見出し画像

アラフォーの消極的不妊治療

はじめに

ワタシにとって婦人科はなるべくなら行きたくない場所ナンバーワンである。ましてや不妊外来なんて何をするのか分からず不安しかない。
敷居が高いというより、長年の友人にも言わないことを詳細に伝えなくてはいけないというのはあまりにもストレスである。
ましてや初対面で信頼関係の結ばれていない相手にである。
そんな不妊治療を頑張っているすべての勇者たちと、それを支えるべきパートナーたちとワタシたち夫婦のあり方と思いを共有できればうれしいです。

口コミの限界

不妊外来を決める基準は、自宅や職場からの距離や設備の充実度、女医の有無や口コミなどがあると思う。
特に口コミは今ではあらゆる分野の選択の必須基準で、ワタシも食べログ先生や@コスメにはお世話になっている。
しかし当然ながら、投稿者にとっては100点でも自分にとっては10点ということが起こりうる。相性や価値観は十人十色なので口コミでは網羅しきれないのだ。
ましてやセンシティブな治療である不妊治療はこの相性と価値観がとても重要だと痛感したのだ。
まわりくどくなったが、要は相性も価値観も合わないドクターにあたってしまったのだ。
これははじめての不妊外来受診で、不妊治療を続けることの難しさは目に見える問題だけではなく、ドクターとの相性など目に見えないソフトな問題との向き合い方だと痛感した体験記である。

我が家の2人目不妊問題

ありがたいことに我が家はすでに1人授かっており、いわゆる2人目不妊である。
2人目不妊の定義は、

2人目を希望しながら2年間避妊をせずに性交渉をしているのに授からない状態

らしい。
約5年前に第1子を出産してから、避妊せずに性交渉をもち現在妊娠していないのでおそらく該当夫婦である。
しかし「2人目を希望している」かと問われると妻であるワタシはかなり消極的で、妊娠も出産も2度とゴメンだ!と思っているし、夫はエア赤ちゃんあやしをしてしまうほど1秒でも早く欲しい!積極派で夫婦でかなりモチベーションが違う。
また入籍後3ヵ月で妊娠が判明したため、新婚旅行も結婚式も大幅に予定変更を余儀なくされた思い出がある。
この経験から2人とも心のどこかで「子供って割とサクッとできるもん」だととんでもない思い上がりをしていたことを、ここに反省の意味を込めて加えておく。
この夫婦間のモチベーションの差と思い上がりが、不妊外来にたどり着くまでに5年もかかった大きな要因だ。

抱っこさせてくれる赤ちゃんがいると聞けば飛んでいくほどの夫だが、ワタシに不妊外来を受診したいと言うのに5年かかった。
それはワタシにはひどい産後うつに2年以上苦しんだ過去があるので、きっと言い出せなかったんだと思う。
我が子を可愛いと思えず、思えない自分を責め続け、精神科のお世話になっていたワタシを1番近くで見ていたのだ、そりゃ言い出しにくにだろう。
そんな忖度をしていたら、夫婦揃ってアラフォーになっており、流石に焦った夫が自宅から1番近い不妊外来の産婦人科をググり予約したいとおもむろに申し出てきた。

さっそく不妊外来へ出陣!いやいやその前に… 

今年のはじめに不妊外来へいきたいと夫から言われたとき、正直みぞおちのあたりにイヤァなものが流れ込んできたような気分になった。
今が120%幸せで充たされているワタシにとって、その提案は快諾できるものではなかったので、考える時間がほしいとその場では伝えた。
なぜなら彼は本意では無いワタシからの提案でも必ず一度考えてくれるからだ。これはワタシが尊敬している点のひとつなので真似してみた。

ワタシとしては今の生活を変えるのは本意ではない。できることなら3人家族でこのまま幸せに暮らしていきたい。
しかし逆の立場だったらどうだろう?
逆とは「ワタシは2人目ほしいのに、夫が非協力的だったら」である。
想像するだけで悲しかった。
これはこのままのらりくらりとかわして良い問題ではない。
夫婦の信頼関係に関わることで真剣に向き合う必要がある、がしかし実際妊娠、つわり、マイナートラブル、出産、産後とココロとカラダを酷使するのはワタシである。
1か月くらい悩んだ末出した答えは、「何故妊娠しないのかの原因を知るための検査はする。高価だったり痛みが強い検査は基本的にしない。初回は話を聞くだけにして欲しい」だ。
夫は了承し、その場で自宅から1番近い不妊外来対応の婦人科を予約した。こんな時だけ行動が早いなと内心思いつつ、最初の受診日を待った。
余談だがワタシの身体は昔から正直で、受診日が近づくにつれて緊張で不眠症気味、不整脈と過呼吸まで出た。

当日

夫は有給をとり臨んだ当日、ワタシは憂鬱以外のなにものでもなかった。
しかし不機嫌になるのは違うと大人判断し、ギリギリで踏みとどまっている精神状態であった。当たり散らさなかったワタシ偉い!と今でも思う。

不妊外来はとても混んでいると思い、本とポータブルイヤホン、携帯の充電器まで持参し、あわよくばAmazonPrimeでもみてやろうとまで思っていた。
しかし予約時刻ちょっと前に診察室に呼ばれた。
心の準備はまだ出来てなかったが、なんともない体でいる自分が滑稽だった。

ドクターは50代後半の男性で、記入済みの問診票をチェックしながら、基本的な検査について説明を始めた。
おそらく毎日毎日同じことを言っているのだろう、説明には淀みもないが温かみもない。流れ作業のようだなと思いながら聞いていた。
驚いたことに女性側の1番基本的な検査だけでも16項目もある。男性の検査はたった1項目精液検査のみだ。
しかも、月経周期に合わせてできる検査が異なるため、最低でも1か月は何度か受診する必要がある。
男性は1回精液を採取して6時間以内に病院に持参すればおしまい。
産む前から女性側の負担が多いなんて…
検査項目数の差からも不妊の原因が女性に多いという間違った認識が広がりやすいわけだ。

そんなことを思っているワタシにドクターは第1子の出産方法をたずねてきた。
ここからがその日のハイライトになる。


レッドカード!退場!

ワタシは極度の怖がりで無痛分娩を希望していた。
ながーい前駆陣痛を経てようやく硬膜外麻酔を打たれ母体は楽になったが、赤ちゃんは全く降りてこなくなったため、主治医の判断で緊急帝王切開になった。
この判断が正しかったのか、間違いだったのかは今でも分からない。赤ちゃんは何の後遺症もなくスクスク育ったが、ワタシにとっては産後うつの始まりでもあったからだ。
そんな複雑な思いの詰まった出産話を聞いたドクターが放ったのは、配慮に欠けた言葉だった。
無痛分娩なんかダメ(併設の産院は自然分娩推奨)で、帝王切開後にちゃんと歩かないと癒着してそれが不妊の原因になると。
ワタシの中の警報機が鳴り始めた。
(キケン、キケン!キケン物から離れて下さい!キケン、キケン!…)
アダルトチルドレンのカウンセリングを2年前から不定期で受けているワタシは、自分を傷つける対象に敏感になっている。

脂汗をかきながら精一杯頑張って歩いたあの日のワタシがあまりにも報われないと思い、不要な一言だと知りながらも、できる限りの努力をしたと伝えた。
本人が努力したといっても結局努力が足りなかったから癒着して不妊の原因になったんでしょう。
一刀両断された。まだ何の検査もしていないのに、ワタシの努力不足が不妊の原因だと遠回しに言われた気がして、ショックだった。

ただでさえ消極的なのだ、これ以上刺激しないでほしい!と夫は心の中で祈っていたらしい。
隣に座っている妻の顔がどんどん険しくなり、しまいには鬼の形相だったのだからそう思うのも無理はない。
マスクでの表情のカバー力なんて全く役に立っていなかったらしい。
夫は、帝王切開の傷がほかの臓器と癒着して不妊の原因になっている場合、妊娠とは関係なく日常生活に支障は出るかとドクターにたずねた。
ワタシの母はワタシを産んだ時の帝王切開の傷と腸が癒着して、救急車で運ばれて緊急手術をしたのだ。癒着体質の可能性があるので心配だと夫は伝えた。
ドクターは抑揚のない声で、必要ないですね、だって妊娠希望しないなら関係ないですから。と
妊娠を希望しないならあなたのカラダのことなんでどうなろうと知りません。そう言われた気分で、そんなこと言うドクターと信頼関係を築けるとは思えなかった。

そのあと内診室へ呼ばれた。内診は無いって言ったのに!と夫を睨みながら内診室へ行き、生理痛のきつそうな子宮の形だ(笑)のドクターの言葉は、品定めされているようで最後まで気分が悪かった。
目の前のおじさん(おっと失礼)は完全にレッドカード、退場対象と認定した。

さいごに

やっとの思いで不妊外来を受診したのに、正直これでは心が折れてしまう。
ワタシが消極的だから、という理由だけではないはずだ。
不妊治療はパートナーとのコミュニケーションやドクターとの相性や価値観などの目に見えないソフトな問題にこそ続けられる秘訣があると思う。

不妊外来や婦人科はそんなもん、と諦めの境地に立つのではなく、もっと気軽に受診できるようになれば不妊に悩む人たちのケアやピルの処方、性感染症の防止に繋がると考える。
しかし現状は、行って嫌な思いをする場所。これでは全く近寄りたくない。

パートナーとドクターがソフトな問題と向き合ってくれない限り、女性は彼らと足並みを揃えられない。
我が家は当初の通り痛くない高くない検査は続ける予定だが、転院も検討している。
ドクターと患者の相性マッチングアプリや、初回体験無料などのサービスがあればよいのに…と思う今日この頃。
妊娠するしないに関わらず、1人の女性としていや人間として尊重してくれる病院とみんなが巡り会えることを祈るばかりである。








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?