音楽無しに映像を見られぬ羊たち

東京都庭園美術館で志村信裕さんのドキュメンタリー作品を観た。今回の展示は現代アーティスト達の企画展であって、コンセプトゲームに堕した美術作品は見ているだけで虚しくなってくるのだけど、このドキュメンタリー映像は観る価値があると思った。
羊をめぐる物語、と題してバスク地方(フランス側)と、かつて政府の政策で羊毛産地に選ばれた千葉成田の2つの今が並行して語られる。
この映像には、音楽が全く無い。
インタビューと現地で撮影した映像だけ。
これが45分続くので、あきらかに若い観客は見続けられないようだった。
情報を担当する映像の一方、音楽は感情面をサポートする。だからふだんテレビや動画SNSでみる映像の全ては感情没入を約束した作りになっていて、そうで無い記録映像はもはや生理的に観ることが出来ないように僕たちは飼い慣らされている。
画面に映る、無抵抗に全身の毛を刈り取られる羊たちと、僕たちにどれほどの差があろうかと思った。
(東京都庭園美術館、「生命の庭」展)

https://bijutsutecho.com/exhibitions/4098

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