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Exhibition information "Manipulabel"

 表参道のGallery COMMON*1では、スペインを拠点に活動するアーティスト、Felipe Pantoneによる個展"Manipulabel"が開催されている。(会期6/3〜7/17)

*1 Gallery COMMON: 2010年にen one tokyoによって設立。原宿のストリートカルチャーを背景に、国内外のアーティストやトレンドセッターがローカルシーンと交流するためのスペース。

 彼にとって日本では初の大規模な個展。個展タイトル「Manipulable」*2の通り、本展の作品は全て可動式であり鑑賞者の手によって、作品の色や形を変えることができる。いわゆる、通常の"見る"展示会とは異なり、鑑賞者と共に"新たに創り上げる"展示会であった。

*2 Manipulabel : ラテン語で手を使って動かしたり操作したりできるものという意味。

本展のコンセプトに沿って、色彩豊かな数々の作品に手を加えてみる。すると、一つの作品が様々な表情を見せ始めた。

これらは全て同作品である。
赤、青、黄の3色をそれぞれベースとした3枚のアクリル板が
重ねられており、回転させると様々な色を見せる。
この作品はアクリル板にUVプリント*3が施されている。
*3 UVプリント : プリントしながらUV光(紫外線)を照射し瞬時にインクを硬化させる印刷方式。


ある意味では「未完成」とされた展示会。そうした意図を彼はこう述べていた。
「今は何でも自らがコントロールできる時代です。ラジオはもう聴かない、自分でプレイリストを作る。テレビはもう見ない、自分で選んだ番組をストリーミングする。インターネットによって、情報そのものが誰でも操作可能になりました。しかし、そんな世界に比べなぜアートがこんなにも一方的なのか。」
 
今回の展示形態は、彼がアートの現状に投げかけた疑問から生まれたものであった。

光、動き、色彩を特徴とした彼の作品に、"触れる"という要素を加えることで、鑑賞者に"アートと会話する"というアクションを誘発させる。そして、"鑑賞者を作品により近づける"、それこそが彼の望みだ。
 
そんな思いを込めながら緻密に構成されたエキサイティングな展示会に、私自身もワクワクが止まらなかった。

この作品はアルミニウムにUVプリントを施しており、
仕上げには車用コーティング剤を使用している。
連なるパーツを横にスライドさせると、また違った一面が見える作品だ。
さらには、ギャラリーに設置された壁をスライドすることで、
空間自体のレイアウトをもカスタマイズすることができる。


触れながら、動かしながら、思いを巡らせて作品を再構成していく。複雑なことは何もなく、創作の技術もいらない。ただ自分の好きなように触れるだけで誰でも、自らの手で作品を完成させることができるのだ。

展示会において、同じ作品・空間が二度とない特別感と、作品の完成に期待が膨らんでいく感覚をダイレクトに感じられることは今まであっただろうか。確実に鑑賞者を作品に没頭させること間違いなしの展示会。是非ともギャラリーに行き、"参加"していただきたい。

Felipe Pantone 【Manipulable】

会期:6月3日(金)〜7月17日(日)

会場:Gallery COMMON
住所:東京都渋谷区神宮前5-39-6 B1F

開廊時間:12:00 – 19:00

休廊日:月・火

Felipe Pantone | フェリペ・パントン
スペイン・バレンシアを拠点に活動する現代アーティスト。1986年にアルゼンチン・ブエノスアイレスで生まれ、12歳の時に現地のグラフィティシーンでアーティストとしてのキャリアをスタート。世界各地での展示や、さまざまなブランドとのコラボレーションも精力的に行なっている。

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