オンライン稽古②

オンラインで舞の稽古をはじめるにあたり、もっとも大切だと思ったのは、お弟子さんの不安と不快を徹底して取りのぞく、ということでした。

そうでなくても世間には不穏な空気が蔓延しています。
舞の稽古方法が変化することによって、わずらわしくなったり、気後れしたり、お弟子さんがそんな気持ちになるのは絶対に避けたい。
できれば稽古することで、鬱々とした気分が晴れ、外出自粛による運動不足解消などにも役立てれば、オンラインで稽古を続ける意義があるのではないかと思いました。
また、この時点で緊急事態宣言がいつまで続くのか不明だったため、仮に長期化した場合、お弟子さんの中には舞から気持ちが離れていってしまう方が出るかもという危惧もありました。

そのため、オンライン自体に負の感情が起きないよう、多くの方が使い慣れたLINEを使うことに決めたのは、前回投稿した通りです。

もうひとつ重要なのは、オンラインに向いた稽古方法を確立させることでした。

地唄舞は、師匠と弟子が向かい合い、鏡のように弟子が師匠の動きの真似をするシステムです。
師匠は曲に付けられた「振り」とよばれる所作を左右逆にしてお手本を示すので、弟子は見たまんま、そのまんま動きをなぞります。
同時に、師匠は弟子の動きをチェックし、正しく伝わっていない部分を直していきます。

オンラインでも向かい合い、鏡のように動くことは可能ですが、残念ながらわずかではありますがタイムラグがあります。
日本舞踊は、曲と動きの「間(ま)をはずさない」ことが大切なので、タイムラグは致命的。これにどう対処するかが課題でした。
それならと考えたのは、「振りうつし」つまり私の真似をしてもらうときは私が曲をかける。お弟子さんの動きをチェックしたいときは、お弟子さんが曲をかける。
そうすれば、真似をしてもらいつつチェックする…といういつものやり方は無理ですが、分けることによって、時間は2倍かかりますが、「間」は正しく伝わります。これならじゅうぶん稽古として成立すると思いました。

この方法を試すと、タイムラグ問題の解決のほかに、意外な効果がありました。

いつもの対面の稽古では、動き(しかも3D)と、音、そして注意点など、多くの情報がいっぺんに与えられます。
それがオンラインだと、動き(しかも平面)のみ、注意点のみ、とひとつのことを重点的に繰り返すので、情報処理が容易で覚えていただきやすいという利点があると気づいたのでした。
(続きます)

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