2010年頃には統一教会2世の実情を知るようになり、2世問題を自覚させられます。
 今回、2世のみなさんとこの署名の呼びかけ人に名を連ねることができ、感無量です。

 冒頭の話に戻ります。統一教会が「解散相当」であることは以前から確信していたことです。しかしメモを記した時点での客観状況は、それまで繰り返された連絡会による文化庁への「解散請求」申し入れを凝視すれば、ほぼ不可能でした。しかし、事件以来のマスメディアの調査報道は統一教会の実態と問題点をかなり正確に伝え、社会の批判は日増しに強まっていました。これまでにないことでした。
 こうなると民意の集結しか打開の道はありません。ここで統一教会の宗教法人格を剥奪出来なければ彼らの勝利です。それを許さないために出来ることは何か。脳裏に浮かんだのは、1954年5月の東京都杉並区の原水爆禁止署名でした。同年3月の太平洋ビキニ環礁におけるアメリカの水爆実験は日本国民を放射能汚染の不安のどん底に落とし入れ、ビキニマグロの造語が出現し、魚が売れなくなりました。ゆえに最初に声をあげたのは魚屋さんたちでした。当事者が声を上げ、そこからヒューマニズム精神に貫かれた水爆禁止署名運動が始まり、燎原の火のように全国各地に広がり、8月には「原水爆禁止署名運動全国協議会」が結成されました。これが原水爆禁止運動の嚆矢となり、2017年にノーベル平和賞を受賞したICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)にまで歴史の歩みは続いています。
 「人びとの気持ちを署名に結集する。それはこの理不尽な現状を変える力になるはずだ」
 そう思い至りました。前代未聞の宗教法人解散を求める署名は、人権侵害、精神破壊をなくして、ひとを本当に大事にする、恥ずかしげもなく大上段に振りかぶるのを許容してもらえれば、人類史上に自由を拡大する署名。そう考えています。
 署名の呼びかけ人に、家族、宗教2世が多く参加されており、社会の共感を得ているのを感じ、歴史を動かすのは当事者自身なのだと、とてもうれしく思っています。(20221024)

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