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興味関心を自分の言葉で発信し、新たな問いと向き合い続ける。「世界の市役所をハックする!Season1(通称:モリゼミ)」ゼミ長インタビューを開催しました!

「日本中の面白い公務員が、仮想市役所で共創プロジェクトをすすめたら」という想いから2019年に始まった「市役所をハックする!」。日本中のさまざまな地域で活動する公務員が、仮想市役所(オンライン投資型サロン)に集まり、それぞれの地域の課題の解決を模索する取り組みです。

その中から生まれたのが「世界の市役所をハックする!」。Season1は、通称:モリゼミとして、世界の自治体の先駆事例を学び、未来の自治体を構想していく共創型プロジェクトとして活動しました。オンラインでのオープンレクチャーに加え、クローズドゼミでは各自の探究テーマを設定、2020年5月~10月の6か月間、研究を進めていきました。テーマは、デンマーク『民主主義教育』、オランダ『多様性』、エストニア『デジタルガバメント』、台湾『民主主義政治』の4つ。11月29日には、オンラインにて最終発表を行いました。

そして2020年12月31日、モリゼミを通しての気づきを各ゼミ長4名からお話いただきました。当日は、塩尻市地方創生推進課の山田崇さんと、雲南市政策推進課の光野由里絵さんが進行を務めました。ゼミ長4名は、モリゼミから何を学び、今後どんなアクションを起こしていきたいのか。お話を伺います。

モリゼミの取り組み

そもそも「モリゼミ」とはどのような場なのでしょうか。
参加者は、地方行政関係者から民間企業の社員、大学・研究機関・NPO法人の職員、個人事業主までさまざま。世界の市役所をハックする!Season1では、31名のゼミ生が参加しました。実際の活動としては大きく2つ。一つは、半年間で海外の公共的な取り組み事例をレクチャー形式で学ぶこと。「民主主義」「気候変動」「美食文化」「アート」「地域」など様々な観点から、5つの国の事例を学習したと言います。

もう一つはクローズドゼミ。オランダ、エストニア、台湾、デンマークの4カ国に分かれて研究課題と仮説を構築し、社会実装するためのアイデアの構想まで取り組みました。最終的には、約260名を集客するフォーラムを開催。タブロイド紙の作成、最終発表を行いました。

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↑実際にゼミ生が作成したタブロイド紙。デザインは、ローカルのデザイン支援やブランディングを手掛けるAKEBONO DESIGNが担当。

自分の興味関心をチームで探求していく

半年間のモリゼミでの探究を振り返って、中心となって活動したゼミ長たちはどう感じているのでしょうか。最初にゼミを終えての感想を伺いました。

知子さん

小倉知子(おぐら・ともこ)さん
福岡県久留米市ー東京の二拠点で活動。地元の伝統工芸品「久留米絣(くるめかすり)」でつくる新しい服のブランド「CASULI」を立ち上げ、CASULIを中心に久留米絣関係世界を拡大中。

小倉さん「私はデンマークのチームリーダーとして研究を行いました。デンマークには行ったこともないし、全く知らないところからスタートしたので、ワクワクしながらも暗中模索でしたね。走り出したら止まれないと感じていたので、リーダーとして適切に舵が切れるか不安でしたが、メンバーに手助けしてもらいながら最終目的地までたどり着けてホッとしています。今は、自分の言葉でデンマークのことを話せるようになりました」

じゅんさん

渡辺潤(わたなべ・じゅん)さん
埼玉県和光市職員。埼玉県警警察官を経て現職。市役所では児童福祉、文化財、人事、税務の各部署を経験。2011年に「和光市デジタルミュージアム」制作。オンラインの可能性を探り「市役所をハックする!」に参画。Code for SAITAMA所属。

渡辺さん「メンバーに伴走してもらって走り切れましたね。自分も含め、エストニアチーム全体で全力で疾走した感覚があります。もともとリーダーシップに関心があり、リーダーをやらせてもらったのですが、やっていくうちに重みを感じましたね。みんなのやりたいことと、掘り下げたいことを具体化してまとめていくのが難しくて。それでも、本業じゃない制約がある中で、最大級のことはできたのではないかと思います」

みどりさん

白川緑(しらかわ・みどり)さん
新卒でインフラ系の物流会社に入社し、総務や購買調達を経験した後、営業へ異動。会社として初の海外事業への穴を開けると同時に物流会社ながらに畑違いの商社事業を立ち上げ。現在は、経営コンサルティング会社にて事業開発人材の育成や企業の知的資本可視化などを行っている。

白川さん「私の感覚も2人と似ていて、駆け抜けたなという感じがします。ただ、日本では一体何ができるのかを詰め切れていないため、宿題が残っている感じもしていて。オランダチームは、まちづくりや教育など自分のフィールドを持っているメンバーが集まっていたので、研究を深める中で、自分のところでもこれをやってみたいと考える人が多かったんです。せっかくここまでやってきたので、小さくてもいいから学んだことを日本社会に実装していきたいなと思っています」

高野さん

高野寛未(たかの・ひろみ)さん
大手SIerで中央省庁を中心とした営業に長年従事。政府政策関連プロジェクトの推進、地方自治体と連携をした実証事業、ワーケーション推進の支援にも従事。米国PMI認定PMP、米国NLP協会 認定NLPプラクティショナー

高野さん「私は熱量あるメンバーと物事に取り組みたいと考え、モリゼミに参加しました。宿題が残った感覚もありますが、一人ひとりが花開き、輝いていった感覚があります。活動を通して、それぞれが持っていた熱量の火種が燃えていった感じがしましたね」

多様なメンバーでのチームビルディング

モリゼミには、様々な仕事や背景のメンバーが参加しました。それを一つのチームとしてまとめるのは、難しい点もあったそう。

「活動の中で難しかったのはチームビルディングですね。メンバーとはリアルで会ったことが一度もなかったので、バックグランドがわからない状態でした。通常、同じ会社でプロジェクトを組む際は、同じ文脈を共有していたり、お互いのスキルを理解した上で、一緒に仕事をしますが、モリゼミはゼロベースから作っていく必要がありました」

小倉「最初の頃、ゼミ長のミーティングをしましたよね。6月ごろだと思うのですが、みんなメンバーをどうマネジメントしたらいいかわからない、という共通の悩みを抱えていました。それぞれ話を聞いて、互いの悩みにアドバイスし合ったんです」

白川「あのミーティングは、やれてよかったと思っています。4者4様で悩みがありましたが、それぞれ解決策を持ち帰れました。チームメンバーは、バックグラウンドも仕事も違うので、何に興味あるの?とかどうやったら喋りやすいの?とか、チームビルディングにずっと悩んでいたといっても過言ではありません。そんな時、ゼミ長どうしで話せることは支えになりましたね」

高野「知識や前提条件が違うメンバーだからこそ、まずは言葉の認識合わせを丁寧に行い、良い問いを立てるのが大事だなと気づくことができました。ディスカッションを重ね、全員で探究したいシンプルな問いを立てられるようになってから、チームビルディングが進んだと思います。問いの質が上がることで、活動の質が変わり、メンバーの関係性も変わって、結果的に良いゴールを作ることができたなと感じます」

相談しあえる場があること、共通言語をつくること、良い問いをつくること…チームビルディングに対しても学びが深かったようです。

明るい未来、変化への期待感が継続の力に

ゼミ長、メンバーともに、それぞれ本業がある中で続けられてきたモリゼミ。忙しい中、半年間継続しアウトプットを作れた要因は、なんだったのでしょうか?

高野「前に進めている手触り感があるのが大きかったですね。リサーチをする段階で変化を感じられて、最後までやり抜きたいと思えました」

小倉「自分にとって正しい、未来につながる活動だと信じられたことが大きかったです。本業の久留米絣を始めた時も同じだったのですが、「これは絶対、ワクワクする明日につながるコンテンツになる」と思えたんです。自分にとって正義だと思えたからやってこれました」

白川「私は2つあって、1つはアジャイルな進め方に食らいつくことで、まだ見ぬものが見れるのではという期待感です。大変なことも多かったですが、それまで勝手な印象で描いていたオランダが、ファクトを押さえて知っていくと、全く違って見えてきました。それが純粋に楽しかったです。後半にまとめた15の知見など、キーワードにエッセンスを凝縮することで、さらなる理解に繋がりました。
2つ目は、活動が本業に生きたことです。私は転職をしたのですが、会社と文化が合わず馴染めないと感じていました。でも、モリゼミをやっていく中で会社への見方が変わりました。文化が合わないことを言い訳にしてたんだなって。この会社で何をやってくのか、を考えられるようになりました」

渡辺「最終的に日本をどう変えていけるかを目標に取り組んでいたので、研究を進める中で未来に期待感を持てたことが原動力になりました。日本では、AIに仕事を取られるなど、デジタルがネガティブなものに捉えられがちです。でもエストニアでは、デジタルは人間の手間を省略し、クリエイティブに向かうためのものとしてポジティブに捉えられており、その結果、実際に創造性に時間をさける人が増えていました。
エストニアのデジタルは、世界の2周先を進んでいると言われます。日本ではどうするべきか考えるきっかけになりましたし、デジタルが進んだ先に日本の未来の可能性を感じられました」

モリゼミで生まれた新たな問い

最後に、モリゼミの半年間を経験した4人が、今後向き合いたい問いについて、それぞれ話しました。

高野「リサーチを通じて、国を形成するのは教育だなと改めて感じました。一つの国を掘り下げるだけでなく、4カ国を横串で見て日本はどうなのかを考えると、より解像度の高い打ち手が見えてきそうだと感じています」

小倉「高野さんと同じで、教育に帰結することが多いのを感じました。日本というと大きくなってしまうので、まずは自分の家族や地域の範囲で、どうやって身近な教育をアップデートしていくかが、自分なりの一つの問いです。
一方で、モリゼミがその問いへの打ち手の1つだったなとも感じていて。あるテーマに興味のある人が、肩書きを横断してつながって、自分たちなりの「問い」を見つけて行動する。こういったことができる場が、増えていくと良いなと思っています」

白川「難しいですが、自分の足元で何をやるのか、が次の問いになってくるのかなと思っています。特に関心があるのは、オンライン×オフラインですね。モリゼミは、オンラインでやっていたことが大きなポイントだと思っていて。オンラインでここまでできるコミュニティは他にないと思います。オンライン特有の濃密でテンポが早いコミュニティと、オフラインとをどう融合させていくかが、新しい問いだと考えています。
最終的に行き着く先は、教育かなと。ただ、親が教育している以上、親が変わらないと子供も変わらないと思っています。いまの30〜50代がどう変わっていくのかが重要です。そのために、大人が変わっていくための活動を浸透させていけたらと思います。今は、オンラインホームルームのような、やわらかい、大人の教育への向き合い方を考えています」

高野「確かに、子どもだけでなく大人も教育の場があるべきだと思います。モリゼミもその場の一つだなと感じますね」

渡辺「エストニアは、会社を作ったりと新しいことを始める若者が多い国です。何回新しいことに挑戦して良いし、失敗しても良い。失敗をネガティブにとらえず、挑戦に対しての寛容さが前提にあるのがエストニアらしさだと感じます。
エストニアは、国、首都、国土など目に見えるものが無くなっても、デジタルなデータベースを残すことで、国を再建できるようにしようとデジタル化が進んだそうです。国が無くなってもリスタートできる、リセットしてやり直せる。そんな思想と体制を実現しているエストニアから、日本はどのようなことが学べるのか。今後はこれを考えてみたいです。」

モリゼミだからこそ得られたこと

最後に、モリゼミの活動を振り返り、チェックアウトを行いました。

光野

光野由里絵(みつの・ゆりえ)さん
雲南市役所政策推進課。市役所をハックする!事務局。
当日は光野さんのファシリテーションにより、気づきの多い時間となりました。

渡辺「活動を通して、日本だとエストニアのデジタルを、良い面しか取り上げていないと感じました。エストニアの人へインタビューをして改めて、ネットで探した情報だけだと不十分だと。日本人として見るエストニアの魅力もありますが、現地の人だからこそ知っている魅力もあります。日本からだけではなく、双方向に見ることの大切さをモリゼミを通して学びました」

高野「私も文献やリサーチと、実際に生の声を聞けるインタビューは、こんなにも違うのかと思いました。逆に、普段住んでいる国だからこそ、価値があるのに気づけていないことがきっとたくさんあります。日本人にとって当たり前になっていることが、海外の視点から見たときに価値になることを知りました。今後はちゃんと目を向けていけるといいと思います」

白川「アクションあるのみで、当事者意識とは何かを圧倒的に考えさせられた半年間でした。オランダを学びながら、私自身「日本でどんなアクションができるのか」をずっと問われてきた気がします。だからこそ、会社に対する意識も変わってきました。日本ならではの良さと、課題とのはざまで何をしていくのか、これを考え続けて、自分の行動に落とし込んでいきたいです」

小倉「明日や未来につながるワクワクがあったからこそ、自分のやりたいこととしてやってこれたと思います。モリゼミには、やりたいことをやれる環境がありましたし、同じ熱量を持った人と一緒に作ることで生まれる爆発力がありました。今回は、そういう環境を作っていただいた感覚があるので、今後は周りの人がやりたいことをやれる環境を作っていければと思っています」

山田さん

山田崇(やまだ・たかし)さん/塩尻市地方創生推進課

最後に、光野さんと山田さんからも一言が。

光野さん「皆さんのお話を聞いて、良い半年間だったと感じました。プログラム自体がよかったし、その意図を汲んで走ってくれた皆さんのおかげだと思います。今後は、リサーチしてアウトプットしたものを、日本社会にどう落とし込むのか、他の国の知見も入れながら考えていけると良いと思います」

山田さん「もともと自分の小さな衝動が問いになって生まれた取り組みでしたが、それがこんなコミュニティになったことに、涙が出てきそうな時間でした。最近お聞きした中に、「人って自分が解いたことのないものを、真実だとして行動している」という話があります。人は、なんとなく正しいとされていることを元に行動している。でも、「なんとなく」のそれに違和感を覚える人も増えていて。「なんとなく」ではなく、正しさを正当化された揺るぎない知識にするための過程が必要だと思っています。このモリゼミでも、自分たちで調べて自分なりの言葉にする経験を通して、その過程を辿れたのではないかと思っています」

4名のゼミ長の方々のお話を伺って、それぞれが様々な問いをたて、自分なりの答えや課題を見つけた半年間だったと感じられました。

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