【感想】うたつかい36号
36号です。
37号がすでに公開されているのになんという遅さでしょうか。でもまあ誰もこんなnoteの隅の奥底まで来ないだろうしいいか。
「指定席」から連想されるのは電車で、この連作にも電車が詠まれている歌が2首含まれています。しかしここでの「指定席」はぶらんこのことだ。この表現力というか飛躍というかその感覚が心地よい。さらにこの「ふたつ」の「指定席」からはもうひとりの存在を感じられるのも素敵です。
読み込んでいくとだんだん分からなくなってきた歌です。一番気になるのは「好ましい町に」の「に」です。内容からすると主眼は「夕焼けで炎のように燃えるひとら」ですが、ここで「に」とあることで「町」に重きが置かれるように思います。”てにをは”の難しさ、おもしろさを感じることができる1首でした。
「てじなーにゃ」って誰だったっけとググりました。山上兄弟。今はマジックだけじゃなくて演劇とか幅広く活躍しているみたいです。さて、まずは「てじなーにゃ」の言葉の力が目を引きます。「てじなーにゃ」を知らない世代でもなんとなくニュアンスが伝わるでしょう。そこから下句への展開は新しい時代への希望を感じさせる、まるでちょっとした魔法のようです。
不思議な連作の中で一際目を惹く1首。フィンランドの町並みの刺繍を示しているのかなと思いましたが、自信はありません。好きな歌だという直感はあるのに、核心にたどり着けないもどかしさ。悔しさと高揚感の綯い交ぜ。「金子くん」って誰ですか。
横浜の老舗喫茶店「TAKEYA」にて詠まれた連作で、モモちゃんなつちゃんはそちらの飼い猫。私は訪れたことはないのですが、地方紙にも取り上げられている有名なお店のよう。
老舗喫茶店、気ままな看板姉妹ネコ 「見るだけで癒やし」 地域特集2021年 横浜 看板アニマルズ(3) | カナロコ by 神奈川新聞 (kanaloco.jp)
ついモモちゃんなつちゃんに目がいきそうになりますが、この歌の肝は結句の「刻はときなれ」ではないでしょうか。連作全体で"も時間"が静かに静かに綿密に読み込まれています。
優しさと安心感の極地のような1首。特にいいなと思ったのは「寄り添う」です。声をかけたり体を撫でたりするのではなく、ただ寄り添うだけ。それでも十二分に「あなた」を慈しんでいることが伝わってきます。
人当たりがよく周囲のひととうまく関わっているように見えるけれど、心のなかでは悲しんだり苦しんだりしているということでしょうか。その苦しさの原因は明示されていないことから、いくつものことが重なっているのかもしれません。孤独さはあるものの切迫感は感じられず「わたし」は自身の状態を受け止めているのだと思います。外面と内面の対比のバランスがうまく表現されています。
このコロナ禍で会えなくなったカップルをストレートに歌っています。はっきりとコロナ禍とは詠まれていませんが「緊急逢いたい宣言」「不要不急」から示唆しているところが上手いですね。コロナ禍となったからこそこういう読みになりましたが、コロナ前にこの歌が詠まれていたら(もしくはコロナ禍を無視して読んだら)、印象も少し変わってきそうでそれもまた面白いです。
陽だまりを選んで歩いていく犬。散歩中の楽しげな様子や春の暖かさがユニークに表現されていて、こちらもつられて愉快な気持ちになります。現代はいろいろなポイントがありますが、「ポイント」「春」「交換」とくるとヤマザキパンのお皿が真っ先に浮かんできました。そういった別のものとの親和性?みたいなのも面白いです。
「てらてらと」が良いですね。”ピカピカ””きらきら”にはない重厚感を伴っていて、「人工塗料」や「うそつきの街」を表現するのにベストの言葉だと思いました。一見冷たい雰囲気の連作ですが、奥底にはやわらかい愛情も見え隠れしています。
雨の霊園ってもうそれだけで感性に刺さりますよね。エモいというか映えるというか・・・
さて、「雨で死ぬ生き物」はたくさんいるかと思いますが、ここでは「霊園」からしてやはり人間のことを言っているでしょう。大雨で流されて亡くなったり視界不良による交通事故だったり、人間も雨で死んでしまいます。霊園に向かう途中で降ってきた雨に命日を想っている映像が浮かびました。
いやあ更新めちゃくちゃ空きましたね(ヽ´ω`)
うたつかいも37号発行されてから4ヶ月ですか?なのに36号…(ヽ´ω`)(ヽ´ω`)
この36号での嫉妬林檎の5首は「地表にとどくころ」というタイトルで恋愛風味なやつです。
37号の感想もすぐに書くけんね。毎回言ってるような気がしますが書くけんねすぐに。あと2021年の自選5首もやりたいんですよね。もう1月終わりますけどね。
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