【観劇レポ】Casual Meets Shakespeare『OTHELLO SC』20230118&20230119

 ☆ネタバレあり☆個人の感想☆勝手な解釈☆何をどう受け取るかは観客の特権☆

 一回目の初日「S」はシリアス。

 ベージュ系で統一された衣装、ゾンビ一歩手前の濃メイク、極力抑えられた表情。サンモールに必要ですかピンマイク?中通路沿い特等席からの初見は緊張と沢山の「違和感」ではじまる。

 大好きな松岡和子さん訳がベース。でもカジュアルなんちゃらっていうから、もっと崩してくるのかと思ってハラハラドキドキしてた。最近はホントに現代語にしちゃってるシェイクスピアいっぱいあるし、スマホ取り出しちゃうのもあったりして、どこまでカジュアルなのかがめちゃくちゃ気になってて、でも配信されてたHAMLET SCはガマンした。初見で、推しタイトルロールを浴びたかった。だってオセロだよ?言葉だけで、嘘と嫉妬だけで、破滅させられた人を演じるわけでしょ?しかも役者に寛大で愛されてるふみやさん演出で。そりゃもう好き勝手思うがまま作ってくるに決まってるし。なるべくなら前情報なしで観たかったもん。

 結論。正解だった。前情報なし、これが正しい観劇のマイルール。暗転中に中通路の目の前にいて、通路に当たった照明の下、明転と共に勝利の雄たけびをあげるオセロ。脆さと強さを兼ね合わせてて、順風満帆なのに一瞬で追い込まれて破滅する可哀そうな男。当時の差別対象だった「ムーア人」がそこにいた。いつも自信満々な推しを見てるからこそ分かる。将軍の目に違和感。不安と自信のなさが浮かぶ…自分が手にしている立場の危うさを知っている。推しの繊細な役作りは、いつもながら感服するわ。マジであぁ最前で観たかったです。まぁある意味最前だったけどさ、しかも数十センチでかぶりつき笑…これは本当の最前でも体感できんだろう?…とS席全落の負け惜しみ笑笑

 さてイアーゴー。田口さんの金髪は、役作りだった。まぁ田口さんは茶髪天パ以外のお芝居初めてなので、ただただ個人の感想。右目ぱちぱちするの、めちゃくちゃ気になる。最初は嘘つく時のクセ?ってなったけど、本当のこと話してる時もだったし。いや、イアーゴーは本当のことなんか一つも話してないっていう解釈?…いや、それはない。それはないと思ってた今まで。シェイクスピアは何本も観てて本も数十冊読んでて、イアーゴーがいちばん好きなの。この作品の中で。だからもう推しそっちのけでガン見して、脚本頭において、自分のイアーゴーの基本の人(高橋洋さま)思いだしながら……まぁ脳みそ総動員して、考えた。でも分からん。ねぇ、貴方の本当はどこですか?誰よりもオセロを愛していたんじゃないんですか??だから自分の言葉で追い込まれ愛する人を手にかけるっていう最大限の「嫉妬」=「愛」を導くんじゃないの……田口さんのイアーゴーはプライドで二人を破滅させるタイプ。だからキメ顔がね、文字通り輝いてた。ふみやさんはホントに田口さんが好きなんだなぁ、、、愛情と信頼を感じたよ。

 ほぼ松岡さん訳だけど、これを2時間でおさめるの、結構なこと。このメンツなのにほぼアドリブなし、予定時間を大きく超えることもなく。こんなド正面からベーシックに作ってくるの、これだけは意外だった。ちゃんとしてる、ただただ哀れに欺かれてしまう人間を可笑しく描く。だったらコメディバージョンいらなくないですか?…というのが率直にいちばん最初に出てきた感想。いろいろ言いたいことはあるけど、これをもっと磨いて滑稽さで湧きあがる「可笑」を溢れさせるところまで。なぜにコメディが必要なのか。初日に提示された「シリアス」は基本なのかじゃあ、明日は何を見せられるんすかって、恐怖を感じた。

 2回目の初日「C」はコメディ。ただただ、笑わせるために全力。

 赤と緑。黄と紫。橙と青。…黄緑と桃。目に眩しいほどの原色を集めると、それだけで普段固く閉ざされている感情の箱がゆるくなる。
 舞台セットはシリアスと一緒。あぁ、A席最前は嬉しいけど嬉しくない。後方で観たい作品だと始まって2秒で分かる。推しが全力で笑えと命令してくる、、、ように感じた。隣の同担とは笑う箇所が違う。人間にとっての、オタクにとっての、芝居好きにとっての「笑い」が違うことが分かる。コメディってそういうことか。納得するまで1分かからなかった。これはショー。一つでも多く笑いを起こさせるキャスト同士の、舞台上での戦い。なら。楽しむしかないわな……って速攻で陥落。前日同担に「絶対に笑わない」って宣言してたのに、いいんだよ別に負けるが勝ち。楽しむが正義。お金払って、推しの表現を浴びに来てんだから。……自分への言い訳です乙笑

 フライヤーでもメインビジュアルの推しの「考える」かわいい顔大放出。ちょっとおバカさんなのかな?動きだけでかわいいし面白い。ごめんかわいいしか書けなくなってきたからそれに関しては終わる。でも基本芝居はシリアスと一緒。それに無邪気な愛を、動きと表情で追加してて、たまに自信なさげな顔するかぁ、、、ズルいっすわそれ。うちらがよく観てるテンション高めなかわいいやつ。なのに急に求愛したりして。ギャップ萌え意識してないの、マジでズルいやつだから。とにかくかわいい。

 さてイアーゴー。初見はじめましてのウチクリさん。芸達者。常に余剰ありますって芝居と、一段高いところから、すべての役者の上にいる。……まさにイアーゴー。好きじゃない。(もちろん誉め言葉)本来なら嫌われるのがイアーゴーの役目なんだから当然。そしてアドリブ。久々に「初日から長いわ」って推しが役はずしてツッコむの見た。推しのこと困らせる役者はたいがい巧くて狡い。たぶん気に入るだろうな、って思ってたけどそれよりももっと最上位の「気にくわん」ってなるとは。初回だけで。なんかもう考えるのバカバカしいまである。だってウチクリさんのイアーゴーは「自分が好き」系の超解釈なんだもん。あり。いい。でも嫌い笑……でもカテコで推しとツーショ撮りだすの好き。よくやった。推しの満開の笑顔ひきだしてくれてありがとう。軽率に君を推す。

 出はけ通路使用、全部シリアスと一緒。今日からはもっとアドリブ解禁なのかな。それならせっかくテンポよくてシリアスより短い上演時間が変わるのかも。だから。追加したよコメディの方が1枚多い。とにかく楽しい、楽しみ、これがどうなるか。

 さんざん笑わされた後、絞殺のシーンでも。絶命寸前で、離される手。ここは素直に殺してあげてください笑……でも音も光もあるから、これが松崎演出なのがわかる。前代未聞よ、殺されるのをカウントダウンするヒロイン。シェイクスピアが生きたままタイムスリップして来てたら泣くわ(もしくは笑い死ぬ)笑
でもこの辺はいっさい笑ってなかったなアタシ。あと、イアーゴーが言葉を尽くして唆すシーンも。一生懸命に一人だけベーシックなセリフのまま演じる推しを、ちょっと助けてあげたいって気持ちになったわ。それも含めて演出ならしゃーない。それを作品全体として受け取るだけ。

 本来の話はナンセンス、という気がしてきたけど。

 人種差別、身分違い、政略結婚と女の生きる道。シェイクスピアが書いた沢山の本の中でも、男がちゃんとメインの作品。男同士の愛と嫉妬と崩壊と、絶望の物語。人間って滑稽だな、可哀そうだな、そして憎んで崩壊させてしまうほどの情念。それが詰まったストーリー。現代には理解できない部分が多いのは、それだけ薄まってきたってことかな。当時の大問題も、今なら一瞬で解決。たとえば「浮気した?」には「位置情報確認していいよ、スマホの履歴も確認どうぞ?」みたいな会話すればいいし、どうしても信じられないなら離婚すりゃいい。でも当時は分かりやすい証拠も潔白を証明する術もない。離婚が簡単でなかったこともある。そして、差別からくる劣等感と、それを巧みに利用されて騙された哀れな男。自分に尽くしてくれる部下の言葉にすがってしまうのは、孤高の将軍という立場と孤独を抱えた心。そして大人しく殺される女。貴族の女はだいたいが「夫に尽くせ」としか教えられてない。今なら「信じてもらえないなら別れましょ。別に働くし、次の男もすぐに見つかるから」ってなるだろう。でも。他に生きる道を教えられてないんだから。夫に死ねと言われたら死ぬ、それしかない。だからシェイクスピアの話は面白い。大昔の常識と非常識が、現代とのギャップとして鮮明になる。そして、今が女にとって生きやすい時代であると痛感する。どっちが幸せかはそれぞれだが。

 まぁアタシなら、自分を愛してくれる男に殺されるなら、それも悪くない。推しに絞殺されるなら、それが最良の最後かも知れない、、、という位にはオセロに夢中。


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