見出し画像

女性声優のオタクが鈴鹿サーキットに横断幕を掲げた話

回想

事の始まりは2023年の2月24日

あの日のことはよく憶えている
平日の仕事終わり
昔馴染みで一緒にアニメDYNAMIC CHORDやFairy蘭丸やヴィジュアルプリズンを楽しんだ変なアニメ好き同士のオタクからLINEが飛んできた
そこには
「君の推してる和泉風花さんってこれまでアニメ主演とかやってたっけ!?」
という一文
少し昔におりがみにんじゃコーヤン@きんてれという児童向けショートアニメの主演があったくらいだなぁ

あの時は放送が仕事前なのでカーナビで毎週観てたなぁ
などと思いを巡らせていると、推しのツイート通知が(オタクは推しのツイートに通知を付けている)

そして、全てが動き出した
沼にも落ちた

オタクは推しと公式の手のひらで踊るように舞う

そこからは知る通りである

『HIGHSPEED Étoile(ハイスピードエトワール)』という作品に出会ってからの1年は本当に激動だった
ありがたくも私のTwitterアカウントをフォローしていただいている方はご存知かもしれないが
Super Formula関連でサーキットでは鈴鹿に2回、富士に1回行き、東京オートサロンに行き、現地へ行けないレースもSFgoやABEMAから観戦した
なんなら鈴鹿最終戦に至っては推しのゲスト出演も無いのに現地で観戦していた、なんなんだ

HIGHSPEED Étoileのブースなどを設置してる現地スタッフさんとはもう顔を覚えられているし
佐藤蓮選手には「あ、今日もありがとうございます」みたいなノリになってきている、認知勢じゃん、どういうことだよ
ハイスピ声優で一番話したことあるのがレーサーの佐藤蓮選手になりつつあるというのは声豚としてどうなんだ
推しが接近戦少ない声優なばかりに

こういう施策にはよく『客寄せパンダ』という皮肉が言われることもあるが
パンダに釣られるなら全力で公式の手のひらの上で踊り狂うのが私の主義だ

先日のSuper Formulaの開幕前の会見で、会長の近藤真彦氏も言っていた
『外部コラボを通じて、これまでモータースポーツを知らなかった層に"にわかファン"を増やしたい』と
ならばギンギラギンなにわかファンになろう、それが私のやり方

動き出す企画

去年の10月末、鈴鹿サーキットでのSuper Formula(以下SF)最終戦を見届けた私
2年連続王者の野尻選手を退け、シーズンを制した宮田莉朋選手
ルーキーながら、最終戦で初優勝を飾った太田格之進選手
沢山の感謝の言葉が飛び交う、そんな空間
特に宮田選手に関しては、HIGHSPEED Étoileトークイベントにて
私が初めて鈴鹿サーキットを訪れた際のレースで初優勝を飾った選手
感慨も相当に深い

良いものを見せてもらったと思うと同時に、私は翌年2024年のことを考えていた
HIGHSPEED Étoile(以下ハイスピ)はついに2024年の4月からアニメの放送がスタートする、冷静に考えて放送1年以上前からオリジナルアニメを追いかけている異常事態からは目を逸らすものの
きっとSFとのコラボも、今年よりきっと大掛かりになるだろう

このハイスピという作品は、色々と特異な作品だ
和泉風花さんという一人の演者は今後も色々なお仕事やイベントに出演していくはずだが
その芸能人生を通じても、きっと『ハイスピでしかしなかった/できなかった仕事』が多分沢山あるだろう
それくらい、普段のアニメ・ゲームイベント、声優イベントとは異なる世界に息づいている作品なのだ

それならば私も『ハイスピだからこそできる応援』を、何かしたい
1年間、放送のはるか前から応援してきた
モータースポーツという世界に全く無縁で生きてきた20余年の人生をたった1年で変えた、私にとっての運命の作品の主人公を演じる人に

そんなことを考えながら、グリッドウォークで撮った写真を見返していた

2023年鈴鹿最終戦(Rd.8土曜)のグリッドウォークにて

横断幕

『アイドル声優』という言葉が生まれたり
声優がアイドルや一般芸能タレントのように扱われるようになって久しい
今や明石家さんまの番組に若手声優が呼ばれる時代
そういった流れもあり、昨今では出演声優宛のフラワースタンドや推しうちわ等がイベントで当たり前に見られるようになった
コアなファンはユニフォームを作ったり、法被を作ったり、駅広告を作ったりしている、自分で言ってて怖いなこの界隈
かくいう私も推しにフラスタを贈ったり、推しうちわを作ったり痛バッグを作ったりしている一人だ

しかし、アイドル業界とは違い、声優界隈には『応援横断幕』という文化はほぼ……というか私の知る限り見たことが無い

理由は至極単純で、大抵の声優イベントでは禁止されていて
そもそもそれが当たり前であるので、発想すらされないから

しかしこのサーキットという場所では、レーサーに、チームに、レースクイーンに向けられた応援の横断幕が沢山掲げられている
なぜならそれは、この世界では当たり前にある応援のカタチのひとつだから

『HIGHSPEED Étoileという作品でしかできない応援』
目指すものは決まった

大いなる推しグッズには大いなる責任が伴う

さて
『和泉風花さんの横断幕を作る』
という腹は決まったものの、懸念点がある
本当にそれは大丈夫なものなのか、というものだ

声優界隈では推しに向けたフラワースタンドという文化は珍しくはなく、会場の設置場所によっては一般の衆目にも晒される
しかしそれは運営側でレギュレーション管理がなされていて、イベント出演する演者も、その所属事務所も『このイベントではそういう贈り物が設置される』という大前提を共有している
そして当然、様々な事情でフラスタが禁止のイベントも沢山ある

今回は会場がサーキットという、来場者以外には見えない半分はクローズドな環境であるものの
声優なんてものよく知らない人やお子様も沢山いる
そしてレースを走るレーサーやそれを支えるチーム、華を添えるレースクイーンは、横断幕を当たり前の文化としているはずだが
言ってしまえば外部からのお呼ばれである声優や、その管理をする所属事務所はその文化を当たり前としていない

悪い言い方をすれば
自分達の管理できない、あずかり知らないところで自分や所属タレントの名義をそのファンが勝手に一般の方にも向けて大々的に掲げる行為
こう書くと非常に問題である

以前のnoteでも書いたが、声優界隈は特に肖像権に関して非常にシビアだ
写真の無断転載や動画の切り抜きは歓迎されない
声優のTwitterプロフィールに『※写真の無断転載は禁止です』という記載がされているのを見たことがある人は多いと思う

それが肯定的な発信、応援の思いであったとしても、注意や批判が起きるのが日常茶飯事
これはファンが閉鎖的というわけではなく、所属事務所がそのあたりに否定的なスタンスなのだ
もしこのnoteを読んでいる方で思い当たる節があったのなら、今後は控えてくれると嬉しい

応援の思いが、結果としてその人の名誉を傷つけることにもなりかねない
そのリスクを回避する意味で
1月頃、私は事前に彼女の所属事務所 アミューズの公式問い合わせフォームから連絡を入れた

伝えた内容は以下の通り
●自分の本名とペンネーム
●横断幕を制作したい旨と、どういったコンセプトのものなのか
●制作予定の横断幕のおおよそのサイズ
●演者の写真は使用せず、自作のイラストであること
●いつ、どこで掲示をするか

ペンネームについては、私は普段から和泉風花さんのファンアートを番組などによく送っているので
彼女に関わっている事務所スタッフさんなら、ある程度どういう作品を描いているファンなのかは伝わってくれるだろうと思い記載した

窓口担当の方を経由して担当マネージャーに確認が行き
何度かの確認連絡を経て最終的に制作の許可をいただいた
忙しい中対応いただいた事務所スタッフ様に感謝である(媚び)

並行して、今回はHIGHSPEED Étoileの二次創作でもある為
そちらの公式にも確認の連絡を入れた
返答としては

『現時点では2次創作物に関するガイドラインや制限を
本作には設けておりません。』

この言葉の意図を理解できる人は私と同類だ
こちらも忙しい中回答ありがとうございます

描けば、できる、限界

ということで制作が始まった
実際のところ、納期的な都合があり1月下旬には確認作業と並行して絵は進めていた
自分で描くぶんにはタダだからね!

ラフ画(実際は全身描いてる)

1200dpiの全身イラストを描くことはそうそうない
いつクリスタがフリーズを起こすかヒヤヒヤだった

イラストは自分で描ける、とはいえ私一人では限界があった
私はIllustratorが使えず、aiデータの制作ができない
同人活動もしてる絵描きのくせになんだその体たらくはという𠮟責はもっともであるが、最近の同人グッズ界隈はとても便利なのでRGB入稿やpsd入稿に甘やかされて育ったのだ……

流石にそこからイラレの使い方を学んでいる時間は無かったので、フラスタ制作などデザイン関連に強いフォロワーのよんたま氏に外注することにした

その時のデザインイメージ

我ながら指示がぼんやりしている、そして字がヘタ
この指示からあそこまで見事なデザインに仕上げてくれた氏には感謝しかない

その後もなんやかんやとあったが、無事に入稿でき
2週間ほどして横断幕は納品された

横断幕 in 家

いや、でっか……

凛ちゃん、クソデカ横断幕だよ

発注した張本人なのにあまりのデカさに引いてる
そりゃ縦90cm×横300cmである、デカい
横幅に至っては身長152.3cmの和泉風花さん約2人分だ

『どうせ作るなら世界で一番デカイ和泉風花さんのグッズにしてやる!』と思ったわけだが
いざ目の前にしてみるとちょっとデカく作りすぎたかもと軽い後ろめたさがあった
ちなみに一番デカい公式グッズはおそらくこちらののぼり

意外と僅差かも

『設置』という大敵

出来てしまえば会場に持っていき設置するだけだ
朝の3時に起床し、横断幕やら荷物やらを積んで車で出発

そして朝5時に鈴鹿に到着、仮眠を取って8時45分のゲートオープンと同時に横断幕を抱えてえっちらおっちらと駆け込む
今回、金曜から入場できるということもあるのか、既にスタンドには何枚かの横断幕が掲げられていた
レース後のハイスピ1話先行上映のことも考え、なるべくサーキットビジョン正面の位置取りを探す

ゲートオープン直前(交通センター駐車組)

…………いや寒!!!!!!!!!!!!!!!!

春はまだとはいえもう3月だというのに異様に冷える
そして風がかなり強い
あとついでになんか雪もたまに降る
なんなんだ一体、誰だ冬を持ってきた奴は
推しに風邪を引かせる気か
今をときめく冬アニメ覇権・春アニメ覇権候補の主演声優様だぞ

そんな極寒のグランドスタンドでいそいそと横断幕を設置する声豚が一人
長時間いたら冷凍豚になる、これは

今回の横断幕の生地は屋外用の生地なので重くて硬い
慣れない手つきで柵に紐を結び付けるが、秒速で指先がかじかんでいって力が上手く入らない
硬い生地をしっかり伸ばすためには紐をしっかり張る必要があるが、柵がツルツルでうまく張れない
多分10分以上は苦戦して結んでいたと思う
風が強いこともあり、結び目が緩まないようにテープで補強してなんとか完成した

これが自称世界一デカい推しグッズ

家で広げた時はあまりの大きさにドン引きしたのだが
実際にサーキットという場所で広げてみると思いの外極端な大きさには感じない
これがサーキットというスケール

感想

ただ一言「楽しかった」

大きいものはそれだけで心が躍るし、やり終えた達成感も大きい
私は一人の声優のファンである以前に、何かを作ることが好きだ
自分が思い描いた「これ作りたい」を、自分が納得できる形でこの世界に生み出せた
それが何よりも楽しい

そして『声優の横断幕』というものが非常に珍しいのか
通りかかる人がよく写真を撮っていた

こんな自己満足の塊を、沢山の人が目に留めてくれている
それは本当に嬉しくて、作るための努力が報われる瞬間だ

時折思うことがある
私は推しを応援したくて何かを作るのか
何かを作りたいから推しという理由が要るのか
多分私にとっては、どちらでもある

和泉風花さんを応援するようになって4年ほど
その間に私は何年も停滞していた絵描きとしての力が大きく伸びた
和泉さん本人から言われるくらい
絵描きとしてお仕事をさせていただく機会も、少しずつだが増えた

その和泉風花さんも、昨年は舞台に朗読劇、他にも沢山のイベントに出演し
今年1月からは初の30分アニメ主演作品『魔法少女にあこがれて』にて、その存在感のある演技で多くのアニメファンを惹きつけている

私にとって、心からその活躍と幸せを応援したい人で
同時に、私が手を動かす為の、頑張るための理由をくれる人

まぁ何が言いたいかというと
今年も、推しごと、終わらんっしょ!ということ

勢いだけでnoteを書くとこう、オチが弱い

横断幕の補足

もしかするとこのnoteを参考にサーキットで横断幕を掲げたいという物好きがいるかもしれないので、知識共有として今回の横断幕の情報を記載

サイズ:900mm×3000mm
生地:ターポリン
仕上げ:全周縫製
依頼業者:プリント市場

別アングル
ピットビルから見るサイズ感

参考になれば

最後に

何よりの報酬

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?