見出し画像

異所性妊娠(子宮外妊娠)で緊急手術を受けてきたので違和感があったらすぐに病院に行こうという話

タイトルにてお伝えしたいことは以上なのですが、2021年上半期個人的にはかなり衝撃的な出来事でありました。術後1日目の病棟内からお送りしております。

エコー写真とか手術の話も出てきますので、苦手な方は読むのをお控えください。

妊娠発覚

ことの発端は1週間前。私は生理前の症状に、乳房が張って熱がこもり、乳房をとりたくなるほどの痛みが発生するというやっかいなものがあります。生理がくればなんてことない、すぐに張った乳房もしぼんで熱も引いてくるのですが、今回ばっかりはその症状が長い、長すぎる。いつもだったらこのあたりで生理が来るはずなのにこない。乳房が熱くて眠れないなんてこともしばしば。いよいよおかしい、もしかしたら妊娠か?と思い妊娠検査薬を使用。結果は陽性でした。

検査薬を使用した翌日、近所の婦人科を受診し、超音波検査をうけ、ものすごーく小さい赤ちゃんの種が発見されました。

画像1

ケシの実くらいの大きさだそうです。ケシの実ってなに…?

本当に小さくて、胎嚢という赤ちゃんが育つ袋も確認できない状態です。

とにかく妊娠していることは確定しました。が、この時点では小さいし胎嚢も見えないから、子宮内膜に着床しているかどうかはわからないとのことでした。なのでこの日は妊娠時に生産されるホルモン(ヒト絨毛性ゴナドトロピン:hCG)の量をはかる血液検査をして、また1週間後に再検査ということになりました。

このhCGの量によって週数がわかるそうです。市販の妊娠検査薬はこのホルモンに反応して陽性、陰性を判定するそうですよ。

(単位:mIU/ml)
男性,非妊婦:0.7以下
妊婦
  妊娠3週:0~50
  妊娠4週:20~500
  妊娠5週:500~5,000
  妊娠6週:3,000~19,000
  妊娠8週:14,000~169,000
  妊娠12週:16,000~160,000
  妊娠24週:2,500~82,000
  妊娠36週:2,400~50,000


渡されたエコー写真に写る細胞段階の小さな黒い点を見つめ「本当にこれがヒトになるのか…?ちゃんと育ってるのか…?」など、嬉しいというより、不安な気持ちで悶々としていました。

また、全妊娠のうち15%程度の確率で流産が起こることも調べていくうちにわかり、結構確率が高いので初期段階では今後何があっても仕方ないなと、割とドライに構えていました。


異所性妊娠疑惑

さて、1週間が経過した昨日のこと。朝の10時に病院に向かい内診をうけたあと、先生が先ほど撮ったエコー写真を持って話し始めます。

「ちょっと嫌な話なんだけどね、子宮内に胎嚢が見えないんですよ」

画像2

(左の画像では胎嚢が確認できるが、右の子宮をうつした画像の中には確認できない)

あー、なるほど。子宮外妊娠てやつか。とドライに構えていたこともあり、冷静に話を聞くことができました。

「でもこの血液検査では妊娠6週程度のホルモンの数値が見られるので、妊娠していて、育っていることは確かなんです。ですから、子宮内膜で育たずに、どこか別の場所で着床してしまっている可能性が高いです。大体は卵管という、精子と卵子が出会う場所で、受精卵が子宮に到達する前に着床してしまうケースがほとんどです」

先生の話を聞きながら、1週間前より大きくなった細胞の写真を見つめます。

「卵管で着床してしまうと、卵管が破裂して大量出血し、命にかかわります。今紹介状を書いて大きな病院に掛け合いますので、詳しい検査をして、異所性妊娠ならすぐに手術してもらってください」

まじか。子宮外妊娠というワードは知っていましたが、卵管に着床するとそんなことになるとは思わず、ここで血の気が引きました。

早期に発見できてよかったという先生と、後ろでうんうんと頷く看護師さんの声が遠くなって、視界がぼやけていきます。

みんなに連絡しなくちゃ。旦那さんと、実家と、会社と…来週約束してたものは全部キャンセルして…あ、帰りにクリーニングに出そうと思って持ってきていたワイシャツどうしようかな…。などを考えているうちに、タクシーに詰め込まれて大学病院へ。

大学病院の受付で待っている間、破裂で出血して死んでしまうところだったのか、危ないな…などと考えつつも、ときおり死にたいとひとりごちているのに、こうして死に対して抗い、危なかったと思ってしまう自分の身勝手さに呆れ、さらに頭がぼやけていきました。


小さな細胞の鼓動

暫くすると仕事を早退した旦那さんが来てくれました。

「子宮外妊娠だって」

「早期に発見できてよかった」

会話をしながら待っていると内診に呼ばれます。


超音波検査では、近所の婦人科にはなかったモニターが目の前にあって超音波が当たっているところがどんな状態か見えるわけで、おーこりゃすごいななんて思いながら見てたんです。


そこには、さっき写真でみた、先週より少し大きくなっている丸い影が、小さく動いていました。

どくん、どくんと脈打ち、心拍も聞こえ、あ、生きてるんだと思った瞬間、今まで冷静だと思っていたのに、涙が止まらなくなりました。

ごめんね、これからだってときに、ちゃんと育つところまでいかせてあげられなくてごめんね。

胎児になる前でも、人の形をしていなくても、その小さな影に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになって嗚咽が漏れました。


「やはり最初に受けた婦人科の先生の診断どおり、卵管での異所性妊娠です。右側の卵管に着床してしまっているので、右側の卵管ごと切除します」と大学病院の先生は言います。

「妊娠するにはもう片方の卵管があれば可能です。今回は残念でしたが。17時には手術室に入っていただきますので、血液検査、やレントゲン等、手術前の検査をそれまでに行います」

残念、か。いや残念以外の何物でもないんですけどね。どうしようもなく、やり場のない怒りとも悲しみとも言えないもやもやしたものがぎゅっと心臓を締め付けてくるような感じがしました。

でも私が無事でよかったと言ってくれた人たちがいることに感謝し、若干ふらつく足で床を踏みしめ診察室をあとにし、検査に向かい、目の前の手術に向けて準備をしていきます。

手術とその後

17時、一通りの検査を終え、自ら手術台に横たわり、マスクから出る麻酔を肺に入れて眠りにつきました。

20時、無事に手術は終了。意識が朦朧としながらも覚醒。腹腔鏡だったためか、痛みはほとんどありませんでしたが、右手にも左手にも点滴、尿道カテーテル、足にはエコノミークラス症候群を防止するためのふくらはぎ揉むやつなんかが巻かれていて、管だらけで寝返りもうちづらいし、うっとおしいなという感じでした。

夜は看護師さんがこまめに点滴のチェックをしてくれてたような感じでしたが、そのたびに起きてるんだか起きてないんだか、夢なんだか夢じゃないんだか、ほんとにわからんくらい脳が働きませんでしたね。

でも目覚めた翌朝、つまり今日には結構元気ですね。午前中にはカテーテルもとれ、自分でお手洗いにも行けるし、右手の点滴もはずれ、ごはんもお昼からでしたが食べることができました(おかゆ、まずい)。

改めて今回は少し悲しかったですが、健康な体と片っぽの卵管があれば、いつかまた赤ちゃんに出会えるかなと思うので、しっかり準備をして迎えられられるよう、ご飯をもりもりたべて元気に過ごしたいと思います(へんな酢の物、まずい)。

また、発見が遅れたらどうなっていたかと考えるとゾッとします。たぶんあと1週間以内には耐えきれなくて破裂してたんじゃないかなぁ。

そうしたら大量出血で最悪死…とおもうと背中が寒いですね。

男女問わず、身体がなんかおかしいなと思ったらめんどくさがらず、がまんせず、些細なことでも病院に行ってくださいね。早期発見早期治療で早め早めに改善していきましょう!

早期治療を可能にした検査薬の精度と、医療設備、お医者さん、看護師さんにも感謝をこめて。


参考記事と動画

異所性妊娠について
子宮内膜以外の場所で受精卵が着床してしまうこと。全妊娠の1~2%程度で起こる。異所性妊娠の95%が卵管での着床。以前は子宮外妊娠と言われ、現在でも通称で使われているが、2009年3月に異所性妊娠として統一されることが日本産婦人科学会で決定された。

画像3

卵管などの弱い部分で妊娠が成立してしまうと、妊娠の進行によって卵管が破裂してしまい、お腹で大量出血が起こり、命にかかわる。昔は年間で何人もこれが原因で亡くなってしまった方もいるかなりこわい症状。

現在は精度の高い妊娠検査薬の普及に伴い、早期に妊娠発覚、検査を受けられるので、異所性妊娠も大事になる前に発覚しやすいとのこと。

原因は感染症や子宮内膜症などによって卵管の通過性が悪いことが一因。妊娠前に子宮卵管造影検査を受けると、卵管の通過性がわかるので、検査を受けるといいかもしれない。

妊娠から出産までの確率ヤバすぎるな、とにわかに感じられるありがたい動画


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?